読んでいる間、ずっと多幸感に包まれるお話です。

文字数制限のある短編において、展開の圧縮は大事なテクニックだ。なんせいつもの調子で話を書いていたら、本当に書きたいシーンに到達する前に紙幅が尽きてしまう。誰も幸せにならない……。

その点、本作のセットアップの速度は見事。必要な手順を踏んで、主人公に好感を抱かせるというお膳立てを済ませたら、あとはずっとかわいいこと!!! という筋運びが徹底されている。読者の読みたいところを、しっかりたっぷりと描いてもらえている。嬉しい!

短編作品というのは、オチの鋭さや読後感の切れ味が重視されるジャンルだが、それと同じぐらい、過程を面白く書く、読んでいる間の多幸感を担保する、というのは、大事な要素である。なぜなら人は皆、幸せになりたいと思って生きているのだから……。

ちなみに寧々ちゃんの一人称も、ずっとかわいい。こんなのかわいいを作り出す職人芸だよ……!


(カクヨム公式自主企画「百合小説」/文=みかみてれん)