第12話 復讐前提でしょうか
「ふぅ~美味かった。久々に腹一杯だ!」
「よく食べたね。おじいちゃん」
「だから、おじいちゃんじゃないと……」
「朝香、四十台の人におじいちゃんはちょっと。そうだ、そう言えばおじいちゃんの名前は?」
朝香に注意しながらも想太は、ちゃんと王様(仮)の名前を聞いてなかったことを思い出す。まあ、鑑定で分かってはいるんだけどと思いつつも、とりあえず王様(仮)に自己紹介をしてもらう。
「お前まで……まあ、いい。ワシの名はライオ。だから、これからはライオと呼べ」
「「分かったよ。ライオ(さん)」」
「そこは『ライオ様』じゃないのか? ワシ、一応王様だぞ?」
「だって、今は違うんでしょ? なら、単なるライオじゃない」
「むっ。この小娘は! おい、小僧! お前からもなんとか言うてやれ!」
「その前にライオさん。俺は想太。そして、その子は朝香。分かった? 小僧、小娘じゃないから」
王様(仮)ことライオの物言いにイラッとした想太はライオに言い返すと、ライオは想太の気迫に圧される。
「お、おう、分かった。ソウタよ。それにアサカだな」
「そうよ、ライオ。今度、小娘って言ったら……」
「わ、分かった。誓おう」
朝香がライオに向かって、右手の親指で首を切る動作をすると、ライオも反省する。
「でも、その見た目だと、またおじいちゃんって言ってしまいそうになるわね。想太、なんとかしてよ」
「なんとかって……うん、なんとかなるかもしれないね」
『ソウタ、『
「分かったよ。アツシ、ありがとうね」
一人で話して誰かにお礼を言っている想太を不思議そうに見ているライオは朝香に想太の様子を大丈夫かと聞いてみるが、大丈夫だからと笑うばかりだ。
「じゃあ、ライオさん。向こうのソファに横になってもらえるかな」
「横に? 何をするつもりだ?」
「何って……ちょっとした改造かな」
想太が爽やかな笑顔でライオに向かって『改造』と言う。そして、ライオはその言葉に聞き間違いかなと思い、想太にやんわりと確認する。
「そうか、改造か。そうか。なあ、ちょっと確認するが、その改造と言うのは何をどう改造すると言うのだ?」
「何をって、そんなのもちろん、ライオさんに決まっているでしょ。おかしなことを言わないでよ。ねえ朝香」
「そうよ。想太に任せていれば大丈夫だから。ほら、ライオ。天井のシミを数えている内に終わるから。さっそこに横になって」
「ダメだ。この二人には何を言ってもダメだ」
ライオは顔を両手で覆うと「優しくしてね」と想太に言いながらソファに寝そべる。
「大丈夫。多少は痛いかもしれないけど、一瞬だからね」
「なんか意味深……男同士でもそうなのかな」
「「違うから!」」
朝香の言うことに想太とライオで同時に突っ込む。
「まあ、いいから。じゃあ、ライオさん。今からライオさんを元の姿に戻すから。ちなみにライオさんが地下牢に入れられたのは何歳の時?」
「そうだな、あれは確か三十歳の時だったかな」
「OK分かった。じゃあ、始めるね」
「優しくな……」
「大丈夫だから、じゃあいくね『
想太の呟きと共にライオの体が発光する。
「うわぁなんかライオの体が内側からぐねぐねしているんだけど」
「朝香、ちょっと黙ってて! 気が散るから!」
「ごめんなさい」
想太は鑑定でライオの年齢を確認しながら、ライオの体を巻き戻していく。
「よし! これでいいかな。ライオさん、終わったよ。気分はどうかな?」
「終わったのか。随分、長い間寝ていたような……なんだ、これは! 一体、どういうことだ、これは!」
ライオは起き上がり、自分の体を見て驚く。それもそうだろう。つい、さっきまでは白髪のガリガリに痩せ細った老人のような身形をしていたのだから。
それが今のライオの体は全盛期そのものだった。
「別に驚くことはないでしょ。ちょっと体の年齢を昔に戻しただけだからさ」
「ちょっとって……お前、ワシはさっきまで自分で言うのもなんだが老人にしか見えない風体だったんだぞ。それが、こんな……ワシが全盛期の頃、そのままじゃないか!」
「もう、別に状態が悪くなったんじゃないんだし、いいじゃない」
「いや、だが。これは……」
「もう、ライオ! 今は喜ぶところでしょ! じゃあ、はい」
「はい?」
自分の体に戸惑うライオに朝香が追い討ちを掛けるようにライオを急かす。
「『はい?』じゃないでしょ。体を戻してくれた想太にお礼は? いくら、王様(仮)だからって、お礼ぐらいは言えるでしょ」
「そうだな。ソウタ、礼を言う。ありがとう」
「まあ、お礼は別にいいんだけどさ、どうして地下牢に入れられたのか話してもらえる?」
「……それは何故だ? 理由を聞いても?」
想太に地下牢に入れられた理由を聞かれ、ライオは一瞬言い淀む。しかし、想太がその理由をなぜ知りたいのかと逆に質問する。
「何故って、だって王様(仮)があんな所に入れられていたのなら、気になるでしょ。それに獣王国が安定していないと俺達の計画がパァになるからね」
「ソウタ達の計画? ふむ、面白そうな予感がするな。まずはそれから聞かせてもらえないか」
「え~ま、いいけどね。俺達の計画はね……」
想太が長々とライオに構想中の計画を話すとライオは深呼吸をしてから一言だけ話す。
「無理だな」
「あ~やっぱり。まあ、想像はしていたけどね。でも、そこまでキッパリ言われたのならB案でいくしかないのかな」
「ほう、別案も用意していたのか。では、それも聞かせてもらおうか」
「何言ってるの。A案なら王様(仮)に頼むけど、B案はダメだよ。この話は関係者以外には話せないよ」
「だが、さっきのは話してくれたじゃないか」
「だから、それは協力してもらえると思ったからね。じゃあ、俺からの話は終わり。今度はライオさんの番だよ」
想太はB案は話せないとライオに断るとライオが地下牢に入れられた理由を話すように言う。
「よかろう。では、話してやろう。ワシが地下牢に入れられた理由はな。ワシが邪魔だったからだ」
「それは分かるよ。でもさ、それなら普通、殺されるでしょ? なのに何故、今まで殺されずに幽閉されていたの?」
「あ、それ! 私も思った! ねえ、どうしてなの?」
想太の隣で聞いていた朝香もライオにどうしてなのかと質問する。
「まあ、簡単な話だ。ワシはこれでもカリスマだったからな。もし、ワシが暗殺され、殺されたとなれば、国民の殆どが犯人捜しに躍起になるだろう……と、アイツらはそう考え、ワシが病気に掛かったと言い、地下牢に幽閉したのだろう」
「ぷっ……カリスマって、自分で言う?」
「朝香!」
「ごめんなさい……」
「気持ちは分かるけど、笑っちゃダメ!」
「はい。ごめんね、ライオ」
自分でカリスマと言ったライオに対し笑いが堪えきれなかった朝香は想太に窘められる。
「構わん。むしろ、笑ってもらえた方がスッキリする。さあ、笑ってくれ」
「「……」」
「どうした? 笑わんのか?」
ライオの言葉に朝香がムッとした様子でライオに言う。
「笑えって言われて笑えるわけないでしょ。もう」
「それで、ライオはどうしたいの?」
「どうするとは?」
「だから、このまま黙っているのか。幽閉した相手に復讐するのかって話。ねえ、どっち?」
「復讐ならいろんな方法を考えないとね」
「朝香、楽しそうだね」
「当然、想太は楽しくないの?」
「ん~方法を考えるのは楽しいけど、自分が血塗れになるのはイヤかな」
「それは私も一緒だよ」
ライオの返事を待たずに復讐方法について嬉しそうに話し合う想太と朝香にライオは呆然とする。
「これ、何もしないって言ったら怒られるかな?」
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