sideアンスリウム

 回夜柊おもちゃで遊び始めて8日目


 コツコツコツコツ


「ふん〜ふふふん〜、今日は何をして遊ぼうかしら…」


 鼻歌交じりで地下へと続く階段を降りていくアンスリウム。

 その手には回夜柊おもちゃに初めて与えた食事であるミルクとパンが盆に乗せられていた。

 その献立を見てにやりとしながら数日前のことを思い出す。


 あの時のことは忘れません。



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 私が久しぶりにおねだりをしてお父様から与えてもらった回夜柊おもちゃ

 見た目は醜いですが構いません。


 私は人が壊れていく様をみたいので、半分壊れていてもいいのです!

 でも直ぐに壊しては勿体無いので徐々に痛ぶっていこうと思いますわ。


 手始めに真っ暗な地下牢に一日放置しました。

 急に異世界に召喚されたと思ったら奴隷に落とされ、目が覚めたら地下牢にいる。

 これだけでも常人なら相当キツいはずです!


「ふふ。反応が楽しみですね」


 昼ごろ彼の絶望した様子を一目見ようと最低限の食事を持って地下牢へ行きました!


「ウフフ、おはようございます。ご機嫌いかがですか。」


「良い訳ないだろっ…」


 多少動揺しているようではありましたが、期待した反応とは違います。

 目が醒めたばかりで状況が理解できていないのだろうと思い少しわからせてやることにしました。


「いいじゃないですか。お話しくらい!貴方は私のおもちゃなんですから!会話もオモチャの役目ですよ???でも生意気なので少しお仕置きです。」


 私はそこで持っていたパンとミルクをわざと地面に落とします。


「食べなさい。私、食べ物を粗末にする人大嫌いなんです!!!このパンもミルクもイヴェール王国民の血と汗と涙の結晶なんですよ!私はイヴェール王国の第一王女として見過ごせません!!!」

 

 私は王女ですからね。

 民を思いやるのは当然です!


 ふふ、床に落ちたものを食べるなんてできますかね。

 それも土やカビだらけの床に。

 スラムならまだしも貴方はただの学生だったのでしょう?


 あ、仕方なく食べるみたいです。

 なかなかしぶといですね。

 でも、そうですよね唯一の食事ですものね。


 ふふ、いいことを思いつきました!


「このまま食べるのは流石に可哀想ですからね…高貴な私が踏んで浄化してあげます。そうすれば綺麗になるでしょう??」


 ミルクを吸って湿ったパンが私が踏むことで床の汚れをどんどん吸い取っていきます!

 でも私が踏めばさっきよりはマシになるでしょう?


「パンも床も綺麗になったわ!これを一石二鳥というのでしょう?昨日貴方がいなくなった後、勇者様方に教えて貰ったのです!早速実践してみましたのよ??」


 私は賢いですからね。

 覚えたら直ぐ実践です!


 それでここでふと思いつきました!

 一石二鳥では足りません、なんて言ったって私は王女ですから!


「これで貴方が食べれば貴方は飢えずに済むし、私は楽しめます。これで一石四鳥ですね?」


 ふふ、さらに私は優しいですからね。

 食べやすいように近くに運んであげます!


 手では触りたくないので足で蹴ることにしましょう!


 ふふふ、こんな汚物食べるわけないですがこの光景はなかなか面白いですね 。

 あぁ、やっぱり人を見下すのは楽しいです。。。


 痛めつけるのは、まだ我慢です。

 私は直ぐ壊しちゃいますから。




 え…





 は…




 ありえない。




 きっとスラムでも食べる人いないわよ、、


 ただでさえ最低限の食事をさらに汚物にすることで、いくら勇者といえど元の世界ではただの学生だった彼なら心が折れると思いました。


 ですが返ってきたのは、これです。


「ご馳走様でした、アンスリウム王女様。イヴェール王国民の血と汗と涙の結晶篤と味わいました。異世界の食事とは、初めてでしたが大変珍味でした。こちらの国もとい世界では、小麦粉に生ごみを混ぜてパンを作るのですか?それともミルクの元となる家畜に生ゴミを食べさせているのでしょうか?奇想天外な発想に驚かされるばかりです。ここに仕えている料理人は、料理Lv.7以上と聞き及んでおりますが、猟奇Lv.7の間違いでは?それともこれは、アンスリウム様の手作りでしょうか?おっと失敬、アンスリウム様は足でパンを捏ねるのでしたね?でしたらパンではなく、うどんなる食べ物を極めたら良いでしょう。うどんは足でこねても食べてくれる人が居るのでよかったですね?あーーー、小麦粉はどうしましょう。生ゴミ印のイヴェール産だと売れるものも売れないかもしれません…etc」



 挑発したら挑発で返ってきました。




 許しません。




 あなたは奴隷で私が主人です。



 手は出さないように気をつけていたのですが、思わず殴ってしまいました。



 ここで殺すのは簡単ですが、このまま負けたままではいられません!


 結局、悔しくなって次の日は気持ち悪い虫たちを生きたまま入れたスープを持っていきました。



「うわー、異世界のスタミナ料理ですか?そんなものを振る舞っていただけるなんて光栄です。あ、でもこれって…遠回しに誘ってます?それでしたら申し訳ないですが遠慮しておきます。性病とか怖いですし。あ。アンスリウム様がビッチって言いたいわけじゃないですよ?でも可能性はゼロではないっていうか。ほら症状の有無だけじゃ正確じゃないですし、しっかり血液検査もしてきて下さったら考えなくもないというか。もしお急ぎでしたら、ゴブリンとかオークと致したらどうでしょう?異種族交流的な…ははは。なーんて異世界ジョークじゃないですか…etc」



 しぶと過ぎます。

 本来なら泣き言を言ってもおかしくない状況です。


 自分が今奴隷だと認識しているのでしょうか。


 私はいつでも殺せるのですよ?



 その状況で私にここまで不敬なことを言えるなんて、タフとかそんなんじゃありません。



 頭おかしいです。




 本当は精神的にもう少し痛ぶってからの予定だったのですが、仕方ないでしょう。




 ふふふ、明日からが本番です。



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「アレからも一応最低限の食事は続けて与えていたのですが、相変わらず食事で攻めてもダメでしたね。」と拷問と並行して食事でも攻撃し続けていたが全く効果なかったことを悔しむアンスリウム。


 ですが今回は前とは一味違います!


 このパンを作るときには本当に生ゴミと小麦粉を混ぜていますし、このミルクには生ごみを絞って出てきた汁も入っています!!


 自分で自分の首を絞めるとはまさにこの事ですね!

 ふふっ。前と同じように減らず口を叩けるか楽しみですね。


 拷問が効果的なのは昨日までの態度で分かっていますからね。


 今日は何がいいでしょうか…


 また鞭がいいでしょうか。

 鞭は他に比べても反応がピカイチでしたからね!

 昨日なんて涎を垂らしていましたし…


 柊が地下牢に入って8日目の昼。

 いつものように楽しげに回夜柊おもちゃの元へ向かうアンスリウムはまだ知らない…自ら地獄の入り口へと進んでいることを。









 隷属の首輪によって縛られた絶対の契約。


 この世界で初めてその絶対を覆した存在回夜柊が今反旗を翻す。







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