第9話 元貴族の冒険者、人間と戦う



「マルコさん・・・」

 現れた人影に対し、

 クリスは問いかけるようにつぶやいた。


 いままで見せた事のない、

 その冷徹な表情かお・・・。


 そう、自分をハメたのはマルコだったのだ。


 今自分に剣を向けている男・・・、

 その彼もマルコの支持で・・・。


 何故・・・、

 何故この人が自分を・・・?



「待っててください、マルコさん。

 すぐに終わらせますから」


「まあ待て」

 と、

 クリスに再び攻撃をしかけようとする男に、

 それを制するマルコ。


「最後に理由くらいは教えてあげよう。

 君を殺す・・・ね」


「・・・」

 クリスは何も言わない。



「一言で言えば、

 君の従魔をいただくためだよ」


 ・・・


 ・・・・・・


「え・・・?」

 クリスは思わず聞き返してしまった。


「従魔・・・、ユキを?」


「君の従魔・・・、

 ユキを初めて見たときは驚いたよ。

 あのしなやかな巨体に美しい純白の毛並み・・・、

 さらには人の言葉を解する知性・・・。

 まるで伝説の神獣フェンリルのようだった・・・!」


「フェンリル・・・」

 クリスも本で見た事くらいはある。


 ドラゴンやフェニックスと同じくらい、

 知らぬ者はいないほどの圧倒的存在の名だ。


 確かに本の中で、

 その『フェンリル』は巨大な白い狼のような姿で描かれていたが・・・。


「でもマルコさん、

 ユキは・・・」

 訂正しようとするクリスだが、

 マルコは構わず続ける。


「確かに、

 はフェンリルではないだろう。

 だが、『遠い祖先にフェンリルを持つ魔狼』・・・、

 これなら皆、信用するのではないかな?」


「・・・」


はもっとふさわしい場所で、

 ふさわしい者に飼われるべきなのだ。

 地位のある人間に献上されるべきなのだ。

 家も身分もない冒険者の子供などが独占して良いものではない!」


「・・・」


「そのためにはクリス君、

 君にここで消えてもらわなければならないのだ。

 どんな方法を使ったのか知らないが、

 は君に強力な従属テイムをかけられているようだからね」


従属テイム・・・」


「それに君はどうあっても、

 を手放そうとはしそうにないからね。

 まったく、子供のに対する独占欲はやっかいなものだ」


「・・・、

 施設の・・・他の人たちは知っているのか?」

 ここでクリスは初めて質問をした。


「いや、私とエミリだけで計画した事だ。

 その後、君を始末するために彼も引き入れたがね」

 そう言ってマルコは、

 そばにいる門番の男を示した。


「それじゃ・・・、

 子供たちや付き添いの職員さんは無事なんだね・・・?

 さらわれてなんかいないんだね?」


「彼らは泊りがけで街の見学に行っているだけだよ。

 今頃は予約した宿で楽しく食事でもしているだろうね」


「そう・・・」

(やっぱり・・・)

 と、クリスは思った。


 この人、マルコはちゃんと保護施設の施設長なのだ。


 実際、施設の子供たちは皆、

 幸せそうだった。

 

 身寄りのない子供たちにしっかりとした教育を施し、

 将来の道を作る手伝いをしてあげる・・・、

 そんな立派な仕事をずっと続けているのだ・・・。


 金も仕事も仲間も人徳もある・・・、

 ちゃんと自分の居場所がある人物。


(なのに・・・)



「さて、もういいだろう。

 始末してくれ」

 マルコが男に向かって言った。


「了解」

 男は答えるや否や、

 剣を構えたままクリスに向かって突っ込んできた!


 まるで絶対に逃がさないとでも言うように・・・。


(なのに何で・・・)


 だが、クリスは後ろに下がるどころか、

 逆にゆらりと男との間合いを詰めた!


「なっ・・・!」

 予想外の行動をとられた男は、

 反射的に剣を雑に振り上げる!


(何で僕から・・・)


 クリスはその剣が振り下ろされるより前に、

 男の目の前まで間合いを詰めて、

 両手でその攻撃を止めた!


 右手で柄を握る男の手を、

 そして左手で刃そのものをつかんで・・・。


 クリスのその行動に、

 男は戦慄した・・・!


 見ていたマルコも驚愕した!


 男が落ち着いて剣を振っていれば、

 間違いなく斬り殺されていたであろう、

 その行動に・・・。


 手から流血しながらも、

 クリスは表情を変えない・・・。


(こ、このガキ・・・)

 まともじゃない!


 その両手から、

 クリスはスキルを発動させた!


研磨けんま』のスキル・・・、

 目当ての対象を『少々削る』・・・。


 クリスは躊躇ちゅうちょなく続けた。


 男の『体力』を。

『思考力』を。

『技術』を。

『視力』を『聴力』を『勘』を『血液』を『筋肉』を『脂肪』を『骨格』を『水分』を『記憶』を『芯』を『スキル』を『命』を・・・!


「ぐああああああっ!!!!」

 何千本もの針を心身に打ち込まれたにも等しい男は、

 白目を向いてその場に崩れ落ちた。


 眼、耳、鼻からは血を流し、

 口からは嘔吐おうと、下半身からは失禁と脱糞による臭気を発し、

 その体はビクン、ビクンと痙攣けいれんを繰り返している・・・。


 そしてクリスは、

 ゆっくりと今度はマルコのほうを向く。


「あ・・・、ああっ・・・」

 男の惨状を見たマルコは、

 腰が抜けて逃げ出すこともできない。


 そんなマルコを見下ろしながら、

 クリスは静かな怒りをこめて言った。


「何で・・・、

 みんな僕から・・・」


「うぐっ!」


 クリスはマルコの顔を鷲掴わしづかみにすると、

 そのままスキルを発動させた!


【つづく】




 _______________________


 ここまでお読みいただき、

 本当にありがとうございます!

 そして・・・、


「クリスがマルコからものとは!?」


 あなたの考えを下にありますコメント欄にて、

 お贈りくださいませ。


 ただ一言だけで良いのです!

『健康』とか『寿命』とか『ナニの大きさ』とか・・・!


 それが、次の回の展開を創り上げます!


 どうか『神々』よ、

 未熟なわたくしめにその『声』をお聞かせください・・・!



 ―――というお願いを先日しておりました。


 コメントをくださった神よ、

 本当にありがとうございました!


 この物語は最新話で常にお題によるコメントを切望しております。


 どうぞ・・・どうぞご協力よろしくお願いします!!



























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