第20話農園と蒸留水
ふりかえると男性が一人たっていた。
(ひょろひょろのこのおじさん誰?)
「フーゴおじさん!久しぶり、元気だった?」
「ハマカちゃんこそ元気だった?」
「ええ、元気だったわ…あっ、紹介するね!私の知り合いのリディーちゃんとお兄さんのタルカ君!」
「どうも。」
「ああ、ラニーから話は聞いているよ。」といいながらフーゴはかがんで私と目線を合わせた。
「ハマカが知り合いの子どもたちが、なんとかしたいって言ってくれたって…本当にありがとう」とフーゴは私の手を握った。
(まだ、成功するかどうかはわからないけど…提案してみてよかった。)
「おじさん、感動的なシーンで悪いけど…」
「そっ、そうだな。準備…。」
「ごめんね!リディーちゃん…花の匂いは摘んだ直後が一番高いから…。」
「いえ、大丈夫です。」
「ハマカ、こっちに来てくれ!」
「はーい!」
(うわー。でかい鍋…。寸胴って言うのかしら…。)
農地の隅にある小屋の前にはロゼの花びらが入ったかごと、大きな鍋が用意されていた。
「この鍋は、私のお店から運んだの。」
(そう言えば…ハマカさんのお店にあったような…気がする。)
「この鍋はもともと薬剤用なんだけど今回は特別に貸し出したのよ!」
「そうなんですね。」
(普通の人はこんな鍋持っていなさそうだし…。)
話ながらハマカは鍋に花びらをいれて、腰のポシェトから木の棒を取り出した。
「ハマカさん、それって…」
「杖よ。」
(つえ!?杖ってことはこの世界は平民でも魔法が使えるの?)
私は頭の中で、前世の記憶をたどった。
(そう言えば…、街中の人々がちょろっと魔法を使うシーンあったような…。基本、王子とヒロインの恋愛メインだったからな…。)
「そうね、リディーちゃんも学校に入学する時にもらうと思うからそれまで我慢ね!」
(そうか…つまり私は魔女っ子になるのか…いい年した冴えない地味女の私がついに魔女っ子デビュー…恥ずかしい…。)
そんなことを考えているうちに、ハマカは鍋の方向に杖を構えて「バッサー」と唱えると杖の先から水が少しずつでできた。
(すごい、すごい⤴️⤴️テンション上がる❗)
杖の先から出る水の量は少しずつ増えていきあっという間に鍋がうまった。
「やっぱりこの量をだすと少し疲れるはね。」
「えっ、魔法って疲れるの?」
「ええ、魔法は自分の魔力を使うから、魔力は自然界にあるんだけど、その魔力を体が吸収して杖の力を使って放出するのよ。」
(電化製品と電気の関係みたい…面白い!)
ハマカは疲れたように肩を回すと鍋蓋をひっくり返して、同じように水を張った。
「ハマカさんこれは?」
「これは…のぼってきた蒸気を冷やすためのものよ…少し離れてて。」というとハマカは鍋蓋に杖を向けたまま「フロスト」と唱えた。
(うわー、氷っていく。)
呪文を唱えて数秒のうちに鍋蓋の水はカチカチに氷ってしまった。ハマカは鍋がのせてあった竈に火をつけると鍋蓋をのせて自分の持ってきた大きな箱の中からレジャーシートのようなものを出した。
悪役令嬢に転生 死ぬのは嫌だから領地経営してみた @toujiichida
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