第7話 そして合流しました
「どうしました? 聖女様」
「なんでもないわ。もういいわ。出て行って! 一人にしてちょうだい!」
「わかりました。ですが、くれぐれも妙な気は起こされないようにお願いします」
「しないわよ!」
「……分かりました。では失礼します」
メイドが朝香の部屋から出ると、朝香はベッドの上に移り俯せになる。
『これでいいの?』
『はい。これで監視の目からはソウタの死に嘆き悲しむ優しき聖女の出来上がりです』
『そんなことより、想太よ。ねえ、本当に想太なの?』
『はい、想太だよ』
『本当なのね? でも、さっき死んだと言われたけど?』
『うん、正確には殺されたね。しかも四人の術士から『火球』を浴びせられての焼却だよ。誰が汚物やねんって話だよね』
『ごめん何言ってるか分からない』
『うっ。まあいいや。でね、俺が殺された理由なんだけど……』
朝香に俺が殺されることになった状況を朝香に説明すると朝香が怒り出す。
『じゃあ何? 私達に言うことを聞かせる為の人質にしたって言うの? しかもご丁寧に奴隷にまでして』
『うん、そうみたいよ。だから、俺は殺される前に自分から脱出したって訳。ごめんね。急にいなくなったりして』
『ズルい』
『え、何?』
『想太だけズルい! 私も逃げ出したい! 私も連れて行ってよ! ねえ、お願い! いいでしょ?』
『え? でも朝香の友達が隷属化されて奴隷にされているんだよ? いいの?』
『想太はいいの? 私がアイツらにいいように利用されてもいいって言うの?』
『それはイヤだけど……』
『なら、いいじゃない』
『でも、朝香の友達は人質になっているんだよ。それはいいの?』
『いいわよ。皆、想太のこと悪く言うし。私には関係ないわ』
『え~そうなの。俺があんなに悩んだのが馬鹿みたいじゃない』
『へぇ~想太が私の為に悩んでくれたんだ。なんか嬉しくなるね。それでいつ迎えに来てくれるの?』
『そんなの朝香の来たい時にすればいいじゃない』
『ん?』
『え?』
『どゆこと?』
『どゆことって、朝香は俺と同じスキルを持っているでしょ? だから、視界に映る俺の位置を示す光点の場所に『行きたい』って強く念じれば転移出来るでしょ?』
『え、そうだったの? ちょっと、待ってね。こっちのアツコちゃんに聞いてみるから。ってことなんだけど、そうなの? ふ~ん、そうなんだ。じゃあ、アツシ君が想太のスキルを横流ししてくれてるのね。分かった。ありがとう。お待たせ、想太の言う通りだったよ。じゃあ、今から転移するね。行きたい! 行きたい! 想太に会いたい! 想太のいる場所に行きたい! 『転移』』
「きゃっ、いった~い。あ、想太だ。想太がいる。想太ぁ~」
転移で跳んできた朝香が着地に失敗し、尻餅を着き立ち上がりながらお尻をさすっていると自分を見ていた想太に気付き、想太に向かって手を広げながら走ってくる。そして、想太に抱き着くと想太の匂いを胸いっぱいに吸い込み「本物の想太だ~」とご満悦だ。
「想太だよね。本物だよね」
「朝香、ちょっと落ち着いて。いい子だから」
「それより、どういうことなの? 説明してもらえるかな」
「分かったから、説明するからさ、ちょっと離れてもらえる?」
「え~いいじゃないの」
「でも、話すなら目を見て話さないとでしょ」
「それもそうね。分かったわ」
想太に抱き着いていた朝香が離れると、朝香は想太の目の前に立ち、想太の両手を握りしめる。
「朝香?」
「何? 想太」
「なんで手を握るの?」
「それはもちろん、逃げないようによ。おかしいこと言うのね」
「おかしいのは朝香の方だと思うけど?」
「そんなことより、話してよ。なんでクラスの皆が人質にされたの?」
「え? さっき、話したよね?」
「確かに聞いたわよ。でも、なんか納得出来ないのよね。それにさ、そもそも私達が召喚された理由ってなんなの?」
「え? 朝香も聞いてないの?」
想太もだけど朝香もこの世界に召喚された理由を聞いてないと言う。あとで、アツシに聞いてみるかと想太は思うがちゃんと話してくれるのかと不安になる。そして、朝香が愚痴をこぼす。
「聞いてないわよ。何も言われずにコレ着て、あっちに行って、これ食べてとか、そんなのばかりでなんの説明もなかったわ」
「そうなんだ。俺達と違って特別扱いされていたから、ちゃんと聞いているのかと思ってたのに」
「そうよね。私と委員長と龍壱君の三人のユニークスキルが特別で私が『聖女』、委員長が『魔導師』、龍壱君が『勇者』だと言われたわ」
「また、クセの強い連中に当たったもんだよな」
「でも、想太のスキルが一番の曲者じゃないの」
「うん、それは否定出来ないね」
朝香に言われるまでもなく想太自身が自分のスキルがチート過ぎるのは理解している。
それも直ぐに世界征服が可能なことも。
「そして、私も想太と同じレベルになったと言うわけね」
「ごめん。でも朝香を守る為には必要だと思ったんだ」
「ううん、違うのよ。責めているわけじゃないの。確かに最初は頭の中から声を掛けられて驚いたけど、今は感謝しているのよ。アツコちゃんにも会えたしね」
「アツコちゃん……ね」
朝香が自分の脳内アシスタントに着けた名前に想太が嘆息する。
「うん、だって想太のアシスタントはアツシ君なんでしょ。だから、私もそれにならってアツコにしたの。ダメ?」
「ダメじゃないけど、もう少し考えてあげてもよかったんじゃないの?」
「そうかな。でも、もう着けちゃったし。それより、召喚理由よ。想太からアツシ君に聞いてみて」
「分かったよ。ってことで教えてもらえるかな、アツシ」
『分かりました。では、お話しましょう』
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