第2話
女の子同士のカップルは、秘密にしておかなくちゃいけない。
たとえそれが、元恋人だとしても。
いつも寝る前は京子とメールをしている。
その手が今日は重かった。
岡田君と歩いているのを見てしまって。
そして、私は優里と付き合う宣言までしてしまって。
どんな話をすれば良いんだろう。
「今日は一緒に帰れなくてごめんね! 怒ってる?」
京子からの来たこのメールを既読して、30分考えている。
いつもは、すぐ返すのに。
あんなに京子のことが好きだったのに、今はその気持ちが薄れている気がする。
岡田君と歩いているのを見たって言ってしまおうか。
けど、それじゃ私が裏切っているみたいで。
だけど、京子が先に裏切って。
そんなことが頭をぐるぐる回ってる。
そんな時に優里からのメールが来た。
「紗季、今暇?」
「新恋人からのメールだよ! チュッ!」
サバサバしてると思ってたけど、意外にこういうところもあるんだ。
「今、ベッドにいるよ」
サッと返事をした。
「紗季って、寝るの早いね?」
「もう23時だよ? 優里は、寝ないの?」
「私も自分の部屋にいるけど、バリバリyoutube見てるよ!」
「そうなの? どんな動画見てるの?」
何だろう……。
優里とのメールの方が楽しいって感じちゃう……。
京子からのメールだ。
「紗季どうかした? 返事ないけど、何かあった?」
浮気相手とメールしているような私なのに。
心配してメール送ってくれる京子。
京子はやっぱり優しいけど。
岡田君の顔がちらつく。
ダメだ! 気持ちの整理がつかない!
私も私だよ。優里とキスしたくらいで……。
なんで気持ち揺らいでるんだ。
今までの京子との仲じゃない!
ちゃんと聞いてみよう。
メールじゃなくて、直接声を聞く。
そう思って、京子に電話をかけた。
コールしてすぐに京子は出てくれた。
「紗季どうしたの? 大丈夫?」
「うん」
この間にも、優里からメールが来ているが、そちらは放っておく。
「京子ってさ、大事なことって言わないじゃん」
「なになに、あらたまって?」
「今日って何のバイトしてたの?」
それを聞くと、無言になってしまった。
「本当にバイトだったの?」
まだ無言になっている。
「私、京子のことが好きだけどちゃんと教えてくれなきゃ、信じられないよ!」
追いかけてたことまでは、言わないでとどめておく。
京子は、全然言葉が出てこなかった。
「もしかして、紗季さ。何か疑ってるかもだけど、そんなこと無いからね」
京子のそんな言葉が、何か見苦しい言い訳みたいに感じた。
この期に及んで、二股でもかけようってことなのかな。
私と京子が付き合っているのは、秘密なわけで。
岡田君とのことも秘密にして。
もしかして、ずっと前からそんなことがあったのかな。
岡田君と帰ってる時の京子の表情。
あの顔が頭にこびりついて離れない。
「そんなこと無いってなによ」
また沈黙。
もうやるせない。
京子からひと言だけ返事が来た。
「明日、昼休みに体育館の裏に来て。そこで話をしよう」
「わかった。私も話すことがある」
そう言って電話を切った。
これで京子とは終わりかもしれないな……。
この短い電話の間に、優里からのメールが10通を超えていた。
「紗季は、何してるのかなー?」
「もしかして京子との別れ話しているとか?」
「いきなりパタッと途切れると心配になっちゃうね」
「もしかして私の事も既に話してたりするのかな?まさかね」
「ちゃんと紹介するなら明日が良いと思うよ!二股とか良くないからね!」
「覚悟を決めて、私と付き合うと良いよ!」
「そろそろ電話は終わるのかな?」
「もしかして寝ちゃってるとかかな? そうだとしたら、私そうとうウザイね」
「メールもこの辺りにしておこうかな。私の方がいきなりフラれちゃうかもだしね」
優里っておしゃべりだったんだな……。
けど、そんな風に私にかまってくれることが、今の私にはすごく嬉しかった。
電話しちゃおう。
コールをすると、すぐに出てくれた。
「今京子と電話してたんだ」
「え、本当? それでそれで?」
私は優里に一部始終を話した。
「明日の昼休み、一緒に体育館裏に来てくれる?」
「いいよ。わかった」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます