第17話 元貴族の冒険者、結果を聞く

 ~~~~~~~~~~~~~~


 後日、ミノタウロスの死体は、

 冒険者ギルド経由でゼニー商会へ送られた。


 これで依頼達成、

 あとはミノタウロスの献上により、

 ゼニー商会とカリガール家の関係がどうなるか・・・。


 ひいては、

 エミリ達の処遇がどうなるかである。


 クリスは数日間、

 宿屋の庭先で剣の稽古をしながらやきもきしていた。


 果たして上手くいくだろうか・・・。


 白狼のユキを欲しがっていたという貴族に、

 それ以上の魔物を献上する事で、

 エミリ達の赦免しゃめん、ならびにゼニー商会との関係修復を願う。


 ユキが元々魔狼だと思っていたクリスは、

 ダンジョンでその魔狼よりもはるかに手ごわいと言われているミノタウロスを死体とはいえ献上すれば・・・と思っていたのだが。


 ――今、クリスは不安だった。


 これまでクリスの中では、

 魔狼とは自分の敵だった時のユキのであった。


 だが、

 ダンジョンで見た魔狼達は、

 ユキよりもはるかに格下の存在だったのだ。


 どうやらユキは元々、

 かなり特殊な狼だったようだ。

 と、いう事にクリスは初めて気づいた。


 同時に、

 これはまずいのでは・・・、

 と思った。


 ミノタウロスは果たして、

 魔狼を超えるユキ以上に希少な魔物なのだろうか。


 もしカリガール家が、

 納得してくれなかったら・・・。


 ゼニー商会から受け取った、

 報酬の入った小さな袋がズッシリと重く感じた・・・。



 ~~~~~~~~~~~~~~~~~


 結論から言うと、

 カリガール家はミノタウロスを受け取ってくれたらしい。


 そして寛大にも、

 エミリ達の脅迫にも目をつぶってくれ、

 ゼニー商会との関係も今まで通り、

 出資者として協力をしてくれるそうだ。


 だが、

 さすがにエミリ達の存在は、

 この先両者の関係を壊しかねない、と判断され、

 彼女たちはゼニー商会の口利きで、

 この街の教会で信徒として罪をつぐなう・・・、

 という名目で遠ざけられたという。


 児童保護施設も、

 ゼニー商会長が身銭を切って存続させるつもりであるという。


 以上がギルド職員レナから聞いた、

 その後のあらましであった。


(良かった、本当に・・・)

 クリスは、それなりの決着に胸をなでおろした・・・。



 ――後日クリスは、

 ゼニーの屋敷で彼から、


「本当はあの日、ご相談するつもりだったのですが・・・。

 正式に施設の職員として働くつもりはありませんか?」

 と話を持ち掛けられた。


 だが、

 クリスは首を横に振った。


 ゼニーは残念そうに、


「そうですか、やはり・・・」

 と、言った・・・。



 もし、あの日同じ相談を受けていたら、

 うなずいていたかもしれない。


 だが、今のクリスは、

 ダンジョンで危険を顧みずの前に飛び込み、

 クリスの求めていたミノタウロスの死体を手に入れてくれたシンの事があった。


(あの人がいなければ、

 ミノタウロスは手に入らなかった・・・)


 クリスはシンに感謝し、

 同時にその仕事ぶりに惹かれてもいた。


 それと、作ってくれた食事にも・・・。


 もっとはっきり言えば、

 クリスは冒険者として、

 シンとパーティーを組みたくなっていたのだ。


 依頼による一時的な関係ではなく、

 この先もずっと・・・。



 ~~~~~~~~~~~~~~~


 次にシンと会ったのは、

 ギルド提携の食堂だった。


 クリスが席の一つにその姿を見つけ近づくと、

 顔を上げたシンは開口一番、


「すまない」

 と、何故か頭を下げた。


「え・・・?」

 クリスにはわけが分からなかった。


(え、何で・・・?

 まだパーティーを組んでとか何も言ってないのに・・・)


 フラれた・・・?


 もちろん、そうではなかった。


「すまない、本当に・・・。

 わたしが、

 もっと多くのミノタウロスを手に入れていれば・・・」


「あの・・・、

 どういう事ですか?」

 そう尋ねるクリスに、

 シンはキョトンとした。


 仮面で顔は分からないが・・・。


「受付のレナから聞いていないのか・・・?」



 ――シンの話はこうであった。


 ミノタウロスの死体を手に入れた数日後、


 シンはギルド職員のレナに、

 その後の経過を確認に行ったらしい。


 クリスと同じで、

 シンもまたが白狼ユキの代わりになるのか、

 気になったのだ。



 レナは難しい顔をして、

 ゼニーから聞いた話を伝えた。


 カリガール家当主カリガールは、

 ゼニーが納めたミノタウロスの死体を見て、


「何だ、たった一匹かね?」

 と、失望の色を示したという。


「まあ、所詮はみだし者の冒険者共の仕事だ。

 ゼニー、君へあたるのは筋違いだな」


「は・・・」

 ゼニーは何とも答えようがなかった。


「私が依頼人なら、ギルドに言ってその冒険者を追放させるところだが・・・。

 とりあえず、君の誠意のほうは受け取っておこう」

 カリガールのその言葉に、

 立場上ゼニーは、


「あ、ありがとうございます・・・!」

 と、頭を下げるしかなかったという・・・。



 ――以上の話を又聞またぎきで、

 レナから聞いたシン。


 そして、

 てっきりシンは、レナがクリスにも伝えていると思ったのだ。


「そう・・・だったんですか」

 聞き終えたクリスは、

 激しく憤った。


 貴族カリガール・・・。


(シンさんは命がけで、

 ミノタウロスを手に入れてくれたのに・・・。

 それを・・・)


 そんなシンを・・・、


『はみだし者』・・・、

『追放処分もの・・・』・・・。


 クリスは、

 父ゴネル達から無能・非貴族として追放された自分と重ねる・・・。


【つづく】



 __________________


 ここまでお読みいただき、

 本当にありがとうございます!


 そして、

『一方、クリスを追放した父ゴネル達は今・・・?』


 どうか下のコメント欄にて、

 あなたの浮かんだ答えをお贈りください。


 簡単で、本当に簡単なもので良いのです。

『経営難』とか、『弟覚醒』とか『グレートな隠し子』とか・・・。


 どうぞよろしくお願いします・・・!



 ・・・祈った結果、やはり奇特な神様からコメントを頂きました。

 本当にありがとうございます!


 基本、最新話でコメントによるアイデアをお願いしておりますので、

 どうぞよろしくお願いします!



















  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る