第5話

 前回と異なり、男は準決勝までは圧倒的な成績で勝ちあがることは無かった。全てトップであるが、大部分が僅差。まるで印象を消すかのような打ち方。トーナメントの性質上、男は機械雀士とはほぼ打たずに勝ち上がれたが、その分、一流の打ち手たちが、機械雀士にやられてしまった。 

 一体何があったのだろう。一流どころならともかく、超一流ですら敵わないとは。機械雀士も初期はただの絵合わせロボットだった。せいぜい、最も牌効率の良い打牌が出来る程度。しかし、競技プロとの戦いによって、振込の回避、相手の手牌への読みを学習し、ある意味、最適な手順で打つことが出来るようになった。だが、最適な手順が最高の打ち方ではなかった。最も上がる確率の高く、振り込まない打牌。正しい手順で打つ限り、ミスのない機械雀士に圧倒的に勝ることは出来ない。 しかし、正しくない手順を打てば、当然負けてしまう。機械雀士は電脳空間で何万回でも機械同士で対局を行い、常に最適な手順を打てる。頼るべきは運くらいとなり、競技プロはこれで悉く破れてしまった。 

 だが、第一回の大会に参加した博徒どもは選りすぐり一流。これくらいのことは当然極めている。息を吸うように、打牌ごとの期待値を計算し、捨て牌から6順も超えれば相手の手配はほぼ丸見え。まあ、人間だからミスがある分不利ではあるが、しかし、一流同士の戦いは正しく読めることが前提になる。そうなると、当然、相手がどう読むか分かるわけだから、読みを誘導することが出来る。相手を誘導することで自分の上がりを作るのが一流だ。しかし、機械どもはそれすら学習してしまった。打牌の虚実さえも見破られれば、条件は同じ。演算能力の勝る機械が勝つだろう。一流相手であれば。しかし、今回は超一流ですら負けてしまった。超一流は一流とは一線を画した雀士だ。偶然をたよりに一流の上に君臨しているわけではない。確たる武器をもって勝利してきたのだ。それが何故。彼らの武器が何なのかは知ることは出来ない。秘中の秘である。知られてしまえば、対策されてしまうから。 

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