第10話

半壊の蔵の前…


ううう…口惜しや…口惜しや…

父上と新佐様の仇がうてぬ…口惜しや…


着物の女性は千代…彼女は家長である祖父を、あの世に連れて逝こうとしていた


おのれ…許さぬ! けっして許さぬ!

千代は洋平と同僚がいた部屋を睨みつけた

今宵も参るぞよ…



祖母と俺と同僚は仏壇に向い、念仏を唱えていた

俺と同僚の部屋は、離れから母屋の一室に移っていた

離れを休憩室に使っていた…だから、夜は誰もいない

工事を始めてから、夜中になると怪現象が起こるようになった…ラップ音や女性のすすり泣く声が聞こえる…などなど、夜になると母屋と離れの仕切りを閉じていた

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