第20話 元貴族の冒険者、樹海を駆ける

「とりあえず、テントを張ろうか」

 クリスはユキにそう言うと、

 マジカルボックスからそれを取り出した。


 ちなみに、

 このポシェット型のマジカルボックスは、

 ギルドから今回の受験者全員に貸し与えられたものである。


 収納アイテムとしての性能は、

 あくまでレンタル可能な範囲のもの。


 収納できるサイズはさほどでもない・・・とはいえ、

 当然、おいそれと手に入るものではない。


 (これ一つが、普通馬車一台分の値段だって・・・)

 失くしたりしたら、偉いことになる。


 それ故に、

 あの高額の受験料というわけである。


 ──さて・・・。


 とりあえず、テントの設営は完了した。


 このテント、

 パーティーのシンから借りたものである。


 他に、様々な野営道具も。


「・・・絶対、合格するぞ」

 と、クリスは決意を新たにした。



 ~~~~~~~~~~~~~~


 川が近いのか、

 樹海は岩の合間から水が流れている。


 これで水の問題もない。


 あとは・・・


 (魔物討伐か・・・)

 クリスは考えた。


 出来れば、さっさと魔物のほうから現れてくれるとありがたいのだが・・・。


「ユキ、気配はする?」

 そう尋ねるクリスだが、

 ユキの反応はかんばしくない。


「そっか・・・」

 やはり、自分から探しにいかないと。



 ──簡単な食事を済ませ小休止した後、

 クリスは周辺の探索に乗り出した。


「頼むよ、ユキ」


「ウォン!」


 クリスを背に乗せ、

 ユキは走りだした。



 ~~~~~~~~~~~~~~~~~


「・・・こんなものかな」


 倒した魔物の亡骸を収納しながら、

 クリスは切り上げることにした。


 ユキのおかげで、

 魔物は簡単に見つけられた。


 ――結果、


 ホーンラビット3頭、

 魔狼4頭、

 ホブゴブリン5頭、

 オーク2頭、

 大ムカデ10頭、

 ブラックバイパー2頭、


 ・・・以上が、

 この数時間でのである。


「ほとんど、初めて見る魔物ばかり・・・。

 やっぱりダンジョンとは、生態系が違うんだね」

 そう言いながらクリスは、

 ユキの労をねぎらうように、その首筋をなでる。


(蛇や虫には、

 ユキの吠え声ハウリングが効かなかった・・・。

 覚えておかないと・・・)

 実際、ブラックバイパーとの戦闘は余裕がなかった。


 体長3メートルを超える巨体に、

 猛毒を含んだ噛みつきバイティング・・・!


(もし、あともう1頭いたらどうなっていたか・・・。

 いや、それより・・・)


 もし、あれより大きい魔蛇と遭遇していたら・・・。


「ユキ、そろそろ戻ろう」

 不安を覚えたクリスは、

 切り上げることにした。


 ユキも身振りで同意を示す。


「よし」

 と、ユキにまたがり、

 その場をあとにしようとしたその時、


「あぁっ・・・」

 かすかに誰かの声が聴こえた。


 悲鳴のような、うめき声のような・・・。


「ユキ!」


「ウォン!」


 クリスの一声で、

 ユキは即、声の方向に向かって走り出した。


 実はユキには、

 匂いですでに気づいていた。


 その先に何があるか・・・。


 クリスの安全のために、

 とは距離をあけていたのだが・・・。



「あれは・・・!」


 木々の先に声の主はいた。


 受験者たちの中にいた、

 装備が心もとないと感じた冒険者だ。


 「あ、うぅ・・・」

 腕を抑えてうずくまっている。


 だが、それよりもクリス達が驚愕したのは・・・。


 とぐろを巻いた漆黒の表皮・・・。


 10メートルは超える巨体・・・。


 一片の情のかけらすら見えない、

 冷徹で邪悪な瞳・・・。


 本で見ただけだが、

 間違いない。


 これは、さっきのブラックバイパーをはるかに超える、

 魔蛇の最強種・・・。


「ブラック・・・パイソン・・・」


【つづく】



 _________________


 ここまでお読みいただき、

 本当にありがとうございます!


 そして、


『貧弱な装備の冒険者!

 その見た目はどんな奴!?』


 あなたのアイデアを下のコメント欄にてお贈りください。


 あれこれ想像しやすい一言をお願いいたします。

『女の子』とか、『オッサン』とか、『男の娘』とか・・・。



 どうぞよろしくお願いします!!


 ・・・というお願いを先日までしておりました。


 アイデアをくださった閲覧者・・・もとい、神に感謝!


 最新の募集は常に最新話で行っております!


 どうかあなたのお声を聞かせてください・・・!
















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