二日目⑤

「おい、見ろよあれ」


「あれは栄那様と」


「栄那様のヒモだな」


「え?首輪つけられて散歩させられてるじゃんw」


「マジ?夜崎ざまぁwww」


「ママー。変な人がいるよー」


「...あなたはああならないようにいっぱい勉強するのよ」


「......」


外野の声うぜー!


ドMな俺でもそこまで言われると泣いちゃうぞ。


「澪未矢さん、次は四つん這いになってくださいまし」


「...マジですか?」


「ええ、マジですわ」


歩いている状態でもこんなに変態扱いされるのに四つん這いになったら本当に通報されるかもしれない。


「どうしたんですの澪未矢さん?早く四つん這いになってください」


「...はい」


栄那に逆らえるわけもなく、泣く泣く膝をついて四つん這いになる。


「あ~なんて可愛いペットでしょう!」


許嫁からペットに降格したの!?


「さ、このまま私のクラスに行きますわよ」


栄那のクラスってことはこの状態で階段に上らなくちゃいけないの?


「ほら、澪未矢さん早くついてきなさい」


「ちょ、ちょっとこの状態で階段上るのは危ないんじゃないですか?」


「何をおっしゃってますの?猫は四つん這いでも階段を登れますわよ」


あ、俺はもうメスネコで確定してるんだ。


「......」


俺は無言で慎重に上る。


ただ、あまりゆっくりしているわけにもいかない。


ゆっくりしすぎるとしびれを切らした栄那がリードを引っ張ってくるのだ。


上っている途中にそんなことをさせられたらと思うだけでぞっとする。


踊り場で話こんでいる何人かの女子と目が合う。


「「「「「「「「「......」」」」」」」」」


いや、なんか言って?


さっきみたいに馬鹿にするようなこと言って?


そんなマジでドン引きしているような目やめて!?


何とか階段を上り終わると栄那のクラスが見えてきた。


「お帰りなさいませ栄那様とそのペットの夜崎澪未矢」


会った瞬間ペットだと判断してきた。


「で、なんで栄那のクラスに?」


「そんなの澪未矢さんとプリクラを撮るために決まっているでしょう」


「...この格好で?」


「もちろんですわ」


せめて可愛く加工してくれると助かる。


クラスの中に入ると意外と繁盛しているプリクラ機があった。


てか待機しているほとんどの客が男やん。


「「「「「「「「「栄那様、お帰りなさいませ」」」」」」」」」


客でもないのに一斉に頭を下げる店員。


「ただいま戻りましたわ」


「栄那様、もうプリクラ機の準備は整っています」


「分かりましたわ」


そう言うと栄那は俺のリードを引っ張り待っている客を抜かしてプリクラ機の中に入る。


「そんな客を堂々と抜かしていいのか?」


「わたくしほどの大物となれば割り込は日常茶飯事ですわ」


なんかちょっと小物っぽいな。


「さ、澪未矢。台に手をついてください」


「?こうか?」


言われた通りに台に手を置く。


「そうです。それで私がこうして」


「い、痛い!」


さっきよりも強く栄那がリードを引っ張る。


「こうすると主従関係がよく表現されますね」


だからいつから栄那はドSお嬢様キャラになった?


俺が台に手を置いて横からリードを引っ張る栄那という絵柄ができ、シャッター音がした。


「次は加工ですわね」


一応加工はしてくれるんだ。


「わたくしは加工なしでも十分美人ですわね」


それは言えてる。


「えーっと、澪未矢さんはここをこうして」


結果的に俺はすでに猫耳はついているため、ほっぺたを赤くされ、鼻も塗りつぶされて、ネコみたいに顔から毛を何本かはやしている写真ができた。


自分で見ても可愛いと思う。


ちなみに栄那はこの写真を高値で売るそうだ。


赤字になることを祈る。

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