二日目⑧
「......」
「芯珠?さっきから何黙ってるの?」
神楽、芯珠の気持ちを察してやれよ。
俺としてはあのお化け屋敷はちっとも怖くなかったが、芯珠からするとそうではないだろう。
「それで、二人はいつ帰るんだ?」
「もうそろそろ帰ろうと思います」
まぁもうお昼過ぎているけどな。
「おや?これはこれは澪未矢君と神楽さんと芯珠さんじゃないですか」
後ろから低い女性の声が聴こえてきた。
毎回この人との声を聴くとびっくりして心臓に悪いんだよな。
「釖竜さんも来てたんですね」
「一応これでもこの学校の非常勤講師ですからね。見回りぐらいはしますよ」
見回りか。
とういうことは遊んだりはしてないんだな。
「それよりも...さっきから芯珠さんが私のことを殺すかのよう目で睨みつけているのですが」
横を向くと、さっきまで肩を震わせていた芯珠が釖竜さんのことを睨みつけていた。
「そんな目で睨まれると怖くて怖くてしょうがないですね」
絶対怖がってないだろ。
「えーっと、兄さん。確か前に肝だめしをした時にもこの人に遭遇したんですけど」
と、なるべく釖竜さんのことを見ないように俺に言ってくる神楽。
釖竜さんのことが苦手なのだろうか?
「あーまぁそんな怖い人じゃないぞ釖竜さんは。確かに名前の漢字は怖いが」
「おや、澪未矢君に私の名前を褒められるとは光栄ですね」
褒めてねぇよ。
「釖竜冥刃。気安く澪未矢様に話しかけないでください」
「相変わらず澪未矢君のメイドさんは私にお厳しいですね。そういうところも可愛いのですが」
「やめろ。貴女に可愛いなんて言われると虫唾が走る」
なんで釖竜さんと会ったらこんなに芯珠の機嫌が悪くなるんだよ。
今なんてとうとう敬語をやめたし。
「し、芯珠。どうしたの?落ち着いて」
「...神楽様、申し訳ございません。このおぞましい女のことを見ていたら思わず口調が荒くなってしまいます」
全然落ち着いてねぇな。
「そういえば、さっき澪未矢君のクラスの近くを通りかかったのですが。客が悲鳴を上げて出て行っていましたね」
あ、そうだ!
長谷川にネコメイドを任せたの忘れてた!
「ちょっと三人ともごめん!俺急いで戻らなくちゃ!」
そう言ってダッシュで自分のクラスに戻る。
2年Bクラスはの前はめっちゃ静かだ。
物音一つ聴こえない。
恐る恐る教室の中を覗いてみると
「「「「.........」」」」
「..これはだいぶ重症だな」
女装メイドたちは何もしゃべらず固まっており、長谷川なんて隅っこで体を縮まらせていた。
「お、お~い。長谷川?大丈夫か?」
俺か近づいて肩を揺らすと
「夜崎君!」
奥にいた女の子が希望の光を見るような目で俺のことを見つめていた。
「ど、どうした?」
「長谷川君の猫耳つけて早く接客して!!」
「はい...」
そこからはまたメスネコメイドとして一生懸命接客した。
俺としてはさっきまでと何も変わらないが他の生徒はやる気に満ち溢れている。
さっきまでが相当ひどかったのだろうか?
「お帰りなさいませダ...にゃん」
「おやおや。これが噂のメスネコメイドさんですか」
釖竜さんがいつものように不敵な笑みを浮かべて入店してきた。
てかメスネコっていう名前がもう知れ渡っているのか。
「ご、ご主人様の席はこちらダニャン」
俺は釖竜さんを席まで案内する。
「ご注文はなににしますかニャン」
「そうですね。では頭をなでさせてもらいましょうか」
「...はい?」
そんなメニューあったっけ?
「ほら、このメニューの下の方に小さな文字に書いていますよ」
「...ホンマや」
絶対女子が慌てて書き足したんだな。
「ほら、こちらに来て頭を差し出してください」
「...了解ダニャン//」
ものすごく恥ずかしいが、メニューにそういう項目が書かれているんだからしょうがないよな。
観念して頭を釖竜さんの方に向けると
「ちょーっと待ったぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」
いきなり入り口の方から大きな声が鳴り響いた。
「し、芯珠さん!?」
その声の主は芯珠だった。
「釖竜冥刃!その汚れた手で澪未矢様に触らないでください!」
「...これはこれは。またお騒がせメイドさんの登場ですか...」
「別に騒がしくしてなんかありません!!!!」
いや、芯珠、それは無理があるぞ。
「まぁお騒がせメイドさんのことは放っておいて」
「あっ...//」
予想以上に釖竜さんになでなでされるのが気持ちい。
「~~~~~~~!!!!!!!!!」
その光景を見て顔を真っ赤にしてこちらに向かってくる芯珠。
「ちょっと芯珠!?貴女なにやろうとしてるの!?」
「放してください神楽様!今すぐそこにいる魔物から澪未矢様を救わなければ!」
「やめなさい!それと兄さん!何どさくさに紛れて感じてるんですか!?」
いや、今はブラコン発動じゃなくて芯珠さんを止めることに集中しろよ。
その後、二人は強制退店を命じられた。
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