第26話 元貴族の冒険者、・・・その仲良しの物語(後編)

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 ある日、一人の男が娼館に来た。


 男は、リコをしてきた。


 男は、お忍びでやってきた国教の司祭だった。


 国教には、

『汝、異性とヤるべからず』という戒律がある。


 だが、どんな法や戒律にも抜け道はある。


『汝、異性とヤるべからず』・・・、

 

 それを国教の信者たちは、

『汝、同性ならヤってよし』と解釈しているのだ。


 戸惑っているリコに司祭は、

「もし応じてくれるのなら、

 私の口利きで『洗礼』の機会をあげよう」

 とささやいてきた。


『洗礼』・・・、

 それは地位や身分のある者のみ受けられる、

 聖堂で行われるスキル開眼の儀式・・・。


 リコは応じた。


 不思議と嫌悪感はなかった。



 司祭は約束を守ってくれた。


 大聖堂での『洗礼』で、

 リコが開眼したスキルは、

交換こうかん』であった。


 受けた恩は必ず返す・・・、

 自らそんなかせをはめて生きてきた、その影響か・・・。


 『洗礼』の後、司祭に冗談めかして言われた。


「くれぐれも、女性の方と性別を『交換』したりしないでくださいよ。

 私があなたをできなくなりますからね」

 と・・・。



 ――その後も、たびたび司祭はやって来た。


 それ以外にも、貴族や豪商の男たちがリコをしてきた。


 リコは応じた。


 代わりにリコは、

 彼らに知識や教養を求めた。


 娼婦たちと違い、

 彼らは物知りだった。


 リコは、自分たちにはない知識を持つ彼らを尊敬した。


 彼らとの行為にも、高ぶりを覚えるようになった・・・。




 ~~~~~~~~~~~~~


 突然、リコは娼館を追い出された。


 女将の決定だった。


「うちの上客を何人もくわえこんで・・・」

 というのが彼女の言い分であった。


 身寄りのない娼婦たちは、

 誰も女将の決定に逆らえなかった。


 リコは愕然とした。


 娼館の中で彼女だけは、

 自分をそういう対象として見ない、

 純粋に『家族』として可愛がってくれていると思っていたから・・・。


 だから、リコは床に額を打ち付けて謝罪した。


「ごめんなさい!

 もう二度とお客さんに応じたりしません!

 お店の手伝いも、もっともっと頑張ります!

 だから、ここに置いてください・・・!」


 女将は許さなかった。


 その日のうちに、

 リコは娼館を追い出された。


 リコも娼婦たちも知ることはなかったが、

 リコを何度も求めた男たちの中に、

 二十年前、現役だった女将の客がいたのだ。


 かつて睦言むつごとの中で、

 彼女と将来を誓い合った男が・・・。


 今の女将を見ても、

 男のほうは全く分からなかったが・・・。



 ―――リコはその後、

 その街で冒険者になった。


 あるパーティーの一員となり、

 それなりにうまくやっていけそうだった。


 だが、ある日、

 酔ったリーダーに無理やり押し倒され、

 服を脱がされそうになった時、

 手を止めて言われたのである。


「お前、何だよそれ・・・?

 俺を騙してたのか!?

 気持ち悪い・・・!」

 そう吐き捨てるように言って、

 男は部屋から出ていった。


 物心ついたころからずっと、

 リコは娼婦たちのおさがりをちぢめて与えられていた。


 娼館以外の世界とのかかわりを持てなかったリコにとって、

 それが当たり前の服装だった。


 そして、娼館を追い出されたあとも、

 そういう服を着ていないと落ち着かなくなってしまっていた。


 だから、周りもパーティーの仲間も、

 気づかなかったのだ・・・。



 ――翌日、リコはパーティーをクビになった。


 さらに、リーダーだった男が、

 どこから聞き出したのか、リコの過去を吹聴し、

 噂はギルド中に広まった。


 リコは逃げるように故郷であるその街を出た。


 なけなしの金で移動馬車に乗り、

 今の街に来たのである。


 リコはそこでも冒険者ギルドの戸を叩いた。


 十数年の人生を、ほぼ一か所で生きてきたリコの中には、

 生きるための選択肢が少なすぎたのだ。


(もう誰にも捨てられたくない・・・)


 そう思ってリコは、

 ソロで活動を続けた。


 報酬の少ない依頼も、

 手を抜かずにこなしていった。


 ギルドからの評価は上がった。


 だが、生活は苦しいままだった。



 ――半年後、貯めた金で昇級試験を受けることにした。


 ある意味、賭けだった。


 そこでリコは、クリスに出会った。


 彼は巨大な魔物を倒し、自分の命を救ってくれた。


 だからリコは、

 自分の全てをもって、その恩を返そうと思った。


 その日の夜のうちに、

 リコはクリスに自分を捧げた。


「受け取ってくれたら、わたしも嬉しいから・・・」

 彼の耳元でそうささやいた。


 だが、クリスが誘いに応じてくれた時、

 不思議とリコは、それを本当に嬉しいと感じていた。


 そして、今までのとは比べ物にならないほど、

 リコは羞恥しゅうちと歓喜の気持ちを味わったのである・・・。



 ~~~~~~~~~~~~~~~~~


 そのままリコは、クリス達のパーティーに入った。


 クリスのスキル『研磨けんま』の影響か、

 リコは自分の力が、どんどん成長していくのを実感した。


「クリスが相手を親しく感じるほど、その力はいく・・・」


 パーティーの仲間シンがそう言っていた。


 ならば、この急激な成長は、

 それだけクリスに想われているという事か・・・。


 その事実が、リコには成長以上に嬉しかった。



 ――リコが加わって二か月後・・・、

 ギルドでは特別な討伐隊が組まれた。


 彼らパーティーもそこに加わり、

 ダンジョンをいつもよりさらに下へと降りて行った。


 クリス達、特にシンにとって因縁の相手・・・、

 魔柱フランティック・トーテムを倒すために・・・!


【つづく】



 _______________



 閲覧ありがとうございます!


 そして・・・、


『ダンジョンの中ボス的存在、フランティック・トーテムとの再戦!

 果たして結果は!?』


 どうか、この先にあるコメント欄にて、

 あなたの中に浮かんだアイデアをお贈りください!


 簡単な一言で構いません!


『楽勝』とか、『全滅』とか、『開発されちゃう』とか・・・。


 なるべく、この最新話を読まれただけで参加可能なお題にしましたので、

 どうぞよろしくお願いします!


 ――というお願いにお声を頂きまして、

 本当にありがとうございました!


 新しいお題は最新話にて・・・!




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