再検証
地下牢から出て直ぐに世界のあれこれやポーションについて聞かされた俺が、次に取り掛かったのは、固有スキル「ボックス」の再検証だった。
何を今更?と思うかもしれないが、ちゃんと理由はある。
この世界では命の価値が恐ろしく低い。
昨晩まで生きていた人が、朝には死んでいるなんてことざらにあるらしい。
その原因は魔物だったり、盗賊だったり、理由は様々だが前の世界ではなかった身の危険がいつもそばにある。
そんな理不尽に負けない為には、こちらも力を付けるしかない。
というわけで、異世界人である俺にとって固有スキルはまさに生命線であり、その能力を把握しておくのは急務なのだ。
それに、監禁されていた時は、収納スキルだというのに収納できるものが少な過ぎたからね。
どこまでの大きさのものなら取り込めるのかとか、容量みたいな物が全くと言っていいほど分かってない。
だからこそ黒纏の習得に集中できた訳だけど、そこは曖昧にしたままではいられないだろう。
でも、よく考えてみたら本来の収納スキル…ほぼうんこにしか使って無かったわ。
それって一応勇者としてどうなの?
その前に現代人としてどうなの?
今異世界人だからセーフかな?
それはよくないと反省しようとも思ったがあれは仕方ない、死活問題だったんだ。
そして、ここまで考えた所である考えがよぎった。
うんこってまだ出せるのだろうか?と。
異空間に収納された物がどれだけの期間、保管できているのか、それを確かめるには良いサンプルではある。
そして、ボックスを出して「うんこよ出て来い」と念じるとマジで出てきた。
しかも見た感じ、出来たてほやほやだ。
うんこの長期保存とか誰得だよとか思ったけど、サンプルとしては優秀だし俺得ではある。
それを見て、これはもしやと思い、試しに水をなみなみまで注いだコップをボックスで収納して1日放置してみた。
すると案の定、翌日になっても水のかさに変化はなく、少しも蒸発はしていないようだった。
このことからボックス内は時間が止まっていることが確定した。
これは何かと便利だな〜とひとしきり感心した後、俺は続けて色々と試してみる事にした。
まず容量、これは薄々そんな気はしてたけど無限だった。
そもそも、収納に魔力を必要としない時点で限界がわからないし。
ただ、やっぱり予想していた通り、家みたいな大き過ぎるものはたとえ独立していたとしても収納できなかった。
普通のボックスで収納できる大きさは、精々部屋にあるキングサイズベッドが限界だ。
まぁ、今はベッドが限界だけど、俺はまだレベル1だし伸び代は充分あるだろ。
それに今でも魔力は消費するけど、黒纏を使えば家ぐらいなら余裕で収納できるしね。
アンスリウムが言うには、アイテムボックスの固有スキルを持ってる奴は、ボックスの変形なんて出来ないらしい。
そもそも考えもしないんだとか。
俺の固有スキルの自由度が高いのもあるが、異世界人だから思考が固まってないって要素が大きいんだな…魔法はイメージだ。
隷属の首輪を外す為にがむしゃらの試行錯誤で辿り着いた技なんだけど、あの時の俺本当すごいな。
よくやった、えらいぞ俺。
次に試したのは、異空間に収納した物体に俺が干渉することは出来るのか。
収納したものを俺の任意で抹消とかできたら便利じゃね?って考えた訳ですよ。
まぁこれも、うんこを収納した時に思いついたんだけどね…
いくら異空間で他の物体同士が作用し合わないとはいえ、同じ空間にうんこあるの嫌じゃね?って。
これも、端的にいうならできた。
俺は、異空間から収納した物を取り出す時、取り出したい物をイメージするんだけど、その要領で消すイメージをしたら簡単にできた。
パソコンでの打ち間違いをdeleteするようにあっさりと。
どういう原理とかは謎だけど出来たし良いよね。
そもそも魔法とかいまだに謎だし、そういうものとして理解しておこう。
いや、やっぱり俺が天才だからって事にしておこう。
その方がモチベ高まるし。
ここまで検証したことで黒纏以外の技のイメージも浮かんだ事だし、そろそろ実践を経験したいな。
いつまでもレベル1のままではいられないし、井の中の蛙になるのも嫌だしね。
俺の予想では、今のままでもチート陣内と愉快な仲間達にだって負けないと思うんだけどね…
この自堕落生活もそろそろ終わりだな〜
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