第4話 不思議な夢

ドンドドッド ドドドドッ ドドーン

ドドドドッ ドドドドッ ドドドドッ

ドドーンッッッ


激しい雷鳴とともに

地響きしながら

和太鼓の重低音と

カラカラした跳ねる音が絡み合い

どこまで続くのか分からない

漆黒の闇の中を

それはそれは言葉では言い表しようのない

美しい龍が

何頭か私の前を飛び交っていた


そこは、まるで龍の洞。


白なのか金なのか…

白金に輝く大きな龍が

体を大きく唸らせて

私を囲むように飛び交っていた


私は瞬間的に「味方」だと思った


その、とてもとても美しく輝く龍は

私の味方だと思った


が、突如、

一際神々しく輝く一頭の龍が

私を目がけて

物凄い勢いで襲いかかってきた


味方だと思いこんだ気の緩みから

私は足が動かず、

なんとか必死に

体を地面に叩きつけるように伏せった。


私の真上を龍が過ぎると、

今度はくるりと向きを変えて

また

私を目がけて襲ってくる


『あれ?味方じゃない!』


『敵だ!』


そう思ったとたん、

心臓が爆発しそうにドキドキし、

私は、必死に走って逃げた。


暗闇の中にいる私は、

地響きする太鼓の音よりも

ドクンドクンと大きく響く心臓を

片手で抑えて

何か、何かないかと周りを探した。


心臓を抑えながら、

走りながら

身を地面に叩きつけながら

転がりながら

とにかく必死に逃げながら

私は、身を守れるものを探していた


喉はカラカラだった


はぁーはぁーと息を吐き、

なぜ、こんな神の使いのような美しい龍に

私は襲われなければならないのか。

そう思いながら必死に逃げていた。

太鼓の音が鳴り響く。

体の芯まで響き渡る。


『怖い。』


そう思った。

恐怖だった。ただ、ただ、恐怖だった。

苦しくて、怖くて

『もう嫌だ!』

半分泣きながらそう思った時、

1本の剣が落ちているのが見えた。

私は大きく腕を伸ばし

転がりながら剣を拾った。

激しい恐怖と呼吸の苦しさで

もう何も考えられなかった。


無我夢中で剣を強く握りしめ、

美しくも恐ろしい龍の真ん中辺りを

全身の力を込めて突き刺した。

何が何だか分からない。

本能で龍を刺した。

ものすごいスローモーションだった。

激しい勢いで飛び交っていた龍が

急に静かになり

ゆっくりゆっくり地面に落ちていった。


『仕留めた…』


私は、真っ白な世界で、

ドクンドクンと

激しく跳ねる心臓の音を感じながら、

はぁっはぁっと

肩で大きく息をしていた。


私は、龍を突き刺した自分に驚いた。


本能で龍を突き刺した…


地面で横たわる美しい龍は、

どこか優しげな眼差しで私を見ていた。


『おまえは、なぜ私を刺したか分かるか?』


動揺している私に

優しい瞳で龍がそう聞いている…

ような気がする…


なんでだろう?


なんで私は龍を刺したんだろう?


本能だった。


殺されると思ったからだ。


殺されるのは嫌だと思ったからだ。



『死にたくない!』

と思ったからだ。


命…


私の命…


私は『命』を守りたかった…


だから剣を取った…


龍は私に優しく訴えているようだった


『できるじゃないか。』

『やればできるじゃないか。』

『自分の命を守るのは、自分だよ。』

『自分の命を守れるのは、自分だけなんだ。』

『自分の命を人任せにするなよ。』

『最後に誰を頼れば良いのか、分かったな?』


龍は、その美しい龍は、

自分の命をかけて

私に気づかせてくれた…



最後に誰を頼るのか…


信じられるのは…


















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