第8話
東四局二本場。配牌は、ちょっと遠いが翻牌含みの混一色。この自摸順だと、俺が一番早いだろうし、他の3人はは面前で進めるべき手だろう。人とは言えないが。読み通りであれば、12順目には面前混一色がテンパり、その2順後に自摸上がるはずだが。序盤はともかく、中盤では鳴かれまくり、好牌が喰い流されて上がりが阻止された。ノーテンバップを払い、南場へ。
南場は、Aが自摸上がっては振り込むと言う形で、俺は積もられ貧乏だったが、オーラスまでに何とか体制を整え、僅差でトップ。AがラスでCが2着、Bが3着だが、Bと俺の差すら3000点以内と混戦だった。何かおかしい。牌勢が悪いのは、小細工をしていないから仕方が無いが、あいつらの手順に違和感を感じる。もちろん、確率以上の選択が出来なければ、ここに残ってはいないだろう。A はまだしも、B,Cの手順の正確さは異常だ。Aも局を重ねるごとに精度を上げてきている。 いくら俺でも、このままでは厳しい。そのまま、二回戦が開始された。
幸い、起家は前回と同じくA、俺はラス親。東場は捨てて、オーラスにかけ仕込みをすることにした。局が進むごと、俺は作業をしながら、あることが確信に至った。それはあいつらが、山の中の牌を予想していると言うことだ。もちろん、手牌捨て牌から残りの牌を洗い出すなどと言う低レベルの話ではない。この麻雀卓は全自動で、局が終了すれば、自動的に牌を回収し、下で洗牌する。その間に、前局の洗牌された牌が山となって出てくる。洗牌はランダムで右回り、左回りを何度か繰り返し、山の形に積み上げられてくる。ランダムといっても、洗牌のパターンは8通り。人間同士であれば、捨て牌に乱れも多いだろうが、今回は機械が三体。俺の捨て牌も整然と並べられている。牌が乱れると言うことはそれだけ相手にこちらの心理状況などの情報を与えてしまう。意識的に乱して、相手を罠に誘い込む事も出来るが、そんなことは必要なかったし、今は異なる理由で乱すことは出来ない。回収された牌はそのままの位置で下に落ち、それから洗牌され並べられる。ようは、捨て牌の位置を知ることで山にある牌は8分の1の確立で当てることができる。さらに、配牌の時点で、元の山の牌の位置から、その時の洗牌のパターンを確定し、それでやつらは山の中を読み、間違いのない手順で進めらるのであろう。さらに、Aの精度が悪いのも理解できる。この卓での経験値が少ないからだ。始めの2局はまったく情報が無いし、終局までに開いた牌の情報しか無ければ、分かる牌も少なく、配牌で洗牌のパターンを読むには半荘位では情報量が少なすぎる。だがAも6、7割は牌が見えているようだ。BとCに至っては、少なくとも、今は9割以上見えていると思う。奴らは機械学習で、山の牌の位置が、前々局の捨て牌、手牌と関連していることに気づいたのだろうか。いや、ロジックは分かっていないかもしれないが、関連性を紐づけ、推論する。そして修正しながら、最適な解を出したのだろう。もう、これは麻雀と言えるのだろうか、全員がほとんどの牌が見ているとは。
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