『栄光の弦楽猿合奏団』 最終回 その1


 ヘレナ王女は、ピアノの傍らに立ち、にこやかに言いました。


 『こうしたことは、やりたくなかったのですが。でも、みなさま、これは、争いの再開ではなく、人類と猿族、さらに沢山の生き物との、新しい未来のための再会にしたいのです。タルレジャ王国には、20万人の人類が生活しています。一時期、地球からは、異次元空間に、逃げ出していました。人類は、多数の罪を犯しました。それは間違いのないことです。王国には、しかしながら、やはり、地球に帰りたいという希望者が、多かったのです。もしも、帰ってくることを、許していただけないならば、また、去りたいと思います。今度は、永遠に。二度と地球には現れません。それを、受け入れてくださるならば、平和を一緒に築きたい。易しくはないでしょうし、時間は掛かるでしょう。また、乗り越えなければならないことは、互いにたくさんあります。でも、人類は、地球が故郷です。決めていただくのは、今は、皆様です。あなた方が、地球の指導者だからです。では、ルイーザさまのヴァイオリンと、あたくしのピアノで、ブラームスさまの、『ヴァイオリンソナタ第1番』を演奏いたします。もし、受け入れてくださるならば、あとで、一緒に合奏をしましょう。皆様の結果が出るまで、わたくしたちは、この演奏を続けます。』


 ヘレナさんは、ピアノの前に座りました。



      🎻


 

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