二日目⑥

「お前まだ首輪の跡がついてるぞ」


「黙れ、言うな」


栄那から解放された俺は、今こうして長谷川と秋葉のクラスの牛丼屋に来ていた。


「お待たせしました」


奥から秋葉が牛丼を持ってくる。


「秋葉、その姿よく似合ってるぞ」


「いちいち言うな...恥ずかしい」


秋葉は頭に鉢巻を巻いており、黒い服を着ている。


「......」


「どうした?」


俺たちに牛丼を渡しても、何故か秋葉が奥に戻らない。


「いや、チーズ牛丼じゃないんだねと」


「...黙れ」


いったいどんな偏見だ。


一応夜崎澪未矢は外見はものすごい整っているぞ。


「確かに、お前は中身がチー牛だな」


「お前に言われたくはない」


俺たちが頼んだのはチーズ牛丼じゃなくて根木玉牛丼だった。


「てかお前の首輪姿もう学校中で話題になって拡散されてるぞ」


今じゃもう生徒だけではなく一般の人にも知れ渡っていると思う。


「俺の印象これからどうなると思う?」


「まぁ廊下で歩いていたら悲鳴をあげられて避けられるぐらいにはなるかもな」


いじめやん。


本当のいじめとエロイ意味のイジメとじゃ全然意味が違うぞ。


「まぁでもあの栄那ちゃんに首輪を付けられて散歩されるとか俺たちの業界じゃご褒美だけどな」


確かにそれはそうだ。


こんな経験エロゲの中じゃないと経験できない。


「よし、食い終わったことだし教室に戻るぞ」


「休憩終わるの早ない?」


「しょうがねぇだろ。大繁盛してるんだし」


またずっと立ってなきゃいけないのか。


「それにお前が栄那ちゃんに首輪を付けられて散歩させられて以降お前目的で店に来る人も増えたんだしさ」


どうせほとんど男客だろ。


「そういえばまだお前の妹とメイドさんいるぞ」


まだ帰ってないの!?


いい加減席を開けてほしいのだが。


「てかあの二人お前がいないと機嫌悪くなりすぎだろ」


「神楽と芯珠が?」


そんな印象はないが。


「俺が話しかけようとしたら”気持ち悪いから話しかけないでください”とか”貴方みたいなモヤシじゃなくて兄さんを出してください”とか言われたしさ」


確かに言いそうだな。


教室の戻ると、本当に芯珠と神楽が座っていた。


紅愛はいない。自分のクラスの仕事があるのだろう。


「あ、兄さんやっと帰ってきたんですね!」


「お疲れ様です。澪未矢様」


あ、にゃみやから澪未矢に昇格したんだな。


「兄さん、何やら学校中で兄さんのことが話題になってるんですが、あんな可愛い姿を他の女にも見せたんですか!?」


いや、廊下を歩かされたんだから人の目に入るに決まってるだろ。


「2人ともまだ帰っていなかったのか?」


「当たり前です!あの下品女と女狐に兄さんを独占なんかさせません」


「あの...私はもうそろそろお帰りになられた方がよろしいかと存じます」


芯珠が何故か帰りたそうにしている。


...そうとう紅愛のクラスのお化け屋敷に行きたくないんだな。


「じゃあ兄さんも戻ってきたことだし下品女のお化け屋敷にでも行きましょうか」


神楽、ちょっとは芯珠の気持ちを察してやれよ。


「あーちょっと俺はこれからまた接客しなくちゃいけないからな」


「そんなのはその兄さんの隣にいる汚物...じゃなくて友達にでもさせておけばいいんです」


「汚物、今汚物って言った?」


長谷川が心に深いダメージを負った。


俺としてはこの姿で接客するより、お化け屋敷を体験した方が楽だ。


「じゃあ長谷川。悪いんだがネコメイド役はお前に譲るよ」


「え?ちょっと」


長谷川が反論する前に露出が目立つメイド服と猫耳を押し付ける。


「よし、それじゃあ三人であの下品女のお化け屋敷まで向かいましょうか」


「いや、あのご遠慮しておいた方が...」


芯珠、あきらめろ。


ごねる芯珠を引っ張って、クラスを後にする。


余談だが、その後の二年Bクラスでは悲鳴が相次いだという。

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