『栄光の弦楽猿合奏団』 最終回 その2


 ゴフリラー艦長は、ヘレナ王女の申し出を一笑に付しました。


 『なにを、いまさら、自分勝手な。命は助けるゆえ、さっさと、消え去れ。そう、伝えたまえ。』


 すると、シポク副長が言います。


 『艦長。お言葉ですが、事がことですから、一応、猿族中央会議に打診した方が宜しいかと。後で責任を問われたら厄介ですよ。』


 『責任? おいらが責任を持つんだから、問題ない。』


 『しかし、現議長閣下は、人類に融和的です。あなたのお立場が損なわれる可能性もありますよ。』


 『ふん。まあ、良いだろう。では、すぐに、おいらの意見を添えて、打診せよ。』


 『わかりました。』


 猿族中央会議議長のジーナ議長は、人類との闘いはもはや終わりと宣言した張本人であります。


 しかし、いまだ、人類反対派はかなりの力があり、議会内の35%を占めていたので、力ずくというわけにも行きません。議長の対人類融和政策は、中間派を取り込んで、ぎりぎりで、支持されたわけですから。


 しかも、猿族を上回る技術を持った、伝説のタルレジャ王国の出現は、穏健中間派をも、震え上がらせたのです。


 ゴフリラー艦長は、そこはよく判っていました。


 結果は、明白だったのです。


 議長の意見は、まずはヘレナ王女の申し出を受け入れるが、ただし一定期間は、あくまでも試験期間とするとしました。上手く行かなければ、すぐに、撤退してもらう。というものです。


 また、主要な人物を、首都に、事実上、人質として差し出すように要求するとしました。


 さらに、人類の進んだ技術を転移してもらえるチャンスだ、猿族は、さらに進化する、と、主張したのです。


 しかし、議会は、申し出を拒否すると、可決したのでした。


 恐怖心の方が強かったのです。


 ただし、議長には拒否権があり、ジーナ議長は、ただちに拒否権を発動して、再協議を求めました。また、それに当たって、ヘレナ王女を議会に召喚するように要求したのです。


 でも、議会が再度受け入れを拒否したら、それが決定になります。



 議会は、議長提案を、再度拒否したのでした。


     🙈❎🙊

 


 ヘレナ王女と、ルイーザ王女、キズニ・タマニョ、コンサート・マスターは、途切れること無く、交互に延々と演奏をしていました。


 アマティたちは、こちらも、根性を入れ直して、王女さま側が用意した、座り心地のよい椅子に腰かけて、聞き入っておりました。


 椅子はたくさん用意され、兵士たちも座ることができたのです。


 さらに、お茶や、お菓子も配られました。


 『こりゃ、旨いな。人間は、こんなものを食べていたのか。』


 ストラディバリウスは、仰天しました。


 『しかし、甘すぎる。糖尿病になりかねないな。』


 と、付け加えましたが。


 ブラームスさまのヴァイオリン・ソナタは、とっくに3曲すべて終わり、次に、ベートーヴェンさまのヴァイオリン・ソナタになっておりました。

 

      🥮


 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る