二日目②

「あ、兄さ...」


「澪未矢さ...ま」


俺はトイレ休憩に行こうとするが、当然そんなことが許されるはずもなく、こうして神楽と芯珠に鉢合わせてしまった。


「お帰りなさいませダニャン」


意外とはっきり言えたぞ。


「「......」」


神楽と芯珠は固まったまま動かない。


「あ、あのご主人様、席はこちらダニャン」


なんで俺が案内役もしなくちゃならないんだよ!


「あ、は、はい」


やっと返事をしてくれた。


二人を席まで案内する。


「まずは私と神楽様に紅茶をお願いします。にゃみや様」


にゃみやってなんぞや?


紅茶を出すと今度は神楽が不機嫌そうに口を開いた。


「...露出が激しいですね兄さん」


「いや、これは俺が自分でやったわけではなくてですね」


「私もこれからはそのように胸を強調したメイド服を試着した方がよろしいでしょうか」


それは大いに賛成だ。


「だ、だめです!そんな破廉恥な服を芯珠が着ることは許しません!」


いきなり神楽が怒号を上げる。


「...ご主人様、他のご主人様もお帰りになるので少しお静かにしてほしいにゃ」


「...おかしいですね。兄さんのご主人様は私だけでは?」


今ブラコンを発揮されても困る。


「兄さん、今私のことをブラコンって思いましたね」


ここまで言っておいて自覚がないのが怖い。


「神楽様。私もにゃみや様のご主人様のはずでは?」


主従逆転!?


「は?兄さんのご主人様は私だけだって決まっています!」


ちょっとここで修羅場に突入しないでほしいな


「澪未矢!早く戻れ、何人かがこちらに向かってきた」


「い、今いくニャー」


俺が二人のテーブルを離れて入り口の方に向かう。


「「......」」


その時なんとも言えない視線を二人から感じた。


「お帰りなさいませダニャン」


「あ、ネコさんだ~」


来店してきたのは小さな女の子とその母親と思われる女性だ。


てか小さな子供とこんな店訪れるか?


「ネコさんこんにちはー!」


「こんにちはダニャン!」


こんな無垢な子はまさか俺が男だなんて疑ってもないんだろうな。


「ちょっと、何私の兄さんと馴れ馴れしくしてるんですか!」


ちょっと神楽さん!?


何こんな小さい女の子相手に切れてるんですか!?


「違うもん。私のネコさんだもん!!」


怒鳴られて泣くと思っとがまさか言い返すとは。


最近の子は勇敢だな。


「!このメスガキ...!」


神楽が女の子に近づこうとする。


「神楽様.、落ち着いてください」


それを芯珠さんが止める。


「放しなさい芯珠!このガキにはしっかりと分からせる必要があります!」


だがそれでも神楽は止まらない。


すると芯珠は俺の方を見て何か合図を送る。


...なるほど、そういうことか。


ここは女の子を守るために一肌脱ぐか。


俺は目を手でこすり


「...そんなに怒鳴らないでほしいニャ...ご主人様怖いニャ...」


と、ウソ泣きをする。できるだけかわいく。


それを見ていたクラスメイトはドン引きしていた。


ただ神楽の方を見ると。


「に、兄さんが泣いてる...はぁはぁ//」


よかった。


怒りよりも興奮が勝っているようだ。


「わーネコさん泣いちゃった。よしよし」


女の子が俺のネコ耳をなでる。


「......」


それを見て今度は芯珠が少しこちらを睨んできた。


...あんたがやれって言ったんだろ。


女の子のお母さんは俺のことを危ない人のようかに見つめてくるし。


廊下で俺が泣く姿を見ていた男の人達は瞬時に店に入ってきて、逆に女の人たちは逃げるように離れて行った。


「...これが看板娘の力か」


長谷川が感心したかのように呟く。


...これから日常生活でも泣き落とし作戦は使えそうだな。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る