『黒廛』
独房生活7日目
俺がアンスリウムを煽って殴られてから5日が経った。
つまり、召喚されてから一週間が経過したのだ。
あ、相変わらず、独房暮らしです。
逆にすごいよね。異世界に来て7日間、初日から独房暮らしって。
そして、もはや愛着すら湧いて来るこの六畳一間で俺は今何をやっているのかというと。
黒キューブもといボックスを相も変わらず鉄格子の格子に纏わせるように展開している。
これを『
やってることは単純。
固有スキルを使おうとすると、必ず黒い箱型のキューブが出てくる。
普通に使う分には、ここで収納したいものを念じるだけでいいんだけど。
隷属の首輪みたいな特定のものだけ取り込みたい時は、黒いキューブ《ボックス》を変形させて纏わせなきゃいけない。
意外と技名かっこいいでしょ?
厨二病っぽいけど異世界なら許されるでしょ?
使いこなすのがむずいんたけどね。
簡単な構造のものほど纏うのは簡単!
今は少しカーブしているだけで鬼むず。
今は鉄格子に挑戦中。
シンプルに長い棒だから、『黒纏』を使うなら初級編だ。
地面から突出している鉄格子の上5センチだけを纏う。
そして収納。
うん成功だ。
地面からちょうど5センチ分の鉄格子が綺麗に無くなっている。
元から無かったように断面も綺麗だ。
これは攻撃にも使えるのでは?
纏うまでが激遅だから今は無理そうだけど。
ただこのままにして置くとあの
俺はさっき収納した5センチの鉄格子を異空間から取り出し、パズルのように空いた空間に嵌める。
ピッタリ!
とりあえず、自分の考えた技が実用段階にある事に安堵する。
そして、ふとそこでもしやと思い、自分の首についている銀色の首輪に触れ、黒廛を発動する。
そして、神経をすり減らしながら半分ほど黒廛で包んだところで限界が来る。
全部纏うことは無理だと判断した俺は、さっきの鉄格子のように破壊できるのではと思い、そのまま収納と念じる。
結果は失敗。
やはり全部纏ってからじゃないと隷属の首輪は収納できないのだと確信する。
にしても、頑丈すぎないか?一体何の素材でできてるんだよ。
一応、鉄をすっぱりいってるんだけどなと一人愚痴る。
ただ確かに、着実に脱出へと進んでいる事に手応えを感じる。
今日の所はこの辺で検証を終わりにして、明日に備えよう。
ここ数日エスカレートしていくアンスリウムの所業を思い出しながら、柊はこの独房生活もそろそろ潮時かと、一人暗闇の中眠りにつくのだった。
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時は遡り、独房生活4日目のアンスリウムが俺で拷問した後。
血の匂いが漂う六畳人一間で完全に煽ったのは失敗だったなと一人後悔していた。
昨日までは大差なかった。
せいぜい、凝りもせず俺の食事のスープに芋虫みたいなビジュアルの悪い虫をふんだんにぶち込んできたくらいだ。
前の日の要領で「うわー、異世界のスタミナ料理ですか?そんなものを振る舞っていただけるなんて光栄です。あ、でもこれって…遠回しに誘ってます?それでしたら申し訳ないですが遠慮しておきます。性病とか怖いですし。あ。アンスリウム様がビッチって言いたいわけじゃないですよ?でも可能性はゼロではないっていうか。ほら症状の有無だけじゃ正確じゃないですし、しっかり血液検査もしてきて下さったら考えなくもないというか。もしお急ぎでしたら、ゴブリンとかオークと致したらどうでしょう?異種族交流的な…ははは。なーんて異世界ジョークじゃないですか…etc」という感じで、アンスリウムの行いを必殺技である拡大解釈によって、揚げ足をとりまくっていたらまたもや殴られた。
今思えば、アンスリウムは徐々に心を折っていくつもりでネチネチと攻撃していたのかもしれない。
だが、俺の場合ハードいじめ経験者であり、精神耐性も持ち合わせていて、思いのほか図太くしぶとかったため完全に計算外だったのだろう。
「完全に悪手だったな。俺の危険察知が!とか勘が!とかカッコつけて言ってたけど全然大人しくしてた方がよかったわ…」
ネチネチ攻撃じゃ効果がないと分かった今日のアンスリウムの所業を一人思い出して後悔するのだった。
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