『栄光の弦楽猿合奏団』 最終の4

 『無伴奏ソナタ第2番イ短調』は、4つの楽章から成り立ちます。グラーヴェから始まる、大変に深淵な作品ですが、やはり特に第2楽章のフーガはかなり長大です。あと、アンダンテ、アレグロと続きます。


 最後のアレグロは、まさに圧巻でした。


 キズニ・タマニョさんは、この難曲を、見事に弾ききったのでした。


 『さすが、コンサート・マスターだ。』


 ヤマーシンは、改めて感心したのです。


 アマティたち、猿族の音楽家も、まさか、人類がこうした演奏を、いまだにできるとは信じがたかったのですが、これは、事実だったわけです。


 次は、いよいよ、ルイーザ王女による第3番ハ長調です。


 こちらも、アダージョ、フーガ、ラルゴ、アレグロアッサイ、の4楽章から成ります


 ルイーザ王女のヴァイオリン演奏は、姉の所謂、『女王ヘレナ』に対して、『神秘の魔女』のなせる技と言われたりします。あまり、良い言い方ではありませんが、確かにかなり妖艶な面持ちを発揮し、聴く人を虜にしてしまいます。


 第2楽章のフーガ主題は、『ロンドン橋が落っこちる』に良く似た旋律を持ちます。


 この、魔女的な魅力は、キズニ・タマニョさんには無いものでした。

 

 しかし、ゴフリラー艦長の部下たちは、何れにせよ、音楽をまったく理解しなかったのです。


 音楽に対して、まるで不感応でありました。


 それは、何者にも気を取られず、命令を遂行する兵士としては、つまり利点なのです。



 さて、ヘレナ王女は、為政者としても、司令官としても、極めて優秀でした。


 ゴフリラー艦長の秘蔵部隊が海岸に上陸しようとしていることを、素早く察知したのです。


 そこで、ルイーザ王女の演奏の妨げにならぬように、静かに隠していた最強衛兵隊を、海岸に差し向けました。


 そこで、猿族精鋭ゴフリラー隊と、人類衛兵部隊との闘いが始まってしまったのです。


     ⚔️

 


 


 


 

 

  

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