屈辱
「ウフフ、おはようございます。ご機嫌いかがですか。」
そう言って俺のいる独房まで躊躇なく入って来るのは、ミルクと固そうなパンをお盆に乗せて持った金髪縦ロールのアンスリウム。
右手首にはランプが吊るされ真っ暗闇だった部屋に光が入る。
「良い訳ないだろっ…」
この独房に入れた張本人である奴が白々しいなと苦虫を噛み潰したような顔をして俺は答える。
「いいじゃないですか。お話しくらい!貴方は私のおもちゃなんですから!会話もおもちゃの役目ですよ???でも生意気なので少しお仕置きです。」
そう言ってアンスリウムが持っていたお盆から手を離すと、ミルクとパンがゆっくりと自由落下していき床にぶちまけられる。
それを三日月のように細めた目で見て、ゆっくりと口角を持ち上げながら命令する。
「食べなさい。私、食べ物を粗末にする人大嫌いなんです!!!このパンもミルクもイヴェール王国民の血と汗と涙の結晶なんですよ!私はイヴェール王国の第一王女として見過ごせません!!!」
そんなことも分からないんですかとそう子供に説教をするように芝居がかった様子で食べろと催促する。
命令しないあたりを鑑みるに、俺が自ら従うところを見たいようだ。
俺はこの茶番に乗るのは癪だが、流石に何も食べないままでいるのはまずいと思い地面の土やらカビやらで汚れたパンに手を伸ばす。
パンに手が届く寸前、アンスリウムが勢いよくパンを踏みつける。
「おい。何してる。」
「このまま食べるのは流石に可哀想ですからね…高貴な私が踏んで浄化してあげます。そうすれば綺麗になるでしょう??」
光栄でしょう?と言いながらぐりぐりと靴で床にさらに押し付ける。
ミルクで湿ったパンが押しつけられる度に、床の汚れも一緒に吸い取っていく。
もう元のパンの色がわからなくなるくらい汚れきった時、アンスリウムが俺を見て嘲る。
「パンも床も綺麗になったわ!これを一石二鳥というのでしょう?昨日貴方がいなくなった後、勇者様方に教えて貰ったのです!早速実践してみましたのよ??」
これで貴方が食べれば貴方は飢えずに済むし、私は楽しめます。
これで一石四鳥ですね?と真っ黒になったパンをえいっ!と俺の方に蹴っ飛ばす。
ニヤニヤと俺と汚れきったパンを交互に見やる。
俺はどこまでも歪んだアンスリウムを鋭い目つきで見据えながら、お前の思い通りになってやるもんかとパンをこれでもかと味わって食べる。
パンから滲み出る元はミルクであったであろう水分が異臭を放ちながら、咀嚼する度に口内に広がる。
途中から生ごみを食べているような感覚に陥るが、どうにかパンを食べているんだと思い込み嘔吐しそうになるのを回避する。
本当に食べると思っていなかったのか、その光景に面食らってポカンとするアンスリウム。
綺麗に食べあげた俺は、驚いて声が出ないアンスリウムを挑発するようにレビューする。
「ご馳走様でした、アンスリウム王女様。イヴェール王国民の血と汗と涙の結晶篤と味わいました。異世界の食事とは、初めてでしたが大変珍味でした。こちらの国もとい世界では、小麦粉に生ごみを混ぜてパンを作るのですか?それともミルクの元となる家畜に生ゴミを食べさせているのでしょうか?奇想天外な発想に驚かされるばかりです。ここに仕えている料理人は、料理Lv.7以上と聞き及んでおりますが、猟奇Lv.7の間違いでは?それともこれは、アンスリウム様の手作りなのでしょうか?おっと失敬、アンスリウム様は足でパンを捏ねるのでしたね?でしたらパンではなく、うどんなる食べ物を極めたら良いでしょう。うどんは足でこねても食べてくれる人が居るのでよかったですね?あーーー、小麦粉はどうしましょう。生ゴミ印のイヴェール産だと売れるものも売れないかもしれません…etc」
いつかのステータス開示の大絶賛アンスリウム以上の長々とした煽り文句に、ワナワナと身を震わせて、最後には俺を一発ぶん殴って出ていってしまった。
ちょっと煽るつもりで言ったら、どんどん顔が赤くなっていくもんだから止まんなくなっちゃったよね。
だってクソ不味かったんだもん。
異世界初めてのご飯だよ?
俺の初めてを奪ったんだ、これくらい言っても良いだろ。
でも、変に言いなりになるよりこうした方がいい気がしたんだよね。
何でって?
俺の危険察知がそう言ってた。
まぁ嘘だけど。
でもあながち間違ってない気がするんだよね、
長年いじめられてきた俺の経験から言えば、ああいうタイプは悔しいって思ってる間は俺のこと殺さないと思う。
多分、絶対。
これで少しは時間が稼げたかな?
アンスリウムが未だ無能だと思っているうちに柊は密かに牙を研ぐ。
____________________
あとがき
明日も朝と夜の2話投稿の予定です。
am:pm8:00
☆・♡待ってます!
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