第7話 カクレカクレ……ヒカクレ!

変身が完了し、黒の衣装に身を纏った俺はうんうんと唸っていた。

「万が一のために前みたいに笠が欲しいけど…どうやって出せば……」

『勇斗!』

「どわ!?」

ミ、ミカ!?脳内に直接……!

『言ったじゃん、テレパシーで案内するって』

マジでこんな感じのか……

『うん!そうだよ!だからえっちなことなんかも考えたら筒抜けだから気をつけてね!』

「こんな状況で考えねぇよ!!」

『わわ!大きい声は結構響くからなるべく脳内で会話して!』

す、すまん……

『それで笠の事なんだけど、この前勇斗が使ったのは多分、マジックホールドだと思うんだ』

マジックホールド?

『うん、その人の持ち物とか、魔法少じ……魔法少年として必要な物を保管、調達してくれる魔法なんだ』

今少女って言いかけたな……んで、そいつのお陰で俺は笠とか居合用の刀が手元にあったのか?

『物資の転送なんかも出来てるからね、ただ魔法少女には専用武器があってそれは魔法少女なら誰でも顕現させられるから勇斗が居合用の刀を持ち出せても問題ないんだけど…』

だけど?

『ボクが確認したとき、ブラックチェンジャーに笠みたいな専用武器以外の物を出す性能は無かったハズなんだよね。それ、魔法少女の劣化版だし』

そういやそうだったな。てかそんなのほっといて良いのか?唐突に持ってない能力が現れたんだろ?

『まぁー大丈夫じゃない?気にせず行こうよ!』

神様ェ……

『それよりも!早く行かないとマンション焼け落ちちゃうよ!笠はホールドって唱えたら前みたいな空間の裂け目が現れるから!そこから取って!』

適当だなぁ……

「ホールド」

俺がそう唱えると確かに空間の裂け目が現れ、手を突っ込むと笠が取り出せた。

『ね?言ったでしょ?ほらほら、勇斗!早く行くよ!』

わ、分かった。分かったから……

「うし……超特急で昇るぞ!」

『頑張ってこー!!』




メラメラと赤く燃えるマンションの最上階、そこには緑装束の男とまだ6歳にもならない少年がいた。

「怖いよぉ……怖いよぉ……お母さん……!」

「…チッ……うるさいガキだ。少し黙れ」

「うぐっ……」

男はそういうと少年を足で軽く蹴り飛ばす。

少年は涙を溜めながら蹴られた腹を抑え、呻き声を上げる。

「チッ……こんなクソガキを人質に取らずともコイツの首を取れば奴ら魔法少女はすっ飛んでくるだろうが……!」

男は相当怒りを貯めているのだろう、忍のような装束ゆえに目以外の部分ははっきりと見えないが、それでも怒りの表情が伺えるほどであった。

「桃でも黄でも青でもなんでも良いからとっとと来やがれ……あぁ、最近は黒も発見されたんだったか…」

男はそうボソボソ呟きながら頭を掻き、ドカッと胡座をかいて時間を潰そうとしたその時だった。

「ん……?なんだ……この感覚は。魔力…いや、もっと何か違う気配だ……」

男は何かの気配を感じ取り、下ろした腰をもう一度上げると屋上の縁まで歩いてそこに足を掛けて下を覗く。

そこにはマンションに向かって疾走する黒服の人物がいた。

「黒の服……それにあれは刀か……?………クククク、ようやくお出ましか……」

男は先程と打って変わってニンマリと笑みを浮かべると右手を振り上げて緑色の光を手のひらから放出させ、マンションの中に入り込ませていった。

「さて…あの根っこ野郎が言っていたような実力があるのか……試させてもらおうじゃないか……!」


『うわぁ…すっごい炎だね……』

「正直言って入りたくねぇが……仕方ないな」

『う~ん魔法少…年は煙とか炎にも耐性があるハズだからこのまま突入しようか、丁度扉も焼け切ってるし』

「……うし……」

『嫌そうだね…』

勇斗は苦い顔をしながらもマンションの入り口に走って突入し、炎に包まれていく。

中の光景はやはり酷いもので、あらゆるものが火で爛れ、地面には割れた蛍光灯がいくつも落ちていた。

「エレベータは勿論使えねぇな……階段から行くか…」

『階段はそこから直進するとあるハズだよ、内部の階段しかないみたいだね…外部にあれば楽だったんだけど…』

「階段が崩落してどうしようもなくなるよりかマシだ」

早速ナビゲートを受けた勇斗はマンション内部の階段を登り、10階を目指して駆ける。

2階、3階と順調に進んでいったが4階で勇斗の足が止まった。

『わぁお、5階への階段が見事に崩落してるね』

「……」

『勇斗?どうしたの?』

「この崩落跡……自然に崩落したにしてはおかしくないか?誰かが殴ったみてぇに円形に跡が出来ていやがる……」

『誰かが落としたのかな?』

「その可能性が高いが、一体誰が……」

勇斗がそう疑問に思ったその時だった。

マンションが大きく揺れてガラガラとコンクリートが崩れ落ちる音が響く。

「なんだこの振動……上からか!」

『屋上の放火魔が何かしたのかもしれないね……急ごう!』

「分かってるよ!」

勇斗は地面を強めに蹴って崩落して部分をジャンプで通過するとまた10階を目指して階段を駆け上がる。

「色々気になる事があるが今はそうも言ってられないらしいな……!」

『みたいだね……。……!勇斗!上!』

「上?」

ミカに言われて勇斗が頭上に目を向けると目の前に矢のようなものが降ってきていた。

勇斗はすぐさま回避すると矢が飛んできた方向に目を向け、黒い影がズッと動いたのを視認する。

「何かいる……一度廊下に逃げるか…」

勇斗は階段を昇ることを一度諦め、8階の廊下に入る。

すると黒い影が天井を這い回るのと同時にいくつもの矢が勇斗目掛けて放たれ、勇斗は走ってそれを回避する。

「ッチ!しつけぇな……!」

『何かは分からないけれど迎撃しないとキリがないね…!』

勇斗は矢から逃げるように走っていたが、跳ね返るように進行方向を反転すると今度は目の前から降ってくる矢を回避しながら黒い影に接近する。

黒い影は虚を突かれたのか動きが止まり、慌てて矢を放ってくる。が、慌てて放った矢が当たるハズはなく、ついに勇斗は飛翔して黒い影を掴み、床に叩きつけた。

「ようやく捕まえたぜ……!」

勇斗がそういって影が着けていた黒い布のようなものをひっぺがす。

「正体を…!!……あ?」

『何もいないね…』

布のその中には何者もおらず、ただ床があるだけだった。

「チッ……無駄足踏んじまったか……急いで最上階に行くぞ…!」

『さっきみたいな敵がいるかもしれないから階段以外からアプローチしたいね……ん、ここの階の4号室の天井が崩れてるみたい、上に登れるかも』

「4号室だな、分かった」

勇斗は辺りを見渡すと『804』と書かれたドアを発見する。

「ここか…失礼します」

勇斗は誰もいないと分かっているが一応の礼をすると中に入り、崩れている箇所を探す。

いくつかドアを開け閉めしているとトイレの天井が崩れているところを発見した。

「これだな、よいしょ!」

足に力を込めておもいっきりジャンプすると10階のこれまたトイレに飛び出た。

『まさか2階分も抜けていたなんて……流石にボクも予想外だったよ』

「案外視野はそんなに広くないんだな」

『”元”神だからね~。それに勇斗と感覚を共有してるから細かく状況を感じ取れる分、感知出来る範囲が狭まってるんだ。……それよりも、そこのベランダから屋上に出れそうだよ!』

「ん?コイツか……。………よし、行くぞ」

勇斗は意を決するとベランダの格子に足をかけ、思いっきりジャンプし、屋上に続くパイプを掴むとそれを引っ張って体を持ち上げ、屋上に足を置く。

「ふぅ……なんとかなった……」

勇斗が一息吐くと近くからパチパチと拍手する音が聞こえる。

「いやぁ、良いなぁお前」

「あん?」

勇斗が拍手の鳴る方に顔を向けると緑装束の男と幼い男の子がいた。

「……アンタか、放火魔ってやつは」

「ホウカマ?あぁ、人間界じゃそういうんだったか?悪いな、俺は放火魔とやらの意思で出来てないから疎いんだ」

「言い方が引っ掛かるが……一先ず、その男の子をこちらに渡してくれないか。」

「良いぞ」

「了承できないなら力ずくで……なんて?」

勇斗は思わぬ答えに聞き返すと緑装束の男は男の子を勇斗に向かってポイっと投げた。

勇斗は慌てて男の子を優しく受け止めると取りあえず怪我はないかと聞いた。

「お兄さんは…?」

不安げに見上げてくる男の子にそう聞かれ、勇斗は少し慌てたが、安心させるため少し笠を上げて笑いかける。

「あ~……正義の魔法使いだ。君を助けに来た」

「………!う、う……うぅぅ……!怖かったよぉぉぉ……!」

安心したのだろうか、怪我があるのかないのか分からないが泣き始めてしまった。

勇斗は男の子の背中を優しく擦ると緑装束の男をキリリと見た。

「随分と虐めてくれたみたいじゃないか」

「はんっ!人間が泣こうが喚こうが知ったことじゃないね。俺はてめぇら魔法少女を誘き寄せれば良かったんだよ」

勇斗は魔法少女という言葉にピクリと反応する。

この男は勇斗が魔法少女と同等の存在であると見抜いている。その事実はほぼ確信していた勇斗の考えを確信に変えた。

「アンタ……夢魔か」

「ん?あぁ、人間共はそう呼ぶらしいな。名付け方もとことん自己中心的な人間らしいぜ」

夢魔はカラカラと笑った。




………まぁここまでお膳立てされれば俺でも分かる。

ここまでのマンションを見ていれば明らかに人為的な破壊の跡が残っていた。

だが、普通の人間に出来る規模の破壊ではなく明らかに人の力を超えたモノだった。

そしてあの黒フードの人物……どうやったかは知らないがあれはこの夢魔が使役したものだったのだろう。

話を聞く限り、この夢魔の目的は魔法少女だった。そして、魔法少女の力をもってすれば超えられる障害のみマンションに仕掛けてあった。

つまり人質は俺を誘き寄せるための道具でしかなく、人質を素直に解放したのは例え人質が生きようが死のうがどうでも良かったのだろう。

『うん、だいたいその推理であっていると思うね。勇斗の視界越しにその男の気配を探ったけれど夢魔らしい感覚がするよ』

なら完全に確定だな………。……ミカ、この男の子をテレポートさせてマンションの外に避難させることは出来るか?

『出来るよ、勇斗がその子に触れていればそこから干渉してボクがいる近くまで飛ばすことが出来る。今はちょうどマンション付近から見上げるようにしているから勇斗の望むように避難させられるよ』

なら頼む、恐らく戦闘になるだろうし、この子を巻き添えにするわけにはいかない。

『了解、こっちで親の元まで誘導するから安心して』

ありがとう、頼むよ。

「君」

「えぐ……えぐ……うん……?なに……?」

「お母さんかお父さんはさっきまでお家にいたか?」

「えっとね……火がぼわって来たときに僕とお母さんが手を繋いでたけど一階に降りたときにそこの人に連れ去られた」

「………そっか、今お母さんの所に連れていってやるからな、少し目を瞑っておけ」

「……うん、分かった」

「ミカ、よろしく」

『おっけー。じゃあテレポートさせるね』

俺の腕の中にいた男の子の体が光り、一瞬にして消えた。

数秒してミカからまた呼び掛けが入った。

『無事に母親の元に引き渡したよ、今大泣きで抱き合っているよ。いや~尊いね』

実況しなくて良いから……。

悪いがミカ、ここからはテレパシーを切ってくれ

『良いけど……大丈夫なの?夢魔いるんでしょ?』

あぁ…ちょっと集中したいからな…視野の共有ってやつは好きにしてくれて良いが気を抜かないためにも切れそうなら一応切っていてくれ

『ん、分かったよ。勇斗が危なくなったら無理矢理テレパシーをするからね。じゃあ頑張って!』

「おうよ」

プツッと音が頭に響いてミカからのテレパシーが切断される。……そんな電話みたいな音鳴るのか。

俺は一つ息を吐くと緑装束の男に顔を向けた。

「お話は終わったか?」

「…案外律儀に待つんだな。今の俺に攻撃すればイチコロだろうに」

「はんっ!そんなことして何が楽しい?俺は殺し合いが大好きだからよ、そんなしょうもない殺し方は好きじゃないんだ……。ま、殺し方にも流儀があるってことだよ」

男は不気味に笑い、右手を天に掲げた。

するとマンションの屋上をぐるりと一周囲うように3m程の黒い鉄線が立ち上がり、そこに屋上まで到達したマンションの炎が燃え移る。

「驚いたか?まぁなんだ、テンション上げるためのリングを作っただけだ」

「随分こだわりが強いな、夢魔とは思えない」

「俺たちにもイロイロあるんだよ……さて……」

男は腰から2本のサーベルを抜くとサーベルの腹を撫で合わせて音を鳴らす。

「俺の名前は『殺意』のニンドウ。冥土の土産に覚えておけ」

「悪いが俺はまだ死ぬ予定がないんだ。だからアンタの墓にその名を刻んでおいてやるよ」

ニンドウの煽りに俺が返すとニンドウはニタニタと笑った。

「カヘッ!!良いねぇ……俺はお前みたいなクソガキ………嫌いじゃないぜ!!!」

ニンドウの体がぶれ、右手から放たれたサーベルが一直線に向かってくる。

俺は慌てず居合用の刀を引き抜くと邪魔な鞘をホールドで開けた空間に放り込み、向かってきたサーベルを避ける。

避けたサーベルは鉄線に当たると粒子となって消え、いつの間にかニンドウの手に戻っていた。

「中々便利な武器だな」

「そうだろう?俺のお気に入りなんだ。…さぁコイツの錆びになってくれよ!!」

ニンドウは今度はサーベルを投げるのではなく、ニンドウ自身が走りだして俺に接近する。

目で追うのがやっとの速さだが、俺としては目で追えれば十分だ。

ニンドウが走りながら先程のように右手のサーベルを投げ、また俺が避けると隙をついたニンドウは残った左手のサーベルを俺に向けて突きを放つ。

俺は一歩後ろに素早く下がると中段から刀を振り下ろしてニンドウの持っているサーベルを叩くと、急に動きのベクトルが変わったニンドウは態勢を崩す。

その隙を逃さず下段から刀を振り上げるが、ニンドウはギリギリで態勢を変えて上半身を起こし、2本のサーベルで刀を撫でるようにしていなした。

だが、いなした反動でニンドウの態勢が反るように崩れ、それを隙とみた俺は半歩踏み込んで縦に切り結ぶ。

先程と同じようにサーベルで斬撃を受けたニンドウだったが、膂力に耐えられなかったのか体が大きく吹き飛び、鉄線に激突する。

鉄線に伝っていた炎は瞬く間にニンドウを包んだが、特に苦しむ様子もなく立ち上がる。

「ッカァ……いってぇなぁ……へへへ……こりゃあ上玉だぜ……」

「それで痛いで済むのかよ……」

未だに体が燃え続けているニンドウだが、出た言葉は「痛い」のみ。

夢魔と分かっていても明らかに異常なニンドウに俺は少し…いや、かなり引いた。

「さぁて、ゆっくり味合わせてもらおうか!!」

「気色の悪い…!」

ニンドウが駆け出すのと同時に俺も床を蹴り、二人の間合いが一気に詰まる。

ニンドウはやはり速く、俺が動き出すよりも0.3秒ほど速くサーベルを振り始める。

サーベルの振る速度は先程よりも上がり、空気とサーベルの摩擦熱でバチバチと火花が散ったかと思うと、火を纏った斬撃が飛んでくる。

流石に火を刀で切るなんて出来ないので加速を諦めて右足で進行方向を転換し、体を横にスライドさせて火の斬撃を避ける。

「ほらほらほら!おかわりだ!!」

一度で斬撃が止むこともなく、火の斬撃が次々に放たれ、俺はマンションの内周を回るようにして避けていく。

避けた火の斬撃は鉄線に衝突してその火をさらに膨張させ、気が付いた頃には鉄線よりも数m内側に火が迫ってきていた。

「……嵌められたか…」

「いや、てめぇの判断は正しかった。足を止めれば俺の斬撃を食らい、あっという間に粉々だ……つまり……」

ニンドウのサーベルが光り始め、その光は段々と剣の形を型取っていき、サーベルは大きな2本の光の剣となる。

「チェックメイトだ」

ニンドウは大きく跳躍し、サーベルを天に掲げると思いっきり上段から振り抜いた。

光が延長し、まるで滝のように俺に迫ってくる。

「……避けるのは無理そうだな…技で相殺するしかないが……刀が持つかどうか……!」

俺は鞘をホールドで取り出すと刀を鞘にしまい、腰に据えて構えを取る。

足に最低限のエネルギーを残し、魂の収束を上半身に行う。

集中力が極限まで高まって周囲がスローモーションで見える。

軽く息を吸って思いっきり吐くと全身の筋肉が締まり、力の高まりが感じられる。

「黒陰流………十三頁第三之技……」

「さぁ!!しねぇぇぇぇぇぇぇぇえ!!!」

俺は極限まで光の剣の接近を待つとニンドウの絶叫を切り裂くように刀を鞘から解放した。

「黒一閃ッッ!!!!!!!!」

黒い斬撃が刀の軌跡を描き、光輝いていたニンドウの斬撃を打ち消す。

「なっ…!?」

ニンドウの目が開いているのが見える。

俺はそれを尻目にがくりと項垂れた。

「ハァッ……ハァッ……やっぱりこ…この技で打ち消すのは……ギリギリか………」

黒一閃は居合に合わせて全身の魂を打ち出す技だ。原理が簡単な上に魂を打ち出すことが出来れば使えるので初歩的な技なのだが、ニンドウの斬撃のエネルギーを相殺するほどの魂を使ったせいで俺の体力はかなり消耗していた。

「は……はは……!ははは!!お前すげぇな!!なんだ今のは!!」

ニンドウがギラギラした目でこちらを見る。

コイツ…俺が敵だって分かってるのか?普通は教えねぇだろ。

「い、言っただろう……黒一閃……俺が師事している流派の技だ……」

「黒一閃……黒一閃……よし!覚えた!!くくく…まさかこんな出逢いがあるなんてなぁ!!!」

なんかすっごい喜んでるな……

このまま見逃してくれないかな~もう立てないんだけど

「ますます殺しがいがあるぜ!!!止めをさしてやる!!」

デスヨネー

どうする…もういくら魔法少女の力とはいえほぼゼロになったエネルギーを増やすことは出来ない。

この体の耐久力を信じて身を投げるか…?

いや…下手すると死ぬよな……

「だがまァ……時間切れみてぇだな」

「……は?」

時間切れ…?一体どういうことだ…?

「旨い獲物は取っておいて熟成させた方がより旨いしな!ありがたく思いな、今回は見逃しておいてやる」

ニンドウはそう言って舌なめずりをするとドロン!と白い煙を纏って消えてしまった。

俺はしばらく状況が把握出来ず、唖然としているとプツと頭に何かが繋がる音がした。

『勇斗!!』

「のわ!?み、ミカかよ…驚かせやがって…」

『大丈夫なの!?動けなくなっちゃってるみたいだけど!』

だ、大丈夫……大丈夫だから大声出さないでくれ…頭に響く

『あう…ごめん』

神様のクセにやけに焦るな?

『元だよ、元!それに神でも焦ったりはするよ…』

ほ~ん、そんなもんか

『そんなもん、それより勇斗。そっちに大きな気配が近付いているからすぐに離脱した方がいいよ』

ふぁ!?おめぇ、それ早く言えよ!

『いやぁ、勇斗が危ないって思ったら心配が先行して……ごめんちゃい!』

お前はオカンか!まぁ分かった、一先ず炎をどうにかして待避を…

俺がそう言ってなんとか立ち上がろうとしたときだった。

「レイン!!」

透き通る様な声と共にどこからともなく大量の水がマンションに降り注ぎ、屋上にまで迫っていた炎があっという間に消えていく。

『来ちゃったみたいだね……このこの声………』

俺は笠を深く被りながらたらりと汗を一つ流した。

『青の魔法少女、マジカルブルーだ……!』


「あら……貴方、この前の正門前でも見かけましたわね………。やはり、この騒動を鑑みれば我々に仇をなす存在とみて宜しいですか?」

宙に浮くマジカルブルーが怪しむようにこちらを睨む。

「………火に隠れるのは俺の方だったか……」

「はい…?」

うぉぉぉぉ!!何口走ってんだ俺ぇぇぇぇ!?

待って!?もしかしなくても万事休すなのでは!!?

────

『次回予告!!』

よぉ、人間ども。ニンドウだ

随分おもしれぇ人間だったがなんだかさらにピンチになっておもしれぇことになってるな!

カッカッカ!踊れ踊れ!俺は殺し合いも好きだが無様に人間が踊るのを見るのも好きなんだ!!

次回!『初稽古!元気!』

さァて…次の獲物はどこだ?

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