第8話 元貴族の冒険者、ハメられる

「おお、クリス君!

 戻ってきてくれたか!」


 児童保護施設に戻ると、

 施設長のマルコが待ち構えていたかのように現れた。


 女性職員のエミリもいる。


「ただいま戻りました。

 あの・・・、何かあったんですか?」

 クリスは尋ねた。


 施設の中が閑散としている。


 子供たちはまだ帰ってきていないのだろうか・・・?


「大変なんだクリス君!

 子供たちが・・・違う、

 たんだ!」


「ええっ!?」

 マルコの言葉に、愕然がくぜんとした。


 白狼のユキも、

 ただならぬ空気を読んだのか、

 その尾を伸ばす。


「さらわれた・・・?

 それってどういう・・・」


「私が説明します」

 エミリだ。


 彼女の説明によれば・・・。


『職員引率のもと街を見て回っていた子供たちは、

 教育の一環として、

 夕方に街はずれのスラム街付近にも寄ることになった』


『そこでいきなり謎の集団に襲われ、

 職員は何もできず袋叩きにされ、

 子供たちは彼らに連れ去られてしまう・・・!』


「―――以上の事を引率の職員から伺いました」

 エミリは話を終えた。


「その職員さんは?」


「重症だったので治療院に運びました」


「それで、

 クリス君たちにお願いが・・・」

 マルコがクリスとユキを見て言った。


「ユキさんの嗅覚はなで子供たちの匂いをたどれないだろうか?

 エミリに現場付近まで案内させるので・・・」


「なるほど・・・!」

 クリスはもちろん協力を惜しむ気はない。


 依頼外?

 そんなの関係ない!


「分かりました。

 ユキ、行こう!」


「ウウォン!」

 と、でエミリと出ようとすると、


「待ってくれ!

 エミリと行くのはユキさんだけで、

 クリス君は私と一緒に来てもらいたいのだ」

 と、マルコがクリスを止めた。


「どういう事ですか?」


「街の衛兵に言って、

 調査してもらう。

 なので説明のため屯所とんしょまで一緒に行ってもらいたいのだ」


「・・・分かりました!」

 自分が行って何がどうなるのかとも思ったが、

 クリスは了承した。


(マルコさんにはマルコさんなりの考えがあるんだ・・・)

 子供である自分がでしゃばるべきではない。


 ユキはエミリと、

 クリスはマルコに加え施設の門番と共に行くことになった。


「じゃ、ユキ。

 そっちは頼んだよ!」


「ウォン!」

 門を出たところで二手に分かれた。


 全力で走る門番にクリスは付いていく。


 だが、マルコはすぐに息をきらし、

「す・・・すまん・・・、

 二人で・・・先に・・・」

 と、足を止めてしまった。


「分かりました!

 ・・・行くぞ!」

 マルコにうなずいた門番は、

 クリスを促して先を急ぐ。


「はいっ!」

 クリスも、マルコのほうが気になりながらも、

 門番のあとを追う。


 ―――辺りは既に真っ暗だ。


 人家の少ない無人の通りを走る二人。


 そのまま林の中に入っていく事に、

 クリスは違和感を覚えた。


「あの、ここは・・・」


「近道だ。

 ここを抜ければ屯所はすぐだ」

 門番は走りながら答えた。


(近道・・・)

 そういうのもあるのか・・・。


 この街に来たばかりのクリスが、

 方向について意見するわけにもいかない。


 いかない・・・が・・・、


(何か・・・何か変だ)

 クリスは段々と疑惑の念を覚えてきた。


 そもそも、

 整備された街なかにこれだけ深い林が存在するだろうか。


 ひょっとして、

 ここは街のはずれじゃないのか?


 ―――何故こんな方向に・・・?


 すると門番の男は、

 段々と走る速度を落とし、

 最終的にその場に足を止めて息をついた。


 林の奥深く、

 もはや街の明かり一つ見えない。


「さて、

 ここら辺でいいか・・・」


「え?」

 クリスは意味が分からない。


 だが次の瞬間、

 男は腰の剣を抜くと、

 クリスに向かって斬りかかってきた・・・!


「なっ・・・!?」

 かろうじてその斬撃をかわすクリス!


 冗談ではない・・・。

 よけなければ確実に命はなかった・・・!


「どういう事ですか!?」

 ショートソードを取り出したクリスは、

 男に向かって問い詰める。


「まだ分からないのか?

 ハメられたんだよお前は」

 およそ感情のこもらない声で、

 無表情に男は答える。


(・・・っ!!)

 この表情かお・・・、

 クリスには覚えがあった。


 父ゴネルが、

 自分を追放した時に見せたのと同じ・・・。


 だが、

 クリスは負の記憶に流されるのを拒み、

 必死で今の状況に集中する。


(ハメられた・・・だって?

 この男に?

 いや、今の言い方はまるで、

 首謀者が他にいるみたいな・・・)


 ・・・。


 ・・・・・・。


 ・・・・・・・・・そうだ。


(そもそも、この林に来ることになったのも、

 ユキと分かれて行動する事になったのも、

 すべて・・・)


「何だ、

 まだ始末していなかったのか」

 ふいに別の方向から声がした。


 月明かりにその顔が浮かぶよりも先に、

 クリスにはそれが誰なのか分かってしまった・・・。


 どうして・・・、


 「どうしてあなたが・・・?」



【つづく】



 _____________________


 ここまでお読みいただき本当にありがとうございます!

 そして例によってお願いが・・・。


「果たしてクリスをハメた真犯人は!?」


 下のコメント欄にて、

 皆様の答えをお聞かせください!


『マル〇』とか、『〇ルコ』とか、『マ〇コ』とかッッ!!


 ―――まあ、文脈から普通に考えれば『奴』ですし、

 そのつもりで動機も考えてこの最新話を描き進めてきたのですが・・・。


 この物語は『神々みなさま』と紡ぐものという事で、

 かなり強引ですがお題として変更いたしました。


 どうぞよろしくお願いします!


 ・・・・・・


 ―――というお願いを先日しておりました。


 コメントをくださった皆様、

 本当にありがとうございました!


 この物語は最新話で常にお題によるコメントを切望しております。


 どうぞ・・・どうぞご協力よろしくお願いします!!































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