第13話 だからイヤなんだって
「じゃあ、復讐するかどうかはおいといて、ちょっと挨拶しに行こうか」
「は? 挨拶だと」
「そう、生きてますよってね」
「待て! まさかワシをアイツらに引き渡すのか?」
「別にそういうことは考えていないけど、アッチが欲しいと言うのならそれもアリかな」
想太が軽く挨拶しに行こうと言うのを聞いて、ライオは驚くが想太は別に気にする様子もない。しかも相手がライオの身柄を要求するのなら、渡してもいいとまで言うものだからライオは想太の気持ちが分からなくなる。
想太はいつもの潜入用の特撮ヒーロースーツに着替えるとライオの手を取る。
「ほら、いつまで考えていてもしょうがないでしょ。行くよ『転移』」
「あ、おまっ……」
ライオが何かを言いかけていたが、想太は構わずに転移を実行する。
「あ~あ、行っちゃった。私も行きたかったのに!」
『では、行きますか?』
「そっか。行けるんだよね。じゃあ、行っちゃおうかな」
『ですが、その前に衣装チェンジをした方がいいかと』
「おっと、忘れるところだったわ」
「到着! ライオさん、着いたよ」
「へ? ここは……」
想太に着いたと言われ、ライオは周囲を見渡すと、見慣れた執務机に見たことがある男が座っていた。そして、その男が突然現れたライオに気付くと、ライオを指差し叫ぶ。
「な、なんでお前がココにいるんだ!」
「なんでって、俺が連れて来たからでしょ。見て分からないの?」
「そういうことじゃない! お前は……ライオは俺が地下牢に幽閉したハズだ!」
「だから、ここにいるってことは、その地下牢から出て来たってことでしょ」
「む! 確かにそれはそうだが……だが、あの鎖はちょっとやそっとじゃ外せないハズだ!」
「それが出来ちゃったの! はい、これがその鎖ね」
想太が
「くっ……それにその身形だ。まるで、幽閉した時のままじゃないか!」
「ソレも俺がちょろっとね」
「さっきから、貴様はなんなのだ! 俺はライオに聞いているんだ!」
「だってさ、ライオさん」
ライオが一歩前に出る。
「そういうことだ。ワシはそこの男に救われて、今ここにいる。分かったかニャルよ」
「なんでだ……なんで、今更俺の所に来た……」
「だって、幽閉したのはあなたでしょ。だから、なぜ殺さずに幽閉したのか。そもそもなぜ、ライオさんを追い落とすような真似をしたのかを確認したいと思ってね」
「ああ、それはワシも聞きたい。ニャルよ、何故だ?」
「……」
今現在のガルディア国国王として、この執務室にいたニャルにライオが詰め寄るが、ニャルは何も答えない。
「ニャルよ教えてくれ。何故なんだ?」
「……」
何も喋らないニャルに対し、想太は痺れを切らす。
「話さないなら別にいいけどさ。なら、先にこっちを片付けてもらえるかな」
想太はそういいながら、『牢屋』に放り込んでいたシャムニ王国の騎士達を放り出す。
「「臭っ!」」
「あ~入れっぱなしだったから、ちょっと臭うかもね」
食事も与えずに丸一日は放置していたせいか、騎士達は糞尿に塗れてしまっている。
想太は「ちょっと可愛そうなことしたかな」と思ったが、騎士達のしてきたことを思い返す気にしないことにする。
そして、両手足を縛られぐったりした騎士達を見て、ニャルは鼻を抑えながら驚愕する。
「一体、なんなんだコイツらは! ん? 待て。この紋章は……」
「ニャル、分かるのか?」
「ええ、分かりますよ。って言うか、あなたは分からないんですか? この紋章は隣国のシャムニ王国の物ですよ」
「隣国の……だが、それがなんでここに?」
「俺が連れて来たから?」
想太の的外れとも言える答えにライオとニャルが言い返す。
「だから、それを聞いているんじゃない!」
「なんでこんな大量に隣国の騎士がお前に捕らえられているんだ!」
「え~それを俺に聞くの?」
「「当然だ!」」
「じゃあ「ちょっと待った!」……え? なんでここに?」
「そこは私から説明するわね」
突然現れた『ケモフスキーピンク』の姿をした朝香に想太達三人が驚く。
「また、増えた。もう、どっちでもいい。早く教えてくれ!」
「じゃあ、話すわね。こいつらは国境で狼人族の集落を……」
朝香が説明をさせろと言うので、想太は黙って朝香に説明を任せる。そして、朝香の説明を聞き終えたライオとニャルの二人に改めて、この騎士達の扱いをどうするのか確認する。
「そんなもん、首を切り落として、国境に晒せばいいだろ」
「バカですか! そんなことしたら、こっちが悪者になって攻め込まれる口実を与えてしまうでしょうが! 私はライオがそんな脳筋だから、イヤだったんですよ!」
ライオの発言にニャルが顰めっ面でライオに対する不満を漏らす。
「やっぱり、それが原因なんだね」
「分かり易過ぎ。ちっとも捻ってないじゃん!」
ニャルの発言に想太も朝香もそうだろうと想定済みだったようだ。
「なんだ! お前達、ワシがそんな考えなしに見えるのか!」
ライオの問い掛けに三人がそろって頷く。
「ふん! ニャルよ。ワシに不満があるのなら、何故面と向かって言わなかった?」
「言えるわけないでしょ!」
「何故だ?」
「これだから脳筋は!」
「だから、それは分かったから、
「本気で分からないんですか? ったく、コレだから……」
「それはいい。もう、十分に分かったから、話してくれ」
「ハァ~いいですか、私は宰相であなたは王でした。それは分かりますよね?」
「ああ、そうだな」
「そんな私に王であるあなたはイヤなこと、面倒なことは私に全部押し付けましたよね。それに私が意見を言ってもあなたは右から左に流すだけで何も考えることはしなかった」
「そ、そうだったかな?」
「惚けないで下さい! だから私は思ったんです。こんなお飾りなら……いっそのこと……何度もそう思いましたが、あなたのカリスマ性がそれを邪魔しました。このまま始末しても遺恨や疑いは全て、私に掛かるだろうと。ならば、病気になったことにして誰も側に寄れないということにしてしまえばいいと思いました。そして、それも昨日まではうまくいってました」
「そんなこと、その時に言ってくれよ」
「言って聞かないから、こうなったんでしょうが!」
「すまん……」
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