第3話 あ!やだもう、ものすんごいめんどくさい!

桃江風花は魔法少女である。

というか昨日シュポポーを倒したピンク髪……マジカルピンクこそ彼女である。

ハートが装飾されたパレットと呼ばれる変身アイテムを使って変身しているらしいけど直に変身を見たことがないのでどんなものか俺は知らない、全部ミカから聞いたからね。

ミカからは不都合があるといけないからと身近にいる魔法少女の名前を聞いていたのだが高校に入って同じクラスとはまさか思う訳もなかった。

この桃江風花というのは心の声が口に出やすいのだが俺の前で良く魔法少女関連の事をポロっと口に出す。そしてそれが原因で俺はこの桃江風花を避けたいと思っているのだ。

「私達三人以外のもう一人の魔法少女…どこなんだろう……黒が特徴って聞いたんだけど……」

聞きましたか奥さん、まぁたこの子重要な事をポロリしましたよ?良くもまぁこれで魔法少女であることがバレてないわね!

今風花が言ったように彼女は三人一組の魔法少女グループに所属しているのだが追加枠としての魔法少女、黒が特徴の魔法少女を探しているらしい。

……まぁ多分俺だよね、十中八九俺だよね。

だって俺の持ってるアイテム、ブラックチェンジャーって言うもん。

というわけで俺はなるべくこの桃江風花から離れたいのだ、これで万一黒が特徴の魔法少女とバレてみろ?絶対戦いに巻き込まれる!

巻き込まれる根拠は色々あるのだけれど一番は桃江風花の正義感の強さだ。

昨日もそうだがこの辺りの夢魔退治のほとんどに桃江風花が関わっている。夢魔が関係なくとも人助けを率先して行うほど正義感の強い女の子なんだ。

そうなると追加の戦力があればより多くの人を助けることが出来る、見つかってしまえばしつこく勧誘されるのが目に見える。

『ねぇねぇ!魔法少女なんだよね!なんで男の子がなっているのか分からないけど皆を助けるために私達と組もうよ!』って絶対言うに決まってる。お、思い込みじゃないよ!

「ぐう…どうやって桃江から離れようか……」

「黒田君、私語は慎みなさい」

「アッハイ、スイマセン…」

やべ、先生にも怒られたし桃江風花にも不思議そうに見られた………このことは後で考えるとしてまず授業を受けるか…



放課後になった。

夏なのでまだまだ日は高く、受験なんて言葉は頭の隅に欠片もない一年生はどこか遊びに行こうと談笑しながら帰っていく。

しかし俺は頬杖をついてボケーっとしていた。

「?勇斗君帰らないの?」

隣の席の桃江風花がそう聞いてくる。

そうなんです、離れたいと思っているのに何故か毎回席が隣なんです。今の状況が状況だし周りの男子にも睨まれるし良いことあんまりないんです。泣きたい。

それはまぁ置いといて俺は桃江風花にまぁねと答えると目を閉じた。

「??」

なんだコイツって思われてそうだな、うん。

まあ理由はしょうもないんだけどね、夢魔がまた現れたのかさっき窓から煙がちょっと見えたから巻き込まれたくないだけなんだ。

「ねぇ勇斗君、それなら私もあんまり忙しくないし───ッ!!」

桃江風花が何か誘おうとしたときだった。

彼女は唐突に顔を曇らせさっき煙が上がっていた方角をキッと睨むと慌てて鞄を取った。

「やっぱなんでもないや!ごめんね!また明日ー!!!」

猛ダッシュで駆けていく桃江風花に俺ははいよ~と手を振る。

多分夢魔の存在に気付いたんだろう、どうしてかは知らないけど魔法少女は夢魔が現れると存在を感知出来るらしい。俺はたまたま見えただけよ?この前のシュポポーも気付かなかったしね。

「さぁて……桃江が退治しそうな頃合いに帰るかぁ…」

戦いに率先して巻き込まれたいやつはいない。俺は教科書を広げると暇潰しに勉強を始めた。

ちなみに最近同じように放課後に勉強をやり過ぎてガリ勉のあだ名をつけられたのは言うまでもない。



「ん~!!もう1時間も経つしそろそろかな」

時計を見ればもう18時が迫っていた。

流石に夢魔は倒しきって後始末も終わっているだろうと思った俺は教科書を仕舞って鞄を持つと教室を出る。

その時、焦ったような先生の声がスピーカーを通して学校内に響いた。

『緊急連絡!緊急連絡!先程ニュース速報で報道された夢魔とは別に2体目の夢魔が現れました!学校近くの公園に現れたので皆さんは1体目の夢魔が現れた駅の方へ向かってください!1体目はもう倒されたと事なので魔法少女のいる駅の方へ向かってください!繰り返します』

2体目~?

しかも公園ってもうすぐそこじゃん……

駅と公園を比較して学校からの距離を考えると公園の方が圧倒的に近い。

というか公園は学校にほぼ隣接しているのですぐそこで現れたということだ。

校内に生徒や先生が逃げていく足音が響き、ちらりと窓を見ると公園に近い正門ではなく駅に近いグラウンドから逃げていく姿が見える。

俺のいる一年の教室は最上階の三階であるからか誰もいない。

「俺も逃げるか」

俺は別に魔法少女として活動している訳じゃない。

この学校が多少壊れてしまうかもしれないが自分の命を考えれば無理に使ったことのないブラックチェンジャーを使って夢魔を倒そうとする必要もない。

まぁ魔法少女は移動も速いだろうし間に合うだろうと考えた俺は早速廊下を走って階段を降りる。

そして一階に降りたときだった。

「誰か……!助けて……!」

下駄箱からグラウンドに出ようとした所、反対方向の正門付近から声が聞こえた。

バッと振り替えるとスーツを着た女性が正門で崩れたように座り込み、公園から歩いてくる夢魔を怯えたように見ていた。

夢魔の体長は2メートルくらいか、下部は木の根みたいなのがウニョウニョ動いてるけど上部はヒト型で木をそのままヒトにしたみたいな姿をしている。

俺と同じように逃げている人も後ろを振り返ったが夢魔を見ると苦い顔をして逃げ去っていく。

当然だ、夢魔はただの一般人に倒せるようなものではないから行った所で無駄だろう。

だから犠牲になる人がいたとしても逃げるしかない、自分が立ち向かって餌食になっては助けに行く意味がない。

俺の足が止まった。

今、俺はミカから渡されたブラックチェンジャーがある。魔法少女になることが出来る。

だが変身したところで勝てるなんて確証はないし、戦った所で女性を守りきれるかどうかなんて分からない。

一瞬の悩み、様々な考えが頭の中を駆け巡り、そしてミカに言われた言葉がよぎる。

『まぁコレはあの子達と違って君の自衛用に渡したものだからね、君がそう判断したなら問題ないよ』

「…………あぁクッソ!考えるのは後だ!!」

そう、これは自衛用だ。唐突にこんな世界に飛ばされた俺が安全に生きるためのものだ。

だけど恐怖に染まる人の顔を見て見捨てられるほど、俺は冷酷になれなかった。


心が決まれば迷っている暇はない。

俺はすぐに駆け出して下駄箱を通り過ぎると正門付近を見渡す。

正門は既にしまっている。夢魔が学校内に入って来られないよう警備員さんが閉めたんだろう。

そして女性はその後に学校に逃げるためにやってきたが結果的に逃げ遅れてしまったわけだ。

鍵は職員室にあるだろうしもちろん内側から鍵が開けられるため正門を開ければ良いのだが今はそんな暇はない、何とかして正門を飛び越さなければならない。

「グキキキキキキキ…!!!」

「や、やめ……足を掴まな……痛い!!」

不味い…もう夢魔が接触を始めている。

走りながら正門付近を見渡していると警備員さんが正門を見守るための小屋の裏に使い古したコンクリートブロックがあることに気が付いた。

「あそこから屋根に乗れば!!」

俺はコンクリートブロックを踏み台にして小屋の屋根に乗ると正門の門の上に飛び移る。

「……!喰らえ!!」

そしてそのまま夢魔に向かって飛び込むと体当たりで女性から夢魔を引き離す。

「グギッ!?」

「えっ!?」

夢魔と女性が驚いたような声を上げる。

両方とも両方に意識が向きすぎてこちらに気付いてなかったのが幸いしたな。

「大丈夫ですか!?ここは俺が抑えるので貴女は速く逃げて!!」

「あ、ありがとうございます!!」

女性は何が起こっているのかあまり分かっていないようだったが、助かったことがだけは理解できたのか足早に去っていく。

「グギ………ヨクモ ジャマ ヲ シテクレタナ」

こいつ喋れるのな。

「邪魔して悪かったな。謝るから大人しくお家に帰ってくれないか?」

「グギ………ソウ イワレテ ズコズコ ヒキサガルホド ワレ ハ アホウデハナイ」

夢魔はそう言うと陸上選手もビックリの速度で俺に接近すると腹を殴ってくる。

「ゴホッ!?」

「モロイ モロイナァ ニンゲンハ」

顔にも二発食らい、よろけた所を思いっきり足裏で蹴り飛ばされ、俺は正門に激突する。

「イセイ ハ ヨカッタガ ショセンハ ニンゲン ムボウナ オノレヲ ニクミナガラ シネ」

「………!」

トドメの一撃が振り下ろされる。

気力を振り絞って前転して攻撃を躱すと腰に付けていたブラックチェンジャーを手に取った。

「……?…!キサマ!マサカ!」

これが何か分かっている……?前のシュポポーとは違って知能が高いのか…?

まぁ今はそんなことどうでも良いか。

焦る夢魔を放置して、俺はブラックチェンジャーを思いっきり握りしめて割った。

割ったことで溢れ出した黒い液体は俺の頭上に集まっていき、どんどん膨張していく。

「そのまさかだぜ…バケモノ。マジカルチェンジ!ブラック!!マジックスタート!!」

ミカに教えられた変身の合言葉を言い放つと膨張した黒い液体が俺の体に降り注いだ。

そして液体が変形していき、俺の体が袴を現代風にアレンジしたような真っ黒なコスチュームに包まれる。

そして腰には家に保管してある居合用の刀が現れる。

「クロ ノ マホウショウジョ……?イヤ、マホウショウネン…?」

「どうでも良いんだよ!そんなことは!」

何故か呼び方に真剣に悩む夢魔にツッコミを入れる。コントかな?

「マア、イイ。ニンゲン……イヤ、マホウツカイ ハ マッサツ」

夢魔が急接近して振り抜いた左手を俺は右手で払い、夢魔の右手を引いて体勢を崩すと右足を払って地面に倒す。

夢魔相手にここまで上手く行くのか…パワーが段違いだな。

「ッ!!ナメルナ!!」

しかし夢魔も簡単には終わらない。

背中から木の根が生えるとそれが地面に食い込んでいきあっという間に辺りに木の根が張られる。

「トゥリールーツ!!カミカゼ!!」

夢魔の掛け声と共に地面に張られていた根が地面から剥がれ、その先っぽが俺に向かって突撃してくる。

「くっ!!」

見た目は木の根だから一見危険性はなさそうに見えるが俺のカンが危ないと言ったので慌てて飛び退き、夢魔から距離を取る。

そしてその根は俺が居た場所に突き刺さり、なんとコンクリートの地面を粉々にした。

水道管まで貫通したのだろうか空いた穴から水が大量に吹き出され、雨のように俺たちに降りかかる。

「アァ……イイ キブン ダ………」

水を受けて夢魔は気持ち良さそうに両手を広げる。これも狙っていたのか………。

見ての通り本当に木がそのまま化け物になったような夢魔らしい。こうなると今のところ刀位しか使えない俺はどうしようもない。

本当は何か能力とかあるのかもしれないけど使い方どころか存在も知らないので当然それに頼ることは出来ない。

どうする……俺……何か……何か……って考えてもそんな都合良く打開策なんて……

「ん?なんかあそこ光ったな……なんだあれ……ライター?」

誰か逃げるときに落としたのかな?

……?木、ライター、火、燃える……

「あったァァァァ!?都合の良い打開策あったァァァァ!!」

「ナニヲ ゴチャゴチャ ワケノワカラナイ コトヲ!!」

あまりに奇っ怪な行動ばかりする俺にムカついたのか夢魔はまた根を飛ばして俺に攻撃してくる。

俺は反撃という考えを捨てて取りあえずその根をなんとか避けていく。

夢魔もバカじゃない、避けられることが分かればすぐに学習して先回りさせたり根の数を増やしたりするが俺は一心不乱に根を避け続けた。

そして5分程かけてゆっくりゆっくりとライターに近付いていき、ライターを手に取った。

「へっへっへ……きっちり油が残ってるぜ……!」

「チョコマカト!!」

攻撃が当たらないことに腹を立てている夢魔は周りが見えていないのか無防備にも全ての根を俺に向けて放った。

俺はあえてそれに突っ込んでいき、避けると考えていた夢魔の意表を突くと俺が思っていたように根は全て通り抜けて行った。

「!?」

驚いてる驚いてる。

「なぁ、夢魔。さっきは水道管の側にいたが、今はどこにいるか分かるか?」

「………!」

さっきは正門前で戦っていたのだから当然そこで吹き出した水道管内の水によって傷を癒したり、自分を強化したり、どんな恩恵があったのかは分からないがコイツに有利だったのは間違いない。何よりも濡れていることで恐らく弱点だと予想される火も効かなかっただろう。

だが今は違う。こんなクソ暑い夏に数分でも放置しておけば水なんてものはあっという間に蒸発してしまう。

だからこそ────

「乾いた木は良く燃えるんだっけな!!」

ライターで夢魔の胴体に着火させると見事に燃え広がる。

「キ、キ、キ……」

「木?」

「キサマァァァァァァァァ!!」

「あ、そっちね」

「ユルサン!ユルサンゾォォォォ!」

怒りに怒った夢魔は最後の力を振り絞って今まで以上に広範囲に根を張るとそこからなんとか養分を吸い上げて焼けていく樹皮を修復していく。

だが根を飛ばす余裕はないらしい。

それを確認した俺は夢魔から少し離れると腰にぶら下がっていた居合用の刀の鞘を左手で持ち、柄を右手で優しく握る。

「ふぅぅぅぅぅ………」

ゆっくりと息を吐き、全身のエネルギーを刀に集めていく。

これは黒陰流の秘伝書3頁目に書いてある黒陰流の基本、『魂の収束』だ。

如何にも中二病っぽい名前だが内容は至って真面目だ。

黒陰流は全身に魂が宿っているという考えがある。だからその魂を一部に集めることで自身のエネルギーを特定の箇所に集めて効率良く動けるようにする『魂の収束』を基本技として使う。

これがあっているのかあっていないのは置いといてこの技によって俺の刀と脚に強烈なエネルギーが溜まっていく。

そしてそれは脳にも作用していき、集中力が極限まで高まり、周囲がスローモーションで見える。

「黒陰流………十二頁第一之技……」

俺はそう前口上を告げると一気に駆け出し、夢魔の懐に飛び込む。

「ナッ!?」

「横一文字!!!」

そのまんまの名前を叫びながら夢魔を刀で横一文字に切り結ぶと火で焼けた樹皮は脆く砕けていきその体を真っ二つに割った。

「オ、オァァァ……キサマ……オボエテオケ……」

苦しみながら捨て台詞を吐いた夢魔は地面にどんどんめり込んでいき、とうとうその場から消える。

「おい待………マジか……あんなに追い詰めた感じなのに倒せないのかよ……」

俺が弱いのか、アイツが強いのか分からないが取り逃がしてしまったのは確かだ。

うわ~……なんか負けた感じするなぁ…桃江風花ことマジカルピンクは敵を取り逃がしたとか聞いたことないのに……。

そうしてウンウン考えていると上空からキィィンと空気を裂く音が聞こえる。

「あれ……?夢魔ってこの黒い人……?」

そして聞き覚えの……いやついさっき教室で聞いた声が聞こえる。

丁度声のする方に背中を向けていたから良いけどこの声って……

「マジカルピンク、どうかしましたか?」

「変わった格好をしているからあの人が夢魔なのかなって思ったんだけど……こことは聞いてたんだけど暴れている様子じゃないから違うのかなって…」

「……でもそこの道路から水が吹き出してる。そこのヤツが水道管を壊したんじゃないの」

更に二人増えた……もう正解だ、今魔法少女グループに後ろ取られてるわ、俺。

今朝も桃江風花が言っていたようにここら周辺の魔法少女は3人1組のグループとなっている。

その中の一人がマジカルピンクこと桃江風花なのでもう確定でそのグループに見つかった事になる。

……状況を説明したら信じてくれるかは置いといて安全に切り抜けられそうだけどここで正体がバレるとこの魔法少女グループに巻き込まれるのは必然だ……。

他の魔法少女はかなり印象変わるから正体がバレることはないみたいだが、俺の場合は髪が少し変わったかな?程度なので振り向けば速攻バレる。

「笠!頭に被れる笠とかないのか…!?袴なんだろ……!?」

小声でそう袴に訴えかけてみる。

いや、そんな都合良く出ないとは思うんだがここは現実逃避を……

「……ん?なんだこの穴。空中に浮いてる?」

唐突に俺の目の前に穴が出現する。

空中に浮いてるのはかなり不思議なんだが取りあえず手を突っ込んで見る。

「ん…?なんかあるぞ…?………!?」

少し大きめの物体を掴み取り出すとそこには頭に被る笠があった。

出ちゃったよ…都合良く笠出ちゃったよ…

だがこれは僥倖だ、一先ずこれを深く被ってようやく俺は魔法少女たちの声がする方へ体を向けた。

「……!ようやく振り向いてくれた!」

「男の人……でしょうか」

「笠を深く被ってるけど顔は見せられないってこと……?」

桃江風花に続いて青髪の上品な振る舞いの魔法少女とクールな感じの黄髪の魔法少女が怪しむようにこちらを見る。

バレてないよな…?バレてないよね…?

しかしどうしようか、ここで話を切り出しても恐らく怪しまれるだろう。いきなり知らないヤツがいきなり詳しい状況の説明なんてしたら信用できないだろうからな。

どうやって無害アピールをして早々にこの場を去るべきか……。

「ねぇ!あなたは夢魔なの?もし夢魔じゃないならここはどうしてこんなに荒れてしまっているの?」

ふわふわしてんなぁ……俺が敵だったらそんなの絶対教えないよ?

でもこれは好機だ、こちらから切り出すことなく会話を始められた。

そうと決まればなんか良い感じに謎の男みたいな雰囲気を出そう!

「夢魔……?なんのことかは知らないが俺はただ、ここにいたうるさい樹木擬きを追い払っただけだ」

「……会話を出来るレベルの知能……確かに夢魔ではないかもしれませんね」

「なんか気取っててウザい…」

青髪が俺が夢魔ではないと推理し始め黄髪が鋭い口撃を食らわせてくる。

やめろ…自分でも分かってるから……。

「じゃ、じゃあ貴方は味方……?もしかして黒の魔法少女!?」

「魔法少女…?なんのことか分からないな………もう良いだろ、俺は暇じゃないんだ。じゃあな」

痛いとこを突かれた俺はなんとなく良い感じのセリフを吐くと思いっきり公園の方へジャンプする。

やっぱり魔法少女の力なだけあってあっという間に桃江風花達から離れていき、公園を通り越して避難のせいで誰もいない住宅街の一角に着地する。

「え~っと変身解除は……リターン」

俺がそう唱えると袴は液体に戻り、空中へ浮いて膨張する。

そして一部の液体が試験菅とそれを蓋するコルクに変形し、試験菅を割る前の元のブラックチェンジャーに戻る。

それを確認した俺は地面にへたりと座り込みふぅぅと息を吐く。

そして桃江風花に多分バレていないとはいえ黒の魔法少女……魔法少年?としての姿を見られた事実を思いだし

「あ!やだもう!すごいめんどくさい!!」

俺は精一杯の声でそう叫んだ。



勇斗が跳び去った後、残された魔法少女達は呆然と勇斗が去っていった方向を見つめていた。

「追いかけよう!マジカルブルー!マジカルイエロー!」

「ちょーちょー止めとき。追いかけても多分追い付けないって。あの身体能力、魔法少女と同じかそれ以上っぽかったし。……リターン」

勇斗を追いかけようとする風花をマジカルイエローが止めて、先程の勇斗と同じように変身を解除する。服は光となって弾け、彼女が手に持っていたペンダントのようなものに吸い込まれていく。

「マジカルイエローのいう通りでしょう、先程の方はそこにいたものを追い払ったと言っていたのでそれが夢魔だとすればまだここら辺に潜んでいるかもしれません。この場を離れない方が良いでしょう。リターン」

マジカルブルーも同じように風花をなだめ、変身を解除する。

「……うん、ごめんね二人とも。リターン」

風花も納得したのか変身を解除し二人に笑いかける。

「この事はあの人に報告しようか、もしかしたら本当に味方の魔法少女かもしれないし」

「そうですね、今日はもう日も落ちるでしょうから明日行きましょう」

「……ボクは敵で良いと思うけどな、アイツ。格好も発言も痛いし……報告にはついていくけど」

風花の提案に考えの違いはあれど仲間の二人は頷く。

「それじゃあ帰ろっか」

「ええ」

「ん」








「おいここどこにだよぉ……なんかスマホも電源切れ起こしてるし知らない場所だしで全然わかんねぇよぉ……腹減った……」

その日の晩、ジャンプした際に周りを見ていなかった勇斗は知らない住宅地に迷い込み、家に帰れずにいた。

彼が夕飯を食べられるのは時計の針が12時を回ってからのことだった。

「もう絶対魔法少女なんかにならねぇ……とほほ」

────

『次回予告!!』

こんにちは、ミカだよ。

勇斗、自分から面倒事に首突っ込んでめんどくさいって言ってる……愚かで可愛いね!!

次回はそりゃあもうボクと勇斗の何気ない日常を……え?ヒロイン回なの?…どうやら作者は“わからせ”ないといけないみたいだね

次回!!『桃江風花という少女』をお楽しみに!

あ、しまった買い出し行ってなかったよ…

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