二日目⑦

「ようこそ、待っていました。メスネコ先輩とその愉快な仲間たち」


紅愛の中では俺はまだネスネコのままらしい。


「...外見は普通ですね」


神楽が小馬鹿にしたように言う。


確かに外から見るとただ黒い段ボールが続いているようにしか見えない。


ちなみに芯珠はもう肩が震えている。


「ずいぶんと強気ですねブラコン」


とうとうブラコン呼びし始めたよ。


「私がこんな出来の悪いお化け屋敷でビビると思ったら大違いですよ」


「そうですか。でも、そちらの使用人さんは震えているように見えますが」

 

いきなり話題にあげられ、芯珠は何とか震えを抑える。


「な、何をおっしゃいますか赤条寺様。こ、この私が、このようなお子様騙しに」


「芯珠さん、無理しなくてもいいよ」


優しく芯珠の背中をさする。


「れ、澪未矢様...//」


「ちょっと芯珠、兄さんにそんなことをされる許可を出した覚えはないですが」


「芯珠さん、一応言っておきますが私はもう先輩と一回体を重ね」


「とりあえずお前は黙れ」


誤解を生む前に先手を打っておく。


「まぁいいです。それよりも早く中に入れてくれませんか?」


「その前に現金をお支払いください」


まぁ当然金はとるわな。


「何円ですか?」


「一人2000円です」


高!?


普通そんなにとるのか?それともよっぽど出来がいいのか?


少なくても外見はオブラートに包んだ言い方をしなければただ屋敷だぞ?


「芯珠」


「か、かしこまりました」


この入りたくない芯珠が払わせられるという皮肉。


「毎度ありがとうございます。それではお入りください」


中に通される。


「兄さん、芯珠、準備はいいですか?」


「ああ、問題ない」


「私はまだ心の準備が...」


「それでは入りましょう」


芯珠思いっきり無視されたよ。


教室の中に入る。


厳密に言えば段ボールの中にだが。


「前よりはちゃんと幅が広くなってるな」


流石に幅は改善されたそうだ。


段ボールにもしっかり森の絵が描かれててそれなりの雰囲気はある。


まぁ適当さはよく伝わるが。


「...兄さん、何かあそこに立ってません?」


「ん?あー確かに」


目線の先には何か女の人?立っている。


「...もうちょっと隠れたりしろよ」


つい仕掛け役にアドバイスをする。


もう道は一つしかないのでどうしてもその仕掛け役の女子生徒の前を通らなくちゃいけない。


「はぁ...はぁ...はぁ」


芯珠は仕掛け役を認識しただけで過呼吸になっている。


「...通りますよ」


ちょうどその女子生徒の横を通ろうとしたとき


「わぁーーーー」


と、言って脅かしてきた。


「!?」


当然それにびっくりしたわけじゃない。


芯珠がいきなり俺の体に抱き着いたことにびっくりした。


「はぁー。なんですかその雑な脅し方は」


「あ、すみません...」


神楽が仕替え役に説教をしている。


「芯珠さん、芯珠さん!」


その間に俺の背中から手を放すことを呼び掛ける。


俺としては神楽に芯珠に抱き着かれている状況を見られることの方がホラーである。


「それにこの衣装もなんですか?どうして日本のお化け屋敷や恐怖映像には髪の長い白い着物を着た女性がいたり映ったりするのでしょうか。テンプレ過ぎて怖くないです」


「すみません...」


仕替え客の女子生徒が申し訳なさそうに謝罪する。


「れ、澪未矢様、た、大変申し訳ありませんでした!」


その間に芯珠に抱き着かれている状況を打破することに成功。


「兄さん、芯珠、先にすすみますよ」


どうやら説教は終わったみたいだ。


それからしばらく進んでいると。


『助けて~助けて~』


「な、なんですかこの声は?」


突然どこからかまた女性の声で”助けて~”と聞こえてきた。


てか芯珠怯えすぎ。


「はぁ~。またくだらない仕掛けを」


そういってため息をつく神楽。


『助けて~、って、え?こいつ栄那様に首輪を付けられて四つん這いで移動していた奴じゃん!』


「マジ?あ。ホントだw。栄那様のペットのメスネコじゃんw』


『確かB組の夜崎っていうやつだよね』


『マジでキショかったよねw」


『おいやめろよw本人に聴こえてるかもしれないだろw』


「......」


はっきりと聴こえてます。

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