『永光の弦楽猿合奏団』 下の1


 ヤマーシンと、ギズニ・タマニョは、覚悟を固めたのです。


 猿属軍団は、強い。


 人類が、最終的には、敵わなかった相手です。


 まして、集団ならば、ほぼ無敵であります。


 ヤマーシンたちには、武器もない。


 相手は手には武器も、持っているようでした。


 ふたりは、もはや、その場に座り込んだのです。


 猿属たちは、ぐんぐんと間合いを詰めてきて、いまやすっかり取り囲まれてしまったのです。


 ヴァイオリンを持った、美しいキンシコウさん、つまり、グァルネリさんだが、は、月の下に立ち尽くしていました。


 すると、ひと猿が、ついつい、と進み出てきたのです。


 アマティであります。


 彼が、リーダーなのです。


 『あなたがたは、ここに、住んでいるのですか?』


 ヤマーシンは答えました。


 『さよう。』


 『あなたがたは、ご夫婦ですか?』


 ヤマーシンと、ギズニ・タマニョは顔を見合わせました。


 『ちがう。』


 そう、ヤマーシンは回答しました。


 『なら、友人?』


 『まあ、そうだな。』


 『ほかに、だれか、いるのですか?』


 『いや。ふたりだけだ。』


 『ふうん………』


 しかし、猿属は、すでに、斥候を出していたのです。


 その、ひとりが帰ってきて報告しました。


 『この先に、トンネルがあります。その向こうには、どうやら、住居がありそうです。引き続き探索中です。』


 『そうですか。なるほど。で、そこには、何人居ますか?』


 『わからない。われわれは、あそこの丘の小屋に住んでいる。あとは、廃墟だ。たぶんな。』


 ヤマーシンは、そう、答えました。


 『ほう。まあ、すぐにわかります。調査団が向かっていますから。』


 『ふん。』


 『しかし、心配しないでください。われわれは…………』


 アマティが言いかけたのです。

 

 そこで、突然、武装した人間の兵士たちが岩陰から多数現れて、猿属を完璧に取り囲んだのです。


 最新型の防護服に、あやしい、ヘルメット。手には、たぶん、光線銃。


 確かに、人類の精鋭部隊があったころには、こうした軍隊もいたのたが、猿属は他の動物たちとも連合して、人類を打ち破ってきたのでした。


 しかし、この場では、猿属は明らかに不利のように見えます。


 こんな精鋭部隊がいるなんて、思ってもいなかったのだから。


 それは、ヤマーシンも、同様だったのでしたが。


 アマティが、言いました。


 『待ってください。』


 しかし、その足元の岩石が、瞬間蒸発しました。


 猿属が、かつて見たことがない、恐るべき武器のようです。


 『動かないで。』


 そう、強く叫んで、ついに、双子の王女さま姉妹が現れたのです。


 

        👧👧

 


 


 

 

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