第8話
島田らは
洒落た天窓から灰色の日の光が差し込み、この小さな図書館全体は、電灯が点いているにも関わらず、あまりにも暗くて
「文彦君、君は文芸部かラヴクラフト研究会に所属しているね」
これが、坪田教授の第一声である。
島田はこの教授がいかなる手法を用いて、その結論に至ったのか、ちっとも予測できなかった。もしかしたら、事前情報でそのことを知っていたという可能性もある。それにしても、教授は「文芸部かラヴクラフト研究会」のどちらかだといっており、さらにはラヴクラフト研究会がメジャーでないことも考えると、どちらの部活か
「それでいて、僕のファンのようだね」
「……なんで、わかるんです、か」
「荒井君と西村君がここに来るまでに、君はすでに集合時間より十五分はやく待っていた。そして、本棚から僕の文庫本ばかり取り出しているところを見て、君が僕のファンだとわかったよ。直接僕に話しかければいいのに、君はそうすることが、はずかしかったんだね。だから、それはいよいよ確信に至った。それから、部活についてだが、これは推測にすぎないよ。まず最初に、君が
ここで、坪田教授は一息入れた。しばらく島田の反応をうかがってから、ふたたび話しはじめた。
「であるから、その原因として文章――それも長文――を書くのが君の趣味なのではないかと考えたのだよ。僕の書くような評論を読むのだから、特に小説や評論みたいなものを書いているのかもしれない、とね。ただし、この場合は勉強時間が長いから、という可能性もあったから、
坪田教授の推理は魔法のように見えて、実は小さな解釈の積み重ねで出来ているとわかると、その意外性と単純さに頭がくらくらした。ここまで普通のことだが、出来る人は依然としぼられてくるものである。「さて、僕がこの集まりを知ったのは、本当は一ヶ月ほど前のことでね。それまで安田道夫君がなぜ有名かも知らなかった。ところが、最近ある事情があって、彼について調べる必要が出てきたのだよ。そこで、このような会――非公式だがなかば公認――の存在を、ほかの教授におしえてもらったんだが、このメンバーを選んでいるのが、誰なのかを知っている人がいなかった。まさに森沢大学の闇としかいいようがない。わかったことといえば、この会は自主参加が基本だが、希望する人がいなければ、安田と面識がある者の中からランダムで選ばれること。そして、教師がどういうわけかひとり以上、メンバーに入ることだな。実際、僕が入ろうとしたら、ほかの教授も希望したから説得するのが大変だったよ」
「で、本当の目的はなんだったんですか」
「安田を連れ戻すことらしい」
ここで、突然図書館の静けさが、
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