文化祭一日目
「お帰りなさいませ、ご主人様」
俺の隣で長谷川が元気よく挨拶する。
てか一年生の女子が若干引いてるし。
「ほら、澪未矢様も挨拶しろ」
「お、お帰りなさいませダニャン」
「「「「......」」」」」
おい、固まるな。
「...もうやめていい?」
「何言ってるんだ。ほら見ろ、廊下からお前の写真を撮ってる奴がいっぱいいるぞ」
撮っているのがほとんど男なのが気持ち悪い。
「...やっぱ休めばよかった」
今日は文化祭一日目。
一日目は生徒だけだが、それでもこの女装メイドカフェは繁盛していた。
ほとんどのクラスは明日に備えて出し物はやっていない。
だが何故か俺のクラスの女装メイドカフェは営業していた。
長谷川いわくほとんどが俺目当てらしい。
てかお前発案しておいて悔しくないのか?
「ほら~雌猫!早く注文とれよ」
柄の悪い男子が俺を指名した。
今あの男子はどんな気持ちで俺のことを雌猫と言ったんだ?
もしかして俺がそう言われて喜ぶとでも思ったのか?
だとしたら申し訳ないが今のセリフは女の先輩に言われないと刺さらない。
「てか長谷川、他の男子休憩取り過ぎじゃね」
「そりゃそうだろ。みんな自分の女装姿なんてさらしたくないに決まってるだろ」
「...そこまで分かっておいてなんで発案したんだ?」
「そんなのお前の女装姿が見られるからに決まってるだろ...//」
やっぱこいつあっち系だわ。
そこから俺は1時間ぶっ通しで接客を行った。
ほとんどの男子が休憩してる中何故か俺だけ休憩が許されなかった。
おそらく看板娘だからだろう。
「そういえば澪未矢、お前栄那ちゃんのクラスに行かなくて大丈夫なのか?」
「...確かに」
流石に栄那のクラスに行かなきゃまずいと思った俺は、何とかして女子と交渉することに成功。
俺のクラスにも栄那ファンクラブの子がいるため交渉には苦戦した。
2年Aクラスの前までくると、受付みたいことをしている女の子に話しかけられた。
「貴方、夜崎澪未矢ですか?」
「...そうですけど」
なんでフルネームで呼び捨てやねん。
「栄那様が貴方のことを指名しています」
普通客が指名するんじゃないの?
てかクラスメイトのことを様付で呼んでるんだ。
なんか芯珠さんみたいだな。
どうぞと言われて通されると
「あら澪未矢さん、待っていましたわ」
いつものように上品な挨拶をする栄那がいた。
あいかわらず周りからの視線が痛い。
「確か栄那のクラスの出し物はプリクラだったよな?」
「ええその通りですわ。お客様の方から、この中のリストの中の子を指名するという制度ですわ」
俺はなぜか店側から指名されたけどな。
「...全然生徒がいないが今日は稼働していないのか?」
「そうですわね。このプリクラ機は一般のゲーセンとかに配置されいるやつと違って電気をたくさん必要としますわ。学校側から電気代がかかりすぎるという理由で一度却下されましたが、何回も交渉をして一日だけならという条件のもとOKをもらいましたわ」
多分却下したのは紅愛だ。
「ですから澪未矢様のクラスの女装メイドカフェも明日じっくり堪能しますわ」
嫌な予感がする。
「聞けば澪未矢さんが猫耳をつけているとか...」
なんで睨むんだよ。
「まぁその辺も明日じっくりと事実確認をいたしますから楽しみにしていてくださいまし」
事実確認っていう言い方が寒気がする。
「それではそこの人、澪未矢さんを出口まで案内してきなさい」
もう名前も覚えていないって時点で流石女王だと思う。
「それでは夜崎澪未矢、またのお越しを」
だからなんでフルネームで呼び捨て!?
それ俺以外の生徒にも言うのかな...
三年の先輩とかに言ったらなかなかめんどくさいことになりそうだぞ。
「おい、澪未矢!」
「?どうした長谷川?そんなに焦って」
「どうしたじゃあねぇよ。お前早く教室に戻れ」
「?なんでだよ」
「お前がいないから俺が逆に猫耳つけたら体調不良者が続出したんだよ」
なるほど。それは大いに共感できる。
「だから早く看板娘であるお前が戻らなくちゃまずいんだよ」
自分で言うのもなんだが改めて自分の人気さが分かるな。
「ちなみに明日はもっと激務だからな」
そう。今日はまだいいとして問題は明日なのだ。
明日は一般の人も来賓できるようになっている。
つまり、どんな状況になるかが簡単に予想できてしまう。
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