メイク
「はい、夜崎君。これメニュー表だから目を通しておいてね」
「ありがとう」
文化祭が近づく中、俺たちのクラスの女装メイドカフェも完成に近づいていた。
「な?いい案だっただろ?」
俺に話しかけてきたのは今回の元凶である長谷川蓮。
こいつが女装メイドカフェを提案しやがった。
「...普通こういうのは女子が発案するもんじゃないのか?」
「いや、たまにはクラスに貢献したいと思ってよ。それに女子から賛成意見がたくさん出たんだからいいだろ」
絶対こいつ女子から引かれただろ。
「それにお前って意外と女装似合うと思うんだよ」
そういって俺のことを見つめる長谷川。
「...お前まさかそっち系か?」
身の危険を感じた俺は反射的に距離を開ける。
「おい、勘違いするな。お前が女装した方が客足が増えると思っただけだ」
つまり俺はこのクラスの看板娘ってことか。
「ねーねー夜崎君」
長谷川と話していたら、クラスの女子が俺のところに来た。
「あのねー。学校のパンフレットにこのクラスの女装メイドカフェの写真を載せなくちゃいけないんだけど」
おい、嫌な予感がするぞ。
「夜崎君の女装姿の写真を載せたいと思うんだ」
隣で長谷川が笑いをこらえてるのが分かる。
「はぁーわかったよ」
「ありがとう!それじゃあメイクするからこっちに来て」
「え?今から撮るの?」
「当たり前でしょ?」
男子が一人も女装していない中俺だけ女装するというのは抵抗があるが。
そこから俺はよくアニメとかで出てくるようなメイド服を着させられ、顔によくわからないメイクをされ、口紅もされた。
「はい、これも被ってね」
長い髪の毛のカツラもつけられた。
「よし、これでばっちり!」
鏡を見ると自分でもびっくりするほどかわいいメイドがいた。
芯珠とはまた違った可愛さがある。
「じゃあー夜崎君ここに立って」
カメラの前に立たせられる。
「撮るよー」
そう言われた時、長谷川が横やりを入れてきた。
「どうせなら何かポーズさせね?」
余計なこと言うな。
「ポーズ?例えば?」
「...そうだな。猫のポーズとかは」
...は?
「い、いいね...そ、それ」
女子が笑いをこらえているのが分かる。
「じゃあ夜崎君、猫のポーズして」
「...ほんとにしないとダメ?」
「何恥ずかしがってるんだ。お前が猫のポーズして写真に写れば男の娘が好きすぎるキモオタ...来校の人も店に足を運んでくれるぞ」
お前失礼すぎだろ。
「あとちゃんと撮る瞬間猫の鳴き声も出せよ」
長谷川...後で覚えておけよ。
「じゃあ撮るよー。3,2,1」
「にゃ、ニャー」
できるだけかわいい鳴き声を出す。
次の瞬間まぶしいフラッシュが起こった。
「は、はい..よく撮れたよ」
いつまで笑い堪えてるんだよ。
「なぁ、こんな写真撮ったんだし、澪未矢だけ猫耳付けね?」
「は?」
「確かにそれいいかも」
「賛成ー」
「はっ、いつも栄那様とイチャイチャしてる罰だよ」
名前もないモブたちが賛成の声を上げる。
「じゃあ夜崎君が猫耳をつけるのに賛成の人!」
「「「「「「「はーーーーーい」」」」」」」
こういうときだけ一致団結しやがって。
「よかったな。お前マジの看板娘じゃん」
「...それは嫌味か」
でも、これだけ俺を目立たせることに賛成派が大勢いるということはそれぐらい俺の顔が整っているということだからな。
悪い気はしない。
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