第4話 元貴族の少年、相棒と街を見て回る



「着いた・・・!」


 白狼の背にまたがったクリスの目の前には、

 目的地である街の検問所が見える。


 時間はまだ午前。


 まさかこんなに早く到着できるとは・・・。


「君のおかげだね。

 ありがとう!」

 ここまで早足で自分を運んでくれた白狼に、

 クリスは礼を言う。


 白狼もその言葉を理解したように、

 頭を向ける。


 その表情は微笑んでいるようにも見える。


「ふふっ」

 地面に降り、そこからは並んで歩きだす。


「じゃ行こうか、


「ウォフ!」

 ユキと名付けられた白狼は、

 楽しそうに返事をする。



 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


「くれぐれも暴れさせたりしないようにな」


「はい」


 検問所ではユキの事で若干もめたが、

 それでもクリスの『従魔』という事で街へ入る許可をもらえた。


 クリス本人に関しては、

「家は土地(領土)を耕す(治める)仕事です。

 僕は役立たず(無能スキル)だからと家を追い出されたので、

 この街にお金を稼ぐために来ました。

 ユキとは道中野宿をしていた時に出会って、

 餌とかあげたら仲良くなれたんです」

 と、正直に(?)説明したら、


「そうか、の子供か・・・。

 なるほど、口減らしというやつか・・・。

 確かに力仕事には向いてなさそうだが、

 それにしても不憫ふびんな・・・」

 と、警備兵も何やら勘違いしてくれた。


「分かった。

 仕事探しなら、冒険者ギルドに行くといい。

 君一人ならともかく、その従魔が一緒なら大丈夫だろう。

 ・・・頑張れよ。」


「はいっ、ありがとうございます!」


 ただし、通関料はの大銀貨2枚を払う事になり、

 早くも懐の危機となったが・・・。


 検問を抜け、クリスは街に入る。


(一か月ぶりかぁ・・・)


 さっそくぶらぶらと歩いてみた。


 街中に従魔というのが珍しいのか、

 多少周りから好奇の眼で見られたが、

 クリス達を害するような態度を示す者はいなかった。


 この街・・・、

 地面はしっかりと整備され、

 建物も全体的に清潔感がある。


 街ゆく人たちの顔も明るく見えるし、

 大通りには活気ある店が切磋琢磨せっさたくまするように並んでいる。


 街全体が明るい雰囲気に包まれているようで、

 そこにいるだけで気持ちが前向きになる・・・。

 そんな感覚をクリスは味わった。


「頑張ろう・・・!」

 自分の・・・、

 自分たちの居場所を手に入れるために・・・!


 クリスの小さな決意に、

 ユキが鼻先を近づける仕草で応える。


 スンスン・・・

「あはは、くすぐったいよユキ」



 さて・・・、

 まずは仕事探しからだ。


 冒険者ギルドは大通りの先、

 噴水のある広場に面して存在していた。


 冒険者ギルド・・・。

 様々な事情から一つ所に収まれない者、

 故郷も家族もない者たちに仕事を斡旋あっせんしてくれる、

 大陸各所に支部を持つ組織である。


 仕事内容は魔物退治に護衛や清掃、薬草集めなど幅広く、

 中には報酬として貴族の位が手に入るような特別な依頼が舞い込んでくることもある・・・。


「行くよユキ」


「ウォフ」


 入り口の自由扉スイングドアを開いて、

 クリスはギルドの中に入った。


「こんにちはー」

 中に入ったらきちんと挨拶。


 鎧やローブに黒装束、

 覆面マントにパンツ一枚など様々な防具を身に着けた冒険者達が

 こちらを見る。


 そんな冒険者の先輩たちに、

 クリスは目線で挨拶しながら

 正面の受付カウンターに向かった。


「すみません、

 冒険者登録をお願いします」


「はい、登録ですね。

 それではまず、こちらの用紙にお名前と職業を・・・」

 笑顔で応対してくれる妙齢の女性。


 穏やかで優し気な雰囲気が、

 亡き母マリアを思い起こさせる・・・。


「クリスさん、13歳。

 特技は掃除に薪割り、芝刈りにお洗濯・・・ですか。

 あの、職業欄が無記入ですけど・・・」

 記入した登録用紙を見ながら、

 受付女性が聞いてきた。


「すみません。

 お仕事経験がなくて、何て書けばいいのか・・・」


「でしたら、『従魔士テイマー』か『剣士見習い』で結構ですよ」

 傍でおとなしくしているユキと、

 クリスの背中の木剣を見ての提案であった。


「えっと、じゃあ『剣士見習い』で」


「『従魔士テイマー』でなくて良いのですか?

 そのほうがきっと指名依頼も来やすいですよ」


「多分、仲良くできるのはユキだけで、

 他の魔物とは無理ですから・・・」

 クリスがそう言うと、

 受付女性はを見比べ、


「確かに、ユキちゃん・・・ですか?

 クリスさんと一緒で楽しそうですね。

魔』というより『魔』という感じで・・・」


友魔ゆうま』・・・、

 良い言い回しだ。


 クリスはこの女性に好感を抱いた。


 その後、登録料大銀貨2枚を払い(また!)、

 冒険者ランクや仕事の受け方、

 禁止・罰則事項、

 ギルドの提携店の紹介等々、

 説明をみっちりと受けた。


 最後に、

 頑丈な麻紐あさひもを通したプレートを渡された。

 

 冒険者の登録証だ。


 金属製のプレートには自分の名前と登録番号、

 そしてクリスのランクを示す『E』の文字・・・。


 今まで付けていたペンダントを外し、

 新しく登録証を首から下げた瞬間、

 クリスは改めて冒険者としてやっていくのだと実感した。


 不安はない、怖くないと言えば嘘になる。

 でも・・・


(独りじゃないしね・・・)

 クリスはユキの首筋に手をやり、

 その温かさを感じながら思った。


 その気持ちが通じたかのように、

 ユキもそのクリスの腕に頬ずりしてくる。


 何故か周りのギルド職員や冒険者まで、

 うんうんと生温かい視線を向けてくる・・・。



 コホン。


「それで、さっそくお仕事を受けたいんですけど・・・」

 クリスは改めて、受付女性に向き直った。


「そうですね。

 慣れてくると皆さん、あちらの依頼掲示板からご自分でお仕事を選ばれるのですが・・・」


 言われて見ると、確かに壁に備え付けの掲示板がある。

 そこに貼られた依頼書の数々・・・。


「えっと・・・」

 遠目から見ても、その仕事内容は玉石混合ピンキリな事がうかがえる・・・。


「ただ、もしよろしければ、

 しばらくは私ども職員が、クリスさんに見合ったお仕事を紹介いたしますが?」


「お願いします!」

 受付女性の助け舟に、

 クリスはためらいなく飛びついた。


「ありがとうございます。

 紹介料は一律報酬の一割となっておりますので」

 にっこり。


「はい・・・」

 ま、いいけどね・・・。


 受付女性はいったん席を離れ、

 後ろの書類棚を何やらガサゴソやると、

 何枚かの書類を手に戻ってきた。


「お待たせしました。

 クリスさんにおすすめの仕事はこちらです。」

 そう言って彼女は、

 持ってきた数枚の依頼書をカウンターに並べた。


【つづく】




 _______________


 読んで頂き本当にありがとうございます!

 そして・・・、


『依頼書に書かれた仕事の内容とは!?』


 下にございますコメント欄にて、

 皆さまの閃いた仕事の内容をお贈りください・・・!

 単語だけで良いのです!

『清掃』とか、『見張り』とか、『ホスト』とか・・・。


 ご覧頂けたとおり、

 この作品は皆さまのアイデアだけが頼りです!


 それなくしてこの世界は成り立たないのです!


 どうか、どうかよろしくお願い申し上げます・・・!


 アーメン・・・。


 という先日したお願いにもコメントを頂き、

 本当にありがとうございました!


 基本、最新話でコメントによるアイデアをお願いしておりますので、

 どうぞよろしくお願いします!


















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