不要

独房生活4日目


「貴方には生半可なことでは意味がないと昨日までの態度でよくわかりました。今日からは、体に教え込むとしましょう。座りなさい。」


 アンスリウムがいつもの金髪縦ロールを靡かせながら気合が入ったように俺に指示する。


 昨日までのパンやスープの件のことを言っているのだろうか。

 舐められたものだな。

 俺くらいのイジメラレイヤーはあれくらいの嫌がらせは義務教育の時点で経験済みなのだよ。


「命令します。貴方はこれから私がいいと言うまでその椅子から動いてはいけません。叫ぶのは許可しましょう。ウフフ、楽しみです。」


 嫌な予感がビンビンするが、ここで従わなかった場合どっちにしろ電流攻撃が待っているので、額に汗をかきながらもアンスリウムが持ってきた木製の椅子に大人しく座る。


 どうやら、俺の反骨精神を叩き折るのもここからが本番らしい。


「うふふ、まずはどうしましょうか。こんなにあると迷ってしまいます!貴方のへらず口を黙らせられるのかと思うと、体が熱くなってきちゃいます…」


 手に持っている小さいバッグから、ホームセンターにあるような工具がどんどん出てくる。

 明らかにバッグの容量が見た目以上に広いことを疑問に思っているとアンスリウムが昨日までのお返しと言わんばかりに煽ってくる。


「あー、これですか。そういえば貴方は勇者様方にこの世界の常識諸々を説明した時いらっしゃらなかったですわね?寝坊でもしたのかしら?遅刻は良くないですねーーー。でも、今回は特別に補習をしてあげます。うふふ。これはマジックバッグと言って、見た目以上の物品を収納するための魔法道具ですわよ。ここには、私のお気に入りのがたくさん入っているの。」


 それを聞いた瞬間俺は、煽られているのも気にぜずアンスリウムに詰問していた。


「その魔法道具があるから…それがあるから俺はいらないってことか!!」


「あー。そのことですか。そうですね、それも理由の一つです。そもそもアイテムボックスのスキルも珍しいは珍しいですけど結構持っている人いるんですよ。だからあなたダブってるんです。ボックスだか何だか知りませんが、能力は収納するだけ。勇者のくせに、既存のスキルとどっこいどっこい。要ります?そんなの。」


 つまり、もう間に合ってるからいらないってことか?

 そんなの、あんまりだ…。


 ですが、とアンスリウムはより一層笑みを深めて柊につづける。


「私が貴方をおもちゃにしたのは何もスキルのせいだけではないのですよ?だってよく考えてみて下さい。いくら貴方が使えないからと言っても、勇者ですよ?それを弱いから、使えないからとおもちゃにして仕舞ったら、他の勇者様方に疑念を持たれてしまいます。ふふふっふふ、お会いしてすぐわかりました。貴方の、集団での立ち位置や周囲にどう思われているのか。そしてスキルを聞いた時にこう思ったのです。」


 すこし溜めるように息を吸うと、嘲笑し言葉遣いも崩しながら真意を告げる。


「あーー、こいつ居なくなっても変わんねーやって。ふふふふっ……はぁぁおかしい。現に、貴方がいなくなってから私に所在を聞いてきた人なんていないわよ?おかしいわね、貴方の名前は出るのにね。食堂で勇者様たちが言ってましたわ。最近回夜を見かけないから体調がいいって。食事時に見るもんじゃないって。ふふ、笑いを堪えるのが大変でしたわ。」


 そうか、誰もか。

 誰か一人くらい…俺を心配してくれる人がいるかもしれないってそう信じたかったな。


 あ、でも確か陣内さんがと続きを語る。


「あの方だけは、食堂でのことに反論していましたね。そんなこと言っちゃいけない!!回夜くんが可哀想じゃないか!!とか何とか言ってました。」


 その言葉に図らずも少し感動していると、そんな俺をみたアンスリウムがとどめを刺すようにニヤリとして。


「まぁ2日前のことですけどね。この意味分かりますか?可哀想だ!!と口にして置きながら2日経っても貴方のことを探さない…………彼は心配しているふりが上手ですね???」


 どう教育を施されたらここまで人の嫌がるツボを上手に押せるのだろうか。

 クラスメイト達は、俺がいなくなったことに気づいても無視を決め込むのか。

 その事実に胸がちくりと痛んだ気がした。


「いいじゃないですか、貴方の事は私が必要としているのですから。」


 そう言ってアンスリウムはアイスピックのような針を俺の右手の甲に向かってそのまま振り下ろし、椅子と俺を縫い付けて固定するのだった。






_________________________

あとがき

明日も朝と夜の2話投稿の予定です。

am:pm8:00


誤字脱字なども教えてくださると助かります。


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