『栄光の弦楽猿合奏団』 下の3


 アマティが、答えたのです。


 『さっぱり分からないですが、しかし、猿属は、人類との戦いは、終わりにしました。もし、生き残っている人類がいたら、保護し、適当な支援を行う用意があります。音楽はその重要なツールで、我々は、基本的に『猿合奏団』なのです。人類がかつて産み出した音楽の再現を行っていて、生き残った人類に提供したいと、考えております。あなたがたも、保護しようと思います。彼女は、われわれ、猿合奏団の、ソリスト、グァルネリさんです。』


 王女さまが、頭を下げながら、言いました。


 『じつに、素晴らしい演奏でした。あ、こちらは、わが、王室合奏団のコンサート・マスター、キズニ・タマニョさま。それから、こちらが、主席指揮者の、ヤマーシンさんです。ただ、わたしたちは、おろかな戦争さえなければ、ここで生きて行けます。ただし、猿属さまとの、正当な交易なら、可能です。さて、では、おかえしに、あたくし、ヘレナと、妹のルイーザが、演奏いたしましょう。』


 すると、兵士の一人が、ヴァイオリンをヘレナさんに手渡したのです。


 『先ほど、パルティータを弾いてくださいましたから、あたくしたちは、残りの無伴奏ソナタのほうを演奏いたしましょう。あたくしが第1番、タマニョさまが第2番、第3番を、ルイーザさまが、弾きましょう。』


 そう言うと、ヘレナさんは、弓を高々と持ち上げました。


 王女さまふたりは、王国の伝統衣装に身を包み、また、宗教的理由から、いつも、裸足ですが、もう、それ以外には考えられない、という独特の美しさと風情がありました。




 


 

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