脱:地下牢
隷属の首輪クーリングオフ記念にアンスリウムに少し意地悪をした後。
俺は地下牢から王女奴隷と共に脱出していた。
脱出といっても暗い通路を歩いてるだけなんだけどね。
その道すがら、俺の少し後ろに追従してくるアンスリウムに気になっていた事を聞いてみる。
「お前、いつからこんな事してるの?」
「こ、こんな事とは?」
「だからいつからこんなアブノーマなルな性癖に目覚めたのかって聞いてるんだよ。」
「10歳くらいでしょうか?」
早熟すぎない?
どんな教育施したらこんな異常なことしたいって10歳で思えるんだよ。
ある意味変態育成のスペシャリストだな。
「きっかけは?」
「いえ、特には思い当たりません。気付いた時には既に…」
本能かよ。
原因とかないのね。
「人はどこから調達していたんだ?」
毎回勇者召喚する訳にはいかないだろう。
膨大な魔力が必要らしいし。
それに俺がクラス内で孤立していて、固有スキルが不要だと思ったから奴隷に落としたって言ってたしな。
「スラムから攫って…」
「魔王討伐ってのは自虐ネタだったのか?」
よく人類のためにとか言えたもんだな。
これだけ面の皮が厚かったらさぞ生きやすかったろう。
これが王女とは世も末だ。
俺がその分きっちりやり返してやらんとな。
じゃないと犠牲者たちがあまりにも不憫だ。
任せてくれ。やり返すのは得意じゃないけど何とか頑張ってみるよ。
「い、いえ、魔王は実在しています。事実、魔族や魔物による被害は年々増加しています。」
俺に嘘をついていると疑われてしまった!と御門違いな事を心配するアンスリウム。
それに俺はそんなことを言ってるんじゃない!と正論でぶん殴る。
「魔王の配下による被害が多かったらお前の行いによる人への被害は正当化されるのか?って言ってんだよ。随分と都合のいい頭をしているんだな?魔王がなんだ、魔族がなんだ。被害を無くしたいと宣うならまずは自分の行いから改めるべきなんじゃ無いのか?今のお前は魔王のお手伝いをしているといっても過言じゃない。」
ぶっちゃけ、魔王とか王国とかどっちが勝とうが負けようがどうでも良いんだけどね。
俺は俺が幸せであれば何でもいいし、魔王が世界征服して俺が幸せになるならいくらでもやってほしい。
それに、本来味方であるはずの王国にこんな扱いをされたんだ。
今更王国の為に魔王と戦う気とか起きないわ。
一応勇者だし人に仇なすならやっぱり殺しちゃおうかな?と首を切るようなジェスチャーをする俺に必死に弁明するアンスリウム。
「い、いえ!スラムのモノは人ではありませんので…私は本当に人類の為を思っております!か、彼らは、身も心も汚く、物を盗み、税も納めず、治安を悪くする王国の害虫なのです。ですから、私が積極的に掃除をして差し上げていたのです!!」
「そうかそうか、スラムにいるのは人ではないのか。それなら、今のお前も人ではないという認識で間違いないか?今のお前は勇者にすら手を出し、身も心も汚く、税も納めない奴隷身分な訳だが…俺も掃除した方がいいのかな?」
「わ、私は王女ですので!特別です!この体には気高き血が流れていますもの!」
コイツの血が気高いのならどんな血が下卑ているのか是非教えてほしいところだな。
少なくとも俺は輸血が必要な状態に陥ったとしても、コイツの血だけは入れてほしくない。
それだったら家畜の血を入れてもらう方がまだいい。
そんな問答を繰り返しながら歩いていると5分ほどで地下牢の出口へつながる階段が見えてきた。
階段を上がっていくと、地下を閉じ込めるように蓋がしてあった。
その蓋を両手でぐっと押し上げるようにして力を入れると蓋が開いていく。
蓋の隙間から眩しいほどの光が俺の顔に照らされる。
久しぶりのランプ以外の光に一瞬目が眩むも何とか瞼を閉じずに我慢する。
徐々に視界が鮮明になっていくとそこに映ったのは、見るからに豪華絢爛な部屋。
元の世界のホテルと比べても遜色ないほどの質の良さそうなベッドがあることから、誰かの私室のようだ。
「誰の部屋だ」
「私です。」
自分の部屋の地下に拷問部屋作ってるのかよ。
道理でここまでの通路が長いと思ったら、血の匂いとかがここまで来ないような設計になっていたのか。
何でも頻繁にこういった事を繰り返していたら、カインが王家お抱えの職人に特別に作らせたらしい。
城の中を奴隷やら拉致してきたものを歩かせなくてもいいように配慮したってわけか。
税金の無駄使いまさに極まれりだな。
だが俺には丁度いいかもしれない。
ここなら誰にも見つからずに好き勝手アンスリウムを飼えるし、クラスメイト達と会わずに済む。
俺のことを見捨てた奴らだし今更会いたくもない。
ここでしばし体力と精神を回復して、今後に備えることにしよう!!
風呂も部屋についているみたいだし、休息するには最高の環境だ。
王女というこの城でのみ活用できるチートがいるし、今後のことを練るには丁度良い!
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