第3話 元貴族の少年、スキルを駆使する

「魔狼・・・⁉」

 クリスはひと目でそれと分かった。


 濁った黒と血が乾いたような茶の体毛に、

 暗闇で妖しく赤く光る二つの眼・・・。


 四つ足にもかかわらず、

 その目線は若干小柄なクリスより明らかに高い。


「FWOLLLLLLLLL・・・」


(やる気だ・・・)

 相手の獰猛なうなり声から、

 クリスは覚悟を決まるしかなかった。


 ショートソードでの接近戦は危険すぎる・・・。

 改めて木剣を握りなおし・・・

「FWOOOOOOOO!!」


「うわっ!」

 不意をうたれた!


 咬みつきバイティング狙いの魔狼の突進を、

 かろうじて横に飛んでかわす!


 だが、敵もすぐさま方向転換し襲ってくる!


 かわす!

 が、今度はわずかにその爪が頬をかすめた!


 それだけで首筋まで流れ落ちるほどの出血・・・!


(そうだった・・・!

 魔狼は普通の狼と違って・・・)

 牙も爪も武器に使う!


 そしてもう1つ・・・


 後ろ向きの態勢から巨大な尾が、

 鎖鞭チェーンクロスのようにクリスを襲う!


「ぐっ・・・!」

 木剣でブロックしたが、そのまま後方にはじき飛ばされてしまう。


(どうしよう・・・?どうしたら・・・)

 敵の攻撃を横にかわし、

 側面か背面(尻面?)から攻撃する・・・。

 それがクリスの狙いであったが、

 そんな隙など突けない事はもはや明らかだった。


 少しずつ横に移動するクリス。


 たき火を間に、距離を取ってにらみ合う・・・。


「はぁっ・・・はぁっ・・・」

「FLLLLLLLLLLL・・・」


 このままでは、いずれやられる。

 クリスにも分かっていた。


 体力的にも有利なのは向こうなのだ。

 ならば・・・


いちばちかだ・・・!

 ・・・母さんっ!)

 クリスは形見のペンダントに触れた。


「FWOOOOOOOO!!」

 魔狼はたき火の火などお構いなしに向かってきた!


 同時にクリスはペンダントの蓋を開き、

 たき火の前にかざした!


 中には小さな宝石が備わっていた。

 クリスが自身のスキルの研究としてひと月前から続けていた宝石が・・・!


 たき火の明かりを何倍もの威力で反射したは、

 そのまま魔狼の全身に浴びせられ、その視界を奪った!


「WFOO⁉」

 生物の反射として、思わずその場に頭を抱えて倒れこんでしまう。


「今だ!!」

 クリスは飛び出すと、魔狼の腹部に木剣を突き入れた!


 ただの突きではない。


 十数年間、家族に虐げられながらも必死で続けた木剣術、

 その渾身の突きだ!


 その一突きは魔狼の腹部を破り、内臓までをも貫いた・・・!


「WOF!!!!」

 ビクンッ!と一瞬魔狼の眼が見開かれ、その頭がはね上がる。


 が、すぐにゆっくりとまぶたが落ち、

 同時に横向きに崩れ落ちる。


 そしてそのまま、動かなくなった・・・。


「はぁっ・・・はぁっ・・・。

 や・・・やったぁ・・・」

 安堵あんどしたクリスは、

 そのまま尻もちをついてしまった。


 はっきり言って、

 勝ったというより助かったという心境である。


 並みの剣士や冒険者でも、

 三匹までなら確実にしとめられるという魔狼。


 それを一匹何とかするのにこのザマとは・・・。


 クリスは改めて、

 自身の未熟さを痛感した・・・。


 それにしても・・・

(魔狼ってこんなに大きかったんだ・・・。

 本ではもっと小さいイメージだったけど・・・)


「あれ・・・?」

 何だか魔狼の様子がおかしい。


 既に意識のないはずの身体が、何故か微かに光っている。

 いや・・・


(さっきの・・・、光を浴びせた時から・・・?)


 母マリアがシスター時代に与えられたという聖光石ホーリーライトのペンダント。


(確か、魔よけの効果があるって・・・)


 ・・・クリスはペンダントを開け、

 たき火を利用して再び『研磨』した宝石の光を魔狼に浴びせた。


 やがて光り続けるだけでなく、その姿に変化が訪れた。


 硬くどす黒かった体毛は徐々に柔らかな白へと変わり、

 獰猛だった顔がまるで人懐っこい子犬の様な面立ちに・・・。


を・・・いる・・・?

 だったらもうこの魔狼は・・・)

 人を襲う魔物じゃない・・・?


(でも・・・)


 クリスは魔狼の腹部の傷を見た。


 明らかに致命傷だ。


 そしてこの光は、

 傷の回復はできない・・・。


 やがて、魔狼の全身を覆う光も消えた。

 そして、魔狼と呼ばれる敵ももういなかった。


 そこには一匹の白い生き物が横たわるだけだった・・・。


 クリスは諦めきれなかった。

(何とか・・・何とかできないのか?

 僕のスキル『研磨』で・・・!)


【研磨・・・対象の表面を研ぎ磨くこと、もしくは少々削ること。

 研鑽けんさんを重ね、自身の才能や能力を磨くこと。

   パリス教聖典 共用語大辞泉の巻より】


 研ぐ、磨く、そして・・・


(少々削る・・・)

 クリスはある可能性に気づいた。


(もし・・・削ったを他に分け与えられるとしたら・・・)


 ただの強引な言葉の解釈かもしれない。

 だがそれでも・・・。


 クリスは白い生き物の傷に手を当てる。


 そして祈った。

(僕の命を・・・。

 そして、それをこの子に・・・!)


 そのままクリスは気を失った・・・。



 ~~~~~~~~~~~~~~~~~



 翌日、平原の街道では不思議な光景が目撃された。


 巨大な白狼と、その背で眠る小さな少年・・・。



【つづく】




 _____________________


 ここまで読んで頂き本当にありがとうございます!

 そして・・・、


『街に着いたはまず何を⁉』


 下にございますコメント欄にて、

 皆さまの閃いた主人公達の行動をお贈りください・・・!

 単語だけで良いのです!

『着替え』とか、『宿屋』とか、『裸踊り』とか・・・。


 文字通りこの作品は皆さまのアイデアだけが頼りです!


 それなくしてこの世界は成り立たないのです!


 どうか、どうかよろしくお願い申し上げます・・・!


 というお願いを先日しておりました。


 ありがたくもコメントを頂き、

 物語の続きを描く事が可能に・・・!


 そして今、

 次の回で新しくコメント欄にてアイデアを切望しております。


 改めて、どうぞよろしくお願い申し上げます!


 というお願いも先日しておりました。


 おかげさまでそれにもコメントを頂き、

 物語の続きを描く事が可能に・・・!


 本当にありがとうございました!


 基本、最新話でコメントによるアイデアをお願いしておりますので、

 どうぞよろしくお願いします!
























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