第3話 シスターのいる日常

 私はセンチメンタルな気持ちでいた。こないだまで桜が咲いていたのが嘘の様な静かさだ。


 それは子供食堂の帰り道に星空が見えていた。唯と一緒に歩き夜空を眺める。これは本当に恋人同士みたいな気分だ。私は不意に唯と手を繋ごうとすると。


「アイサレテイマス……」

「え?」


 夕闇の中で横を歩く、唯から謎の一言が発せられる。


 確か『愛されています』と聞こえた。私がもう一度、聞き直すか迷っていると。


「私は主から愛されています」


 そっか、唯はシスターであった。


「パンツは何時も勝負パンツです」


 おい!神様ってそんなに肉食なのか?


 私は深く問いかけようとしたが、虚しくなって止めるのであった。


 うん?


 雲の間から半分の月が見える。今宵はきっと大切な思い出になりそうだ。たった一五分の夜空の下での出来事であった。


 翌朝


『ビビビビー』


 誰だ?こんな朝早くに携帯に電話かけてくるのは?スマホを手にすると唯であった。


『ハロー、モーニングコールだよ』


 確か昨日、子供食堂で交換した記憶がある。


『唯、モーニングコールを頼んだ覚えはないぞ』

『シスターの朝は早いのです』


 あがががが、話がかみ合わない。


『昨日、宿題に出した聖書の一気読みは出来ましたか?』

『無理を言うな、昨日、自宅に着いたのは何時だと思っている。大体、宗教の押し付けは問題だ』

『五月病だと言って泣きついたのは誰ですか?』


 少し表現が違うが確かに五月病を相談した。私が返事に困っていると。唯のパソコンから私のパソコンに添付画像が送られてくる。


 それはパジャマ姿の唯であった。


『これから、礼拝室の掃除です。その間は、このパジャマ姿の私でしこっていなさい』


 この問題シスターはどうしてくれよう。ここは大人の対応だ、電話を切り二度寝することにした。


 ……。


 布団に入るが眠れない。おのれ!


 シスターに寝る時間を奪われた。窃盗の罪で告訴してやる。


 ……ああああああ、私はアホな妄想を止めて勉強でもしようと思う。


 聖書?世界史の勉強をした方が有意義だ。


 週明け、憂鬱な学校の授業だ。私は難しい日本史の授業を受けていた。平安時代の書についての授業だ。私は集中力を削がれ教室を見渡す。


 唯を見るとスヤスヤと寝ている。自由だなー。


 ま、仕方ないか、日曜日が礼拝と子供食堂で潰れるのだ。週明けに疲れが出てもおかしくはない。


 むむむ……唯の様子がおかしい。


『アップルパイが食べたい!!!』


 唯から壮大な寝言が飛び出すと一瞬、授業が止まる。その後、授業が再開されると。再び唯は深い眠りに着く。


 しかし、何故、私がおやつにアップルパイを持ってきたのを知っているのだ?


 いや、偶然か?


 それから、授業が終わり休み時間になると。唯に近づきアップルパイを見せる。


「おおお、私に主のご加護が降臨した」


 だから、偶然だ。まだ、あげるとは決めていない。


 しかし、唯はモノ欲しそうにこちらを見てる。仕方がない、私はアップルパイを半分にして唯にあげる事にした。


 ハムハムとアップルパイを食べる唯は可愛く抱きしめたくなる。


「アップルパイのお礼は勝負パンツの観覧でいいか?」

「ゲホ!!!」


 アップルパイが変な所に入った。


 本当にアホか!!!


 シスターのくせに意味不明なことを言うな。

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