第7話
起家は準決勝で同卓だった機械雀士。機械雀士に個体差が有るかは分からないが、少なくとも、大会中はデーター共有は行えない。俺の打ち方はこいつしか知らないし、最終局まで抑えて打ったから、打ち筋を解析するほどのデータは無いはずだ。前回のデータはあるだろうが、あれは、対人間用の打ち方だから、役には立たないだろう。それどころか読みを誤らせるだけかもしれない。こっちも対人間用の打ち方が出来ないからかなり厳しい勝負になるだろう。
東一局、親は機械A、便宜上名前を付けさせてもらおう、順に対面がB、上家がC。準決勝でのAの動きにおかしなところは無かったと思う。あえて上げるなら、裏ドラの乗りが高いのと、同じ確率の捨て牌の選択で裏目を出さない。機械が運要素を上げているのかとは思わないが、偶然だろうか。淡々と捨て牌の河が広がっていく。二列目になるころには、相手の手牌はほぼ丸裸だ。あいつらもそうだろうが。 このままではCの上がりになるが、俺の手も良くないし、さほど高くはないから様子見としよう。Cは、聴牌自体はは早かったがダマで進め、13順目に牌を入れ替えてリーチ。そして、一発自摸。裏ドラものり、平和のみが、満貫までになってしまった。馬鹿ツキかと観客のため息が聞こえる。
いや、おかしい。一発自摸はまだしも、牌の切り替えが分からない。
ピンズの2‐3‐4から3‐4‐5の切り替え。ピンズの1も4も捨て牌手牌含め、見えてる数は同じ。あえて待つ必要はないし、切り替えに意味がない。そういえば、Aもおかしな切り替えをしたり、テンパってもなかなかリーチせず、そのせいでリーチしても上がり損ねることが多かった。BとCは準決勝もこの卓を使っていて、何かしらガン牌でもしているのだろうか。いや、こいつらは超繊細センサーは装備してないはずだ。俺の目にも見えないものが見えるとは思えない。
次局も大きな動きはなかったが、また上家のCが喰いタンドラ一で上がった。次の親でも上がられると、東場とは言え、少し厳しくなる。軽く流せればいいが。
東三局、配牌はCが良い。Aも中々だが、Bは厳しい。俺の手は悪い。普通に進めばCの上がり。どこかで仕掛けてラスのAを上がらせて均すのが良さそうだ。8順目を過ぎ、そろそろ鳴こうかと思っていたら、Bの仕掛け。上家のAからチー。おかしい。Bは、手が整って無いし、鳴いても役がない。これから役を作るには遠すぎる。何故だ、まさか自摸をずらす為に無理鳴きしたのか。何のために。この鳴きで、Bは上がれなくなるだろう。イーシャンテンから進まないから、仮聴を取るにもおかしい。流すだけなら、ほっておけば良いが、あえて、Aの捨て牌をポンをして、自摸を戻した。そのあと、やはりBが鳴いて、自摸をずらし、Aも上がれず、全員ノーテンで終局。流れ一本で東ラス、俺の親だ。BやCの動きが不気味だが、ここで加点しておかないと、南場が厳しくなる。手牌は狙い通りの好配牌。7巡目でイーシャンテンになった処で、Aが鳴いて、有効牌を喰い取られたが、数巡ロスして、高め聴牌。鳴かれる要素も少ないので、リーチ、即自摸平和三色。親の跳満。このまま上がりまくって逃げ切るという手もあるが、次の半荘を見越して、奴らの打ち方を観察することにした。
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