テンプレ
「よ〜〜にいちゃん。ちょっと面貸せよ。グヒヒ」
はぁ、早速かよ。
声がする方を振り向くと、バーコードみたいにハゲ散らかした奴が一人とその後ろでニヤニヤしながら追従するスキンヘッドの奴らが二人いた。
スキンヘッドの二人組はおそらく双子だろう。
クローンを疑うほどのそっくりさんだ。
多分フュージョンしても微塵も変化ない。
それにしても、ギルドを出て5秒で逆ナンされてしまった。
異世界に来て異常者に異様にモテるようになったな。
これがモテ期ってやつか?嬉しくねぇ〜
「悪いけどタイプじゃないんだ。他を当たってくれ」
適当にあしらえたら良いけど多分無理だろうなぁ。
「グヒヒ、つれねーこと言うなよぉお」
バーコードが黄色い歯を剥き出しにして、笑いながら俺の腕を掴む。
「いや、俺が言うのもなんだけど。清潔感って知ってる?」
歯磨かないやつは確実に手も洗わないと思い即座に手を振り払う。
「「テメェ、アニキは緑だぞ見えねーのかぁ!!」」
それを見た双子スキンヘッド共が声を揃えて、バーコードの腕輪を指す。
緑、D級か。
どれほどの強さかは知らないが一人前と称される冒険者。
なるほどな、白の腕輪をしたF級の俺に3人掛でカツアゲでもしようって魂胆か。
双子スキンヘッドの腕もちらりと見てみると、橙。
D級一人にE級二人か…勝てない相手ではないな。
だがまずいな、ギルドを出てすぐの所で騒いだせいで、だんだん周囲の人の注目を集めてきた。
まだレベルが上がっていない現状で目立つのは得策じゃない…万が一敵わない奴に目をつけられたらおしまいだ。
なら今は大人しくこいつらの相手をする方がマシか。
そこまで考えた俺はハゲ三人衆に向かって笑いかける。
「ごめんごめん、初めてナンパされたもんで緊張してたんだ。それで、俺に何か用があるんだろ?」
ここでまだ騒ぐ気か?と言外に滲ませながら俺と対峙しているバーコードを見る。
「グヒヒっ、物分かりが良くて助かるなぁ、にいちゃんよ〜ついてきな」
そのまま三人組に連れられ、目立たないように場所を移動する。
その最中、騒ぎで周りに寄ってきた人達を見遣るとその中には、俺の受付をした赤髪美人ちゃんも様子を見にきていた。
目が一瞬合うと無愛想な表情は変わらずに、だが心配そうにこちらを見ていた。
自分が冒険者登録を担当した奴がすぐに死んだら、寝覚めが悪いのだろう。
その様子にこの世界にはいない母の姿が少し重なり、微笑みながら心配ないとサムズアップする。
すると、赤髪美人ちゃんは小さくこくりと頷いた。
「やっぱり、良い子だな」
どんな理由であれ母以外に自分の身を案じてくれている人がいたことに、柊は思わずそんな言葉を呟いていた…連行されている奴の顔とは思えない程の笑みを浮かべて。
五分ほど案内されるがままについて行くと、さっきの大通りとは打って変わって人気のない裏路地に来ていた。
建物と建物の間にあり、日の光も殆ど入らないようなジメジメとした雰囲気の場所。
思わず地下牢を彷彿とさせるような陰気な空気が漂う街の裏側。
こんな場所じゃ、いくら大声を出しても、ちょっとやそっとじゃ人なんてやってこないだろう。
お散歩ももうおしまいなのか、ハゲ三人衆は立ち止まり俺の方に振り向いて、徐に胸元からナイフを取り出した。
そこで俺が挑発するように先に切り出す。
「こんな所まで連れ込んで何する気だよ。そのナイフで俺の服でも切り裂くのか?てっきりカツアゲでもされるのかと思ったら、外で4Pでもしようってか?あいにくそっちの趣味はないから、おたくら兄弟で近親相姦でもしててよ。手伝えないけど、見てもらった方が興奮するってことだったら、吐かないように我慢するから存分に楽しんでいいよ。」
俺の挑発に、少し錆びたナイフをこれまた汚い舌で舐め回しながら答えるバーコード。
「グヒヒヒっ、急に察しが悪いじゃねーかよぉ。にーちゃん。あんたの着ている服見たとこ随分ご立派なもんじゃねぇかよぉ〜。オマエさん、どっかの商会のボンボンとかだろ?」
なるほどな。
制服じゃ目立つからアンスリウムに適当に見繕わせたこの世界の服だったんだけど、これは立派な部類に入る服だったのか。
それで目を付けられたか。
確かに作り的には地球とあまり変わらないけど、触り心地なんかはやっぱり比べ物にならない。
化学繊維なんかないから仕方ないんだろうけど、その辺の感覚はどうしても前の世界の名残があるな。
「別にただの平民だよ。」
嘘は言ってない、未亡人の母と二人暮らしの母子家庭です。
「「嘘つくんじゃねぇよクソガキぃ!!金持ってるのはわかってるんだよぉ!!」」
今度は双子スキンヘッドが声を張り上げる。
それにしても息ぴったりだ。
ぜひ、「ちょっと、ちょっとちょっと」とかやってみてほしい。
「まぁ金は持ってるな。腐るほど」
第一王女権限で無理難題を言ってかき集めた莫大な金が。
いくつもの一般家庭を今後数十年は養っていけるほどの金が。
「グヒヒヒっグヒヒっ。後ろ盾はないが金はある、なおさら都合いいじゃねぇかよぉ〜。今すぐ出しな、にーちゃん」
バーコードが器用に気持ち悪い声で笑いながら俺にナイフを突きつけてくる。
それに俺は素直に従うように、分かったよと言ってハゲ三人衆との間にボックスを出す。
「「「!?」」」
突如目の前に現れた黒のキューブに体をビクッと跳ね上がらせて驚くハゲ達。
そしてその流れで黒廛を展開し、三人の足首から下を纏っていく。
「なんだこれは!!」
「「クソッ、取れねぇ!」」
靴が真っ黒になった所でようやく危険を察したのか焦り出すハゲ三人衆。
だが俺はそのまま淡々と収納と念じる。
すると、ハゲ共の足首から下が綺麗さっぱり無くなった…いつぞやの鉄格子のように。
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