第7話 元貴族の冒険者、順調に依頼をこなす

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 児童保護施設での仕事は充実したものだった。



 朝、施設周りを走り込みする子供たち。


 クリスとユキは、その子供たちの先導である。


 朝食後、自衛のための稽古を彼らにつける。


 ギルドから『剣士見習い』と紹介されたためである。


 クリスもそう自分の実力に自信があるわけではないが、

 それでも十年木剣を握って腕をきたのだ。


 巧みに子供たちの攻撃をさばきつつ、

 寸止めでスキができやすい箇所を彼らに指摘しているうちに、

 あっという間に時間は過ぎる。



 その後、子供たちは水浴びと昼食をはさんで、

 午後まで計算や読み書きなどの勉学に励む。


 その間クリスは、

 施設屋外の警備と整備である。


 それが終わる頃、

 子供たちも勉強が終わり、夕方まで自由時間となる。


 敷地内の広場で遊ぶ子供たちをクリスとユキは護衛・・・、

 というのを念頭においた上で一緒に遊ぶ。


 中には外に出ず、屋内で過ごす子供もいるが・・・。


 

 日が暮れると自由時間は終了。


 子供たちは改めて、水浴びで身ぎれいにしたあと

 食堂で夕食となる。


 この夕食だけは作法マナーの訓練として、

 子供たちは専門の職員と共に食事する。


 ちなみに作法マナーを教えているのは、

 初日にクリス達を案内したエミリだ。


 クリスとユキは別の部屋で、

 他の職員と一緒に食事だ。


 彼らとの関係もおおむね良好である。


「いや助かったよ、

 クリスとユキが来てくれて」


「いきなり職員が減って、

 どうしようかって状況だったからな」


「正直最初は冒険者の、

 しかも子供に務まるのかって疑っていたんだが・・・、

 おっとすまん、今のはナシな」


 特にクリスは気にしない。


『冒険者』というのが、

 しっかりとした生活の基盤を持った者たちからどう見えるか、

 ちょっと想像すれば分かろうものだからだ。


 夕食後、子供たちは当番制で施設内の掃除をする。


 その間、クリスとユキは外の夜回りだ。


 それが終わったら就寝。


 子供たちは施設内の子供部屋で、

 クリスとユキは、正門付近の詰め所で眠る。


 不審者の気配など何かあれば、

 ユキがすぐに反応するはずだ。


 だが特に何もなく、

 クリスは毎夜ぐっすり眠ることができた。



 ~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 そんな風に規則正しい生活が十日間ほど続いたある日。


 子供たちはいつものスケジュールではなく、

 職員引率のもと街中の見学に行く事になった。


 いわゆる、社会勉強というものだ。


 そのためクリスも施設での仕事は休みとなり、

 ユキと共に冒険者ギルドまで依頼の中間報告に行った。


 ギルドのカウンターでは、

 初日に世話になった受付の女性・レナが応対してくれた。


「なるほど、

 依頼の期間は一か月ですが、

 この十日間施設では特に問題なし、と」

 クリスの報告を聞きながら、書類にペンを走らせるレナ。


「はい、施設の皆さんにも良くして頂いて、

 とてもやりがいを感じています!」


 すると後ろから「はっ!」と、

 小馬鹿にするような声が聴こえた。


 見ると革の鎧に身を包んだ、

 いかつい顔をした男たちがクリスを見下ろしていた。


 冒険者のパーティーか・・・。


「あのな坊や、

 依頼の報告なんてのは問題があったかどうかだけでいいんだよ」


「そうそう。

 やりがいだの何だのお前の感想なんざ聞いちゃいないんだよ」


 男たちはそう言って馬鹿にしてきた。


 言われてクリスは、

 恥ずかしくなってしまった。


 浮かれていた・・・。


 調子にのっていた・・・。


 自分は家を追い出された身で、

 まだ何者にもなれていないのに・・・。


 まるで・・・、

 自分の居場所を手に入れたかのように錯覚して・・・。


 だが、


「ボックさん。

 そんな事はありませんよ」

 レナがリーダーらしい男に向かって言った。


「依頼をこなした冒険者さんの感想は大事な情報です。

 特に対人のお仕事については、

 依頼主さんとの縁をつなぐかの判断材料にもなりますので」


 言われてボックと呼ばれた男はグッと詰まった。


 仲間らしい二人もバツが悪そうに黙る。


 それを見たレナは、

 今度はクリスに向かって、

「クリスさん、ご報告ありがとうございます。

 残り20日、引き続きよろしくお願いしますね」

 と、言ってほほ笑んだ。


 横にいたユキも、

「そうそう、気にするな」とでも言うように、

 クリスの横顔に鼻先を付ける。


「はい・・・!」

 クリスはそう言って、

 感謝の気持ちをこめて頭を下げた。


 そして受付をあとにする。


 ボックがすれ違いざま

「はっ、冒険者ってのは強さがあってなんぼだぜ。

 施設でガキの相手なんて軟弱な仕事しかできないなんて、

 恥ずかしい奴・・・!」

 と、また馬鹿にしてきた。


「ボックさん!」

 レナがそれを注意するが、ボックに反省の気配はない。


 だが、クリスは反論したりせず、

 ボックの腕に触れ、


「ありがとうございます。

 参考にします」

 そう言って、ユキと共にギルドをあとにした。


 ・・・ボックの腕に触れたとき、

 クリスは『研磨けんま』のスキルを発動させていた。


 ボックの何を『少々削った』のか・・・、

 それは想像に任せよう・・・。


 だが、クリスは皮肉にも、

 ボックに言われた言葉を思い出す事になる。


『冒険者は強さが必要・・・!』。


 それは夜、施設に戻った時、

 子供たちが帰ってこなかったという知らせからだった・・・。


【つづく】 



 _______________


 ここまで読んで頂き本当にありがとうございます!

 そして・・・、


『子供たちに何が起こったのか!?』


 下にございますコメント欄にて、

 その答えををお贈りください・・・!

 一言だけで良いのです!

『誘拐』とか、『脱走』とか、『ハーメルン』とか・・・。


 その一言からいろいろ連想して展開を考えますので。


 この作品は皆さまのコメントだけが頼りです!


 それなくしてこの物語は成り立たないのです!


 神様、どうかよろしくお願い申し上げます・・・!


 ナンミョウホウレンソウ・・・


 ・・・という募集を先日しておりました。


 新しい募集は最新話にて!


 どうぞよろしくコメントをお願いします!!

























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