拷問
「ウゥッ…くぅっ」
椅子の肘掛と俺の手がアンスリウムの突き刺した針によって固定された時、俺は唐突な痛みについ叫びそうになる。
歯を食いしばって何とか痛みに耐えるが、手を貫通しているぶっとい針をみて
思わず顔を背ける。
「あらあら。叫び声が聞けると思いましたのに…残念です。でもまだこれからですからね!次はどうしましょうか。。んーーー、」
期待通りの反応ではなかったのか少し残念そうに呟く。
そして、アンスリウムが顎に手を当てて考え込むこと数秒。
「ふふふ、随分と爪が伸びていますね?ダメですよ、清潔感がないのは女性に嫌われてしまいます。私がお手入れして差し上げます!!」
いいことを思いついたと言わんばかりに、マジックバッグから取り出され並べられている工具の中からペンチのようなものを手に取る。
「貴方は爪が伸びるの早そうですからね!!ここに爪切りなんてありませんし、少し深爪になってしまいますが我慢して下さいね?その方が後で楽ですから!」
針で肘掛に固定している右手の親指の爪をペンチで挟むと、えい!と舐めた声を出しながら一気に剥がす。
爪で覆われていた部分が空気にふれ、じわじわと血が滲み出てくる。
「うううううああぁ…」
「うふふふふふふ。ふふっ。我慢ですよ!!私も頑張りますから!」
「やめろ……」
「いいえあと4本残ってます!後回しは良くないです。」
そう言って残りの4本も同様に剥がしていく。。。。
「うわぁぁあああああああぁぁーーーーー」
「うふふふっふっふふふ」
俺の叫び声とアンスリウムの笑い声だけが地下室にこだましていく。
右手の指の爪が全部剥がし終わった頃、俺は痛々しく傷つけられた自分の右手を見て項垂れていた。
もはや、手首から先を切ってしまった方が楽になるのではないか。
痛みをさらなる痛みで塗りかえようとするほどに憔悴していた。
その傍で恍惚とした表情を浮かべるアンスリウム。
顔を上気させながら、はぁはぁと興奮としている。
「あぁああぁぁぁぁぁっーーーーーーー、これが見たかったのです…我慢してきた甲斐がありました。久しぶりです…この感覚…たまらないです…」
そう言ってアンスリウムは、爪を剥がした時に出た俺の血が付いたままの自身の手をゆっくりと下腹部の方へと伸ばしていく。
俺の前だというのも構わず欲望のままに自分を慰める。
この女の異常性を4日目にしてようやく痛感した頃、軽く達して落ち着いたのかアンスリウムが俺に向かって謝罪する。
「申し訳ありません…はしたないところを見せてしまいました。ですが久し振りだったのでご容赦ください?」と最初に見た時よりも一層不気味に映るアンスリウムを見て、これがやつの悪癖なのかと理解する。
カインが玉座の間でアンスリウムに堪え性がないと言っていたことを少し遅れて思い出す。
こういったことを日常的に行なっていたのだろう。
俺がこの女の異常性を痛みに耐えながら考えていると謝罪したのも束の間に俺にさらなる痛みを与えようとする。
「さぁぁ!今度は左手ですね。その後は両足、計15本です!右手だけだとバランスが悪いですからね!!その後は、爪を切ったのですからヤスリがけしないといけませんね?ちょっと痛むかもしれませんが頑張りましょうね!まだまだこれからですよ!
まだ続きがあるのが嬉しそうなアンスリウムとは裏腹に俺はその言葉に心が折れそうになる。
現実世界にいる母の顔が脳裏にチラつく。
心配しているだろう。
泣いているかもしれない。
異世界に来ても理不尽な目に合う自分を唯一心配してくれる存在。
母に悲しそうな顔をさせまいと逆境に負けずに戦ってきたんだ。
こんな所で諦めるな、
弱気になる心を家族を思い奮い立たせる。
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