二日目⑩

今、俺たちは閉会式の打ち合わせをしている。


「やっぱり先輩が選ばれたんですね」


「お前絶対こうなることわかっていただろ」


だから自分がインタビューをするとか言いだしたんだな。


「それよりも、変な質問するなよ」


「当然そこは生徒会長として善処する予定です」


善処じゃなくて確定させろよ。


「二人とも、そろそろ体育館に移動するよ」


体育館の中に入ると意外と多くの生徒がいた。


閉会式は別に強制参加ではない。


普通はクラスの片づけとかで来れないことの方が多いんだけどな。


一通り会場を見渡すと、神楽、芯珠、栄那、釖竜さんの姿を発見していた。


俺の姿に気づくと、神楽は期待に満ちた顔をしてきて、芯珠は頷き、栄那は威圧するような笑みを放ち、釖竜さんは相変わらず不敵な笑みを浮かべていた。


嫌なメンツだな。


「それではお待たせいたしました。これより、文化祭閉会式を開催いたします」


閉会式が始まってからは、文化祭実行員の言葉、使途会長の言葉、優秀賞の発表が行われた。


「では、見事優秀賞に選ばれた2年Bクラスの代表である夜崎澪未矢先輩にインタビューをしていきます」


そう紅愛が言うと、合図が出て舞台に上がる。


俺が舞台に上がると歓迎の声とブーイングの声で会場は騒がしくなった。


なんでブーイングされなあかんねん。


「澪未矢先輩、優秀賞の獲得おめでとうございます」


紅愛が俺のことを名前呼びで言うと観客がざわついた。


「はい、ありがとうございます紅愛会長」


あ、と言い終わってから名前呼びしてしまったことに気づく。


会場のざわめき声がだんだんと増えてくる。


「おい、今の聞いた?あの二人名前呼びしてるぜ」


「マジかよデキてんじゃん」


「あの夜崎って今日栄那ちゃんに首輪つけられて歩かされていた奴だろ?」


「二股じゃん」


「まだ赤条寺が夜崎のことを名前呼びするのは分かるけど夜崎が紅愛って呼ぶのは納得いかん」


と、モブが騒ぎまくっている。


それも十分迷惑なのだが、何よりさっきから微笑んでいるけど目が全然笑っていない栄那が怖い。


「澪未矢先輩は今日メスネコメイドコスプレで接客してましたがその時の気持ちは」


公衆の面前でメスネコメイドとか言う?しかも生徒会長が。


だが、観客はさほど驚いていないみたいなのでもう認められてるんだ。


「まぁ恥ずかしかったですが、店に来てくださるお客様の顔を見ていたらやる気が出てきました」


そう言うと、何故か男子が顔を赤くして、女子は蔑むような目線を送ってきた。


男に顔を赤くされて喜ぶ奴がどこにおんねん。


「そういえば今日はどこぞの倫理観が欠けているお嬢様に首輪を付けられて散歩させられていましたがその時のお気持ちは」


紅愛は言いながら栄那の方を向いて煽るような笑みを浮かべる。


それを見た栄那はとうとう目だけじゃなく顔も笑わなくなった。


ここは栄那の機嫌がよくなるような回答をしなくては。


「えーだいぶ興奮しました」


そう答えると会場はさっきまでのざわめきが嘘のように静まり返った。


ただその中で栄那だけは


「もう澪未矢さんたらっ...//」


照れるようなつぶやきをした。


「......」


ちょっと紅愛?進行を続けて?


「えーっと、次の質問に移りたいと思います」


いや、今の回答に何かコメントして!?


あとあからさまに不機嫌になるのやめろ。


「では、皆さんが一番訊きたがっている質問をします」


「皆が一番訊きたがっている...?」


なんかものすごくいやな予感がすると。


「今、澪未矢先輩の周りには様々なメスぶt...好意を寄せているであろう女性がいます」


なんか文化祭と全く関係ない質問しようとしてない!?


「妹、メイド、お嬢様、生徒会長、あと黒スーツの女性」


あ、さすがに非常勤教師とは言わないんだな。


あとちゃっかり自分も入れてるな。


「ズバリ、この中で一澪未矢さんが一番好意をもっているのは誰ですか?」


「「「「「「「「「「「「「!?」」」」」」」」」」」」」


いや、それ文化祭と全く関係ないよね!?


さらに言うと生徒会長として相応しい質問でもないよね!?


「さぁーお答えください」


これはマジでやばいな。


「「「「「「「「「「「「「こーたえろ!こーたえろ!」」」」」」」」」」」」」


なんかコール始まっちゃったよ。


神楽の方を見ると、何やらワクワクしているように見える。


芯珠は戸惑っており、栄那はさっきよりも威圧を含んだ笑みを放っており、釖竜さんは相変わらず不敵な笑みを浮かべている。


隣にいる紅愛は


「もちろん私ですよね?」


と小声で話しかけてくる。


これは誰を選んでもいい方向に行かない気がする。


こうなったら...!


「俺が好きなのは...」


そう言い、ステージの裏に行く。


皆は俺のいきなりの行動にポカーンとしている。


そして俺が連れてきた女子生徒を見た瞬間息を飲むような音が聞こえた。


「俺が好きなのは...秋葉美沙祢さんです」

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