第5話

 昼休みのうちに魔学部の顧問を訪ねて貸してもらった2つのバイザーを携えてボクはモンラディク先生と第2グランドへとやって来た。


 今日モンラディク先生に手伝ってもらってもファイアボールを出来るようにならなかったら、正直打つ手がちょっと思いつかない。

 でも後ろで応援してくれる二人がいると思うと自然と体が軽くなる。


 バイザーをかけた先生に後ろについてもらい、同じくバイザーをかけたボクは魔力を練る。

 グレースが見せてくれたようにゆっくりと、でもみんなと違って腕を伸ばさず顔の目の前で。


 後ろに先生がいてくれるのに自分の練る魔力球はグレースのそれと違い怖くて我ながら納得いかないが、覚悟を決めて徐々に熱を帯びる魔力球の匂いを注意深く嗅いでいく。

 顔に感じる熱が耐え難く、魔力の匂いが嫌な香りになりそうな瞬間に火球を前へ向けて撃ち出すと、先生のサポートのおかげなんだろう、ボクの元を離れた火球はしっかりと標的を燃やした。


 それを何回か繰り返しながら少しずつ手を前に出していく。

 いつしかボクは離れている魔力の匂いの違いも嗅ぎ分けられるようになっていた。


 ボクから身を離した先生に促され、いよいよ標的の前に一人で立つ。

 ちらりとエメちゃんとグレースを見ると、何も心配していなそうに晴れやかな二人の顔が目に入る。


 ボクはみんなと同じように伸ばした手の先に火球を作り、爆発させることなく撃ち出すと放たれた火球はちゃんと燃やしてくれた。的の遥か横に植えられた木を。


 吹き出すグレースと苦笑するエメちゃん。

 ボクはすっとドヤ顔をひっこめた。

 そうだよね、獣人は魔力の制御も下手だよね。

 感知が上手くいかなくて躓いてたからすっかり忘れてたよ。


 ……そこはカッコよく完璧に決まるところでしょ!?

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る