『栄光の弦楽猿合奏団』 最終の5


 ヘレナ王女は、さらに、次の下準備を始めたのです。


 ルイーザ王女のバッハは、まさに面目躍如たる名演で、ヤマーシンは、涙が溢れるのを止められなかったわけです。それは、猿族にもまさしく同じだったのです。


 『なぜ、猿族と人類は戦争をしたのか?』


 アマティは、以前から持っていた疑問を思い出しましたのです。


 『誰が、戦争を望んだのか? 民衆か、為政者か? 哲学者か?』


 海岸では、既に闘いが始まっていました。


 ルイーザ王女の音は、もちろん海岸にまで届きます。


 一方、闘いの激しい騒音も、臨時の演奏会場にまで到達したのです。


 みな、何事かと緊張したのでした。


 ルイーザ王女は、しかし、おかまいなしに、最後まで弾ききりました。


 すると、ヘレナ王女は、物質移動技術を発動し、村から、巨大なコンサートグランドピアノを岩盤の舞台上に運んできたのです。


 『あれは、なんだ?』

    

 アマティが叫びました。


 『ピアノだんべなあ!』


 ストラディバリウスが答えたのです。


 『しかし、でかい。』


 アマティが、身体から染み出すように言いました。


 ですが、アマティは、ある伝説を思い出したのです。


 むかし、南の海上には、タルレジャ王国という、人類の魔女が治める国があった。


 猿族は、この謎の国にも果敢に闘いを挑んだが、奇っ怪至極の魔術を擁するこの王国にだけは勝てなかったのだ。しかし、ある日、王国は、人類が招いた、激しい自然の猛威により、一夜にして海に沈んだのだ。まさに、猿族の神による天罰であった。


 『これは、まずいぞ。我々は、魔女に囚われたか!』


 


  🏝️🏘️ 🌊🌊🌊🌊🌊


 


 

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