クソ女
独房生活5日目。
昨日散々体の末端である指を責められたから、今日は定休日ってことにならないかなー。
なんて思ってたら普通にいつも通りゲロまずなご飯をにこやかな顔をして持ってきた金髪縦ロール女アンスリウム。
皮肉なことにここまで俺に笑顔を向けてくるのは、前の世界合わせても母さんとこの女くらいだろう。
好感度は天国と地獄、母さんのワンサイドゲームだけどな。
この女はいつか絶対泣かす。
俺は結構根に持つタイプなんだ。
「ごきげんよう。うふふふっ、随分と体調が悪そうですね?」
俺の顔色を見て愉快そうに微笑む。
「あー、服を着替えたい以外は万事絶好調だよ。」
俺は皮肉をたっぷりこめて返す。
それに着替えたいのはホントだしな。
昨日のアンスリウムによるお遊びという名の拷問で血やら汗やら…etcでだいぶ汚れてしまった。
そもそもこの六畳一間、何もないのだ。
お風呂は勿論、トイレすらない。
刑務所にだってあるような設備すらないただの空間。
じゃあトイレどうしてんだって思うよね。
俺も最初は頭を抱えたんだけど、よく考えたら俺収納使えるじゃん?
だから部屋の隅で用を足して、すぐ収納してたよ。
うんこ収納して荷物全部うんこまみれになったらどうしようって思ったんだけど、試しに靴入れても何の影響もなかったから多分大丈夫。
その辺もいつかじっくり検証したいけどね。
まぁトイレ事情がどうにかなったところで、お風呂には入れないわけで。
ただでさえ、5日も風呂に入らずにいたら匂うのに、この空間でいろんなことあったからまぁ臭くなる臭くなる。
俺なんて元の世界では朝と夜の2回風呂に入る程の綺麗好きだったからね。
この環境はまぁまぁ辛かったりする。
図らずも俺に精神的ダメージを与えられたことに嬉しそうに目を細めるアンスリウム。
最初はアニメに出てくるようなキャラの立った綺麗な子だなとしか思わなかったけど、今改めて見ると俺の目にはものすごく醜悪に映る。
多分他の人には普通に見えてるんだろうな。
人って自分の信じたいものを信じるし。
あ、醜悪って自虐ネタとかじゃないよ?
どの顔がいってんだとか言われたら速攻論破されるから言わないでね。
だが俺の名誉の為に言わせてもらうけど、事故の前までは結構美少年だったんだよ?
あ、誰だ過去の栄光とかいったやつ。
もう二度と言うなよ傷つくから。
このまま口喧嘩だけして今日は帰ってくれないかなーなんて俺が考えていると、そんな願いをぶった切るようにマジックバッグに手を入れる。
今日も拷問かとそこで身構える。
何が出てくるのかとドキドキしながら様子を窺っていると…回復ポーションを一つ、二つとどんどん出していく。
「どういうつもりだ……」
俺は昨日の所業を知っている為、こいつに何を企んでいるんだと詰問する。
「どういうつもりも何もないです。私、痛めつけるのは好きですけど殺すのは好きではないんです。だって簡単に殺してしまってはもう遊べなくなってしまうじゃないですか。それは困りますので…」
そう王女とは到底思えない事を平然と言い、過剰とも言えるほどの回復ポーションを出す。20本はあるだろうか。
そう簡単にこの女を信じるわけではないが、隷属の首輪を取る希望である固有スキルを実用段階にするまでにはもう少し時間が必要だ。
俺の為にもこの展開は願ったり叶ったりだ。
そう思い俺は並べられている回復ポーションの一つに手を伸ばす。
そして手がポーションに触れる寸前…いつぞやのパンの時のようにクソ女がポーションを瓶ごと踏み潰す。
「いつ今使っていいといったのかしら?」
「は?」
クソ女は目を三日月のように細めニヤリと不気味に口角を上げると、マジックバッグの中に再び手を入れる。
そして、手に持っているものを俺に見せつけるようにして掲げていう。
「私鞭術を嗜んでいますの。貴方にはその実験台となってほしいのです!うふふふ、なかなか人相手に試せることなんてないので嬉しいです!ハァハァそれと、これ相当痛いらしいので死なないでくださいね?ハァハァハァまぁ、そう簡単に死なせませんがハァハァ」
並べられている回復ポーションを一瞥しながら、俺に忠告するクソ女は既に顔を汗で髪が濡れるほどに上気させ発情していた。
「 クソ女が……絶対泣かす」
そう吐き捨てながら俺は、覚悟を決めるのだった。
あ、
やっぱ無理かも。
縄跳びですら痛いのに…
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