第3話

 それの答えを出すかのように、麻雀好きの最も裕福な老人の一人と言われたある男の提案で、機械の参加を認めた、麻雀大会が開催されることになった。この男もただの酔狂で提案した訳ではない。老人は、この機械雀士を製造した企業の母体となる財閥と、長年、ある分野で覇権を争っており、人間が機械雀士を打ち負かすことで、評判を落とし、さらに財閥の党首とは人間と機械どちらが勝つか、天文学的な金額をかけて、勝負に勝つことによって、財閥の経済的な体力も奪おうという魂胆だ。 

 大会には老人の子飼いの代打ち達、この老人の鼻を明かそうと他の裕福層たちがかき集めた表や裏のプロたち、そして、賞金に引き付けられた在野の雀ゴロが集まった。 

 ついに、人間と機械雀士の戦いの幕が開いた。第一回は、呆気ないほどの人間の圧勝であった。36人(機械も含める)の雀士による戦いは機械雀士12体、推薦枠の代打ち達12名、オープン枠で予選を勝ち残った雀ゴロ12名で始まった。5回戦、各2半荘で上位2名が勝ち進む方式であった。決勝には機械雀士は一体も残らなかった。1回戦はそれなりに勝ち残ったが、2回戦ではほぼ敗北し、決勝どころか3回戦で全て敗退してしまった。

 機械雀士たちは、機械学習で学んだとしても、所詮は下手くそな素人や競技プロの綺麗な麻雀であり、一癖も二癖もある博奕打ち達にただただ翻弄されるだけであった。初回優勝者のコメントは以下のようなものであった。

 「機械雀士。初めて打ったがビックリしたよ。打牌は早いし、動きもスムーズ。発生が機械音なのは頂けないが。機械とか興味なかったから、こんなに進化しているだなって実感したよ」

「で、実力的にはどうでした」

「まあ、強いんじゃない。ミスも無いし。点ピン(1000点百円の一般的な低レート)くらいだったら十分凌げると思うよ」

「と言うと、あなたは今後も機械には負けないと」

「まあ、こっちは真剣勝負のプロだからな、こんなおもちゃに負けたら生きていけないよ」

このメッセージは視聴したすべての裕福層に送られ、機械雀士製造の企業株は暴落。財閥はいくつかのビジネスを老人に受け渡すことになった。

 そして、数週間後、名のある代打ち、雀ゴロが何人も行方不明になり、さらに一年後には同じ数だけの正体不明の死体が港に上がった。この意味に気付いたのは、老人と超一流と言われる博奕打ちだけであった。

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