第11話 母の思いと下町

城に戻ると門の前でタルカと別れ、今日の門番担当であるキンリーにお母様に帰って来たことを言わないように口止めをして部屋へと向かった。




(キンリーにも口止めしたし、もう大丈夫!)私は下町でかったリクの実が入った袋を回しながら意気揚々と自分の部屋に入った。


(ふぅ~!今日は走り回って疲れたしもう寝よ!)


と勢いよくベッドにダイブしたとき悪寒がした。


(寒っ、風邪でもひいたかな…。)




「イレーヌ…どこにいっていたの。」後ろから声がしてドアの方に視線をむける。


(おっおっお母様!)


「ごきげんよう。お母様!」


「ごきげんようではありません。今何時だと思っているんですか。」




お母様は真顔のまま静かにこちらを見据えっている。


(静かなのが、逆に怖い)




そして、私が持っていた袋を見ると「それはリクの実…またタルカと一緒に下町にいっていたのね。私があれだけマナーのレッスンをと…」と言って大きなため息をついた。




(下町の領民を知ることも大切だと…)


そして、私の方をまっすぐ見つめ真顔で話始めた。


「イレーヌ。あなたはアンフォード家の人間として7歳になれば王都の学園に入学します。そこで時期領主となる殿方を見つけなければなりません。」




(いや、そんなつもりはないんだけど…今のままじゃあどのみち…死刑だし。)




「そのためにはきちんとした教育が必要なのです。それに貴族たちにも上にたつものとして、威厳と風格を示さなければなりません。もし、父上に何かあれば、あなたがこの領地を支えなくてはならないのですよ。」と母は私のほほにそっと手をやる。




「……」


「私は、娘のあなたに苦労をかけたくありません。」


「わかっています。けれど…3日後に約束があるのです。それだけは…お願いいたします。」と頭を下げた。


「なりません。下町との関係性が表沙汰になれば……あなたはもう少し考えて行動しなさい。」


最初からお母様は私が下町のものと会うことに反対していた。





「お願いします。一日だけでいいのです。一日だけでも…下町とは縁を切りますから。」


(…これで…私の自由がなくなる……。)


「…。」


母の目にうすっすらと涙のようなものがみえた。




(私は前世が母子家庭だったら…お母さんの涙に弱い…。これ以上お母様を悲しませたくない。)




「わかりました。1日だけは出掛けるのを許しましょう。ですが、マナーのレッスンは明日から始めます。よろしいですか?」


「…はい。」




お母様は静かに立ち上がると部屋をあとした。


その日の夜はなかなか寝付けなかった。母の思いや下町との関係、自分の立場を改めて見つめ直した。


(私は領主の娘…もう下町との関係を続けることはできないのかな…。)



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