第2話 囚われの王女様
「……って、ことでここもシャムニ王国に国民を攫われているんでしょ。だから、この人達のガルディア国と共同で、どうかな? って、思ったんだけど、どう?」
「「……」」
想太は獣人達と話した内容をエルフの国王に話して聞かせたが、その表情は芳しくない。そして、想太は自分が提案した内容に不備があるのかと国王に尋ねるがどうやら、そうではないらしい。
「どうしたの? 興味ない?」
「いや、話の内容は分かった。だが……」
「『だが』……何?」
「その、疑う訳ではないが、本当に可能なのか?」
「あれ? 疑っちゃう?」
「黙れ! 小僧! さっきから国王に対して、その態度はなんだ!」
「うるさいな。おじさんも寝ておいた方がいいんじゃない?」
「ぐっ……」
「宰相よ。黙れと言ったのが分からなかったか? なんなら、一生黙っておくか?」
「ハッ。すみません……」
「じゃあ、誰か連れて来れば納得してもらえるのかな?」
「ああ、そうだな。もし、可能であればこの目で見て可能なのかどうか確かめたい」
「分かったよ。じゃあ、ちょっと行ってくるね。出来れば、一番ひどい状態の子を助けた方がいいよね。アツシ、サポートお願い」
『承知しました。ふむ、この子ならソウタの狙い通りですね。ソウタ、この子にしましょう』
「分かった、ありがとう。じゃ、ちょっと行ってくるから、ここはお願いね」
「分かったわ。任せて」
「じゃ、『転移』」
想太は朝香にこの場を頼むと転移でどこかへと跳んでいったと思ったら、すぐに想太が帰ってきたが、その手には何かが毛布で包まれていた。
「ただいま……っと」
「おかえり……それで、その抱えているのは?」
「あ、気になるよね。ちょっと、待ってね」
想太はそう言うと、国王の前に進み、持っていた物をそっと、床に下ろす。
「それはなんだ?」
「何って、俺が言ったことを証明するための物……って、言うか人だよ。こんな状態でもね」
「人だと! 例え人だとしても、このおおきさじゃ赤児じゃないのか?」
「いいえ、れっきとした成人女性です。なんなら、ご自分の目で確かめたらいいんんじゃない?」
「な、なにを! この小僧!」
「よせ、宰相。いい加減にするんだ」
「し、しかし……」
「よい。いいから、その毛布に包まれているのを確かめるんだ」
「わ、私がですか?」
「なんだ。私にしろと言うのか?」
「あ、いえ。そんな訳では……」
「どっちにしろ。その包みを確かめないことには話が進められん。いいから、早く確かめるんだ」
「わ、分かりました。おい! 本当に大丈夫なんだろうな?」
「何? 俺を疑う訳? いいから、早く助けてあげてよ」
「助ける?」
「そう。助けてあげて!」
宰相が想太に言われ、恐る恐るといった手つきで毛布をゆっくりと剥いでいくと、そこには半裸のエルフの女性がいた。いたが、両手足は切断され、両目は潰され、全部の歯が抜かれていた。
「ヒッ……お、お前がこれをやったのか?」
「まさか? 俺はこの状態で牢に入れられていたのを助けてきただけだ。これって、あんた達のお仲間でしょ?」
「あの……|もひゅかひゅてわひゃひのひゃたらひごひゅひぃんひゃまでひゅか? 《もしかして私の新しいご主人様ですか?》」
「まさか……いや、だが……そんなはずはない」
エルフの国王は連れて来たこの女性に見覚えがあるようだ。そりゃそうだろうなと想太は思う。何も考えずにアツシが勧めるこの女性を連れて来ただけだが、鑑定した結果は『セレネージュ国 第三王女』と出ていたのだ。
「じゃあ、とっとと治療しますね『
想太が床に寝ている女性に魔法を掛けると、女性の四肢は再生し、歯も生え、潰れたはずの両目も完全に光を取り戻したようだ。
「あら……これは……見える! 話せる! 手もある。足も! えっ何? ここは天国なの? え? お父様……」
体の不具合がしっかりと回復した様子の駄三王女は玉座に座ったままの王をしっかりと見据え、「お父様」と口にした。
「え? 『お父様』? え? もしかして、あなたは第三王女様……」
「ラニ……ラニなのか?」
「やはり、お父様なのですね……」
「ラニ!」
「ダメです! 来ないで下さい!」
国王が第三王女ラニに近付き抱きしめようとするが、そのラニに『近付かないで』と拒否される。
「ど、どうして……私に抱かせてくれないのか? 死んだと思っていた……てっきり、あの日に死んだとばかり思っていたのに……どうしてだ?」
「……ごめんなさい。ですが、私の体は……汚れています。だから、私には……お父様の娘を名乗る資格はありません。どうか、死んだものを思って下さい。お願いします」
「何故だ! お前はこうして、私の目の前にいる。それなのに何故、死んだと思えと……」
「ごめんなさい。ですが、私は既に何人もの人に汚されました。そんな私がどうして、第三王女だと言えますか! どうせなら、あの日に死んでしまえば良かった……ぐすっ」
嗚咽と共に泣きだしたラニの背中から、朝香がそっと抱きしめる。
「辛かったのね。でもね、簡単に死んだ方が良かったなんて言っちゃダメ。それもお父さんの前で言ったらダメでしょ。今までは辛かったかも知れない。でも、あなたはもう助かったの。これからはきっと楽しいことが待っているわ。だから、簡単に死ぬとか死んだ方がいいなんて言ったらダメ。分かった?」
「でも、私は……」
「もう、そういう風に何時までも自分を卑下しない。ねえ、おじさん。この子が連れ去られたのは何時の話?」
「お、おじさん……」
朝香がラニを抱きしめながら、慰める。そして、国王にラニがいつ頃に連れ攫われたのかを確認するが、朝香におじさん呼びされたことが気になるようだ。
「もう、反応するところはそこじゃないでしょ! いいから、何時? ほら、早く!」
「あ、ああ。分かった。あれは確か五年前だ。そうだ! 間違いない、五年前にラニは連れ去られたんだ」
「OK分かったわ。ってことらしいわよ。じゃあ、後は頼んだわね」
確認した朝香が想太に頼むと、想太は分かったと言い、ラニに横になってもらう。
「了解。じゃあ、ラニさん。ちょっと、そこに横になって」
「え? 横になるんですか?」
「そう。ちょっと治し忘れたところがあってね」
「分かりました」
「じゃあ、ちょっとだけ我慢してね。とりあえず、目を瞑ってくれるかな」
「はい」
「じゃあ、治すね。『
想太がラニに対しスキルを実行するが、ラニの表面上には何も変わったところはない。
「上手くいったの?」
「多分ね。ラニさん、目を開けて」
想太に言われたラニがゆっくりと目を開けると同時に悲鳴を上げる。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます